第52話 刑事と一般人の捜査
「これは、事件よ!」
レイラは叫ぶ。支配人ルームの前の廊下。一流高級ホテルの分厚い絨毯の上で。
「事件とは決まっていません」
カオリは落ち着いている。
「どういう理由か、支配人がエストさんを連れて行った。急に休暇を取ったという事は、支配人さんにとっても思いがけない出来事だったのでしょう。でも、ホテルの中ですから。無理矢理エストさんが拐われたとか、そういうことではないと思います」
「うん……そうだけど」
レイラは必死に考える。
確かに、まだ事件……犯罪だと言う段階ではない。
あの支配人のカジヒラ。エストの失踪とは無関係の第三者だと思って信用したんだけど、エストを隠すために嘘をついた。ということは無関係でなく、何か関係あるんだ。
事件じゃない。下着モデルの少女と高級ホテルの支配人が、一緒にどこかへ行った。今わかっているのは、ほぼそれだけ。
「でも、エストと一切連絡がつかないっておかしくない?」
「おかしいですね」
カオリは冷静。
「よほどの事情があるのでしょう」
「その事情ってのが、急にお腹が痛くなったとか、モデルの仕事が嫌になったとか、そういうのかもしれない。でもそれ以外の可能性だってあるじゃない? 連絡したいけど、できなくなってるとか? そう思わない?」
「可能性でいえば、何でもありますね」
「カオリ、あなた、エストのこと心配じゃないの?
「心配です」
「うん、じゃあ、探そう」
レイラはきっぱりと言って、支配人ルームの扉を見据える。
ここがまずは捜索の入り口。
ドアノブを手で回してみる。開かない。当然だ。鍵がかかっているのだ。
うーんと、レイラは考え込む。
気づくと、カオリが微妙な視線でレイラを見ている。
「なに?」
「危ないですよ」
「危ないって? どういうこと?」
「扉を壊そうと考えていますね?」
「そんなことしないわよっ!」
レイラが服の下に隠している警察の秘密道具を使えば、何とか扉を破れないでも無い。
でも。
さすがにそれをやれば警報器が発動し、大騒動となる。
「外から回る」
「外?」
「うん。このホテル、飾りだけど、窓側にバルコニーがある。それを伝っていく」
「そんな冒険するんですか?」
さすがのカオリも、目を丸くする。
レイラは、ふ、と笑い。
「私には何でもないのよ。目の前で女の子が消えて、どうにかなっちゃうかもしれない。それを考えたら、何てことない。カオリ、あなたは部屋に戻って待ってて。協力してくれてありがとう。あなたのおかげで、手がかりがつかめた」
「私も行きます」
カオリがきっぱりと言った。今度はレイラがキョトンと。急に何を言ってるんだ。この子は。
「え? どうして?」
「なんだかレイラさんが心配なんです」
夢見心地の瞳。
レイラ、ガクっとなる。
宇宙警察の刑事の私が、一般人に捜査の心配をされちゃっている!




