第51話 ありふれた発想の導きで
レイラとカオリ、モデルたちの控え室を出る。パーティーは終わった。今日はもう何もないのだ。自由時間。明日の撮影の仕事まで、好きにしてていい。
カオリは、一旦、パーティー会場まで戻る。扉の前で。
「レイラさん、ここでエストさんは、左に行って、行き止まりの密室で消えた、そういうんですね?」
「そうよ。左が行き止まりで出口はない。それははっきりと確認した」
「じゃあ、こっちですね」
カオリは、右に歩き出す。いつも通り無表情だけど、迷いや躊躇は無い。確信があるのだろう。レイラは、黙ってついて行く。
ホテルの壁の案内図を確認するカオリ。エレベーターに乗る。上へ。
エレベーター降りたカオリ、そのままレイラを案内する。
「ここです。ここにエストさんはいるはずです」
『支配人ルーム』
立派な金文字で書かれている。
◇
「支配人がエストを?」
レイラは、思わず。
「ええ」
カオリは、表情を変えない。
「レイラさん、話してくれましたよね。エストさんはパーティー会場で、通路の左か右へ行った。左は行止まり。出口は無い。右から来たのはカジヒラ支配人。物理的な壁をくぐり抜けるのは無理です。でも、人間の壁なら、すり抜けることが可能です。答えはそれしかありません。普通に、ありふれた発想です」
「うーんと、つまりあの支配人は、エストが来たのを見たけど、来なかったと私に嘘をついた、そういうこと?」
「はい、そうです」
「ホテルの支配人がなんでそんなことするんだろう?」
「わかりません」
密室消失の謎。確かにありふれた解決だ。言われてみればそれしかないように思える。支配人ルームの前でしばし佇んでいたレイラだが、
「よし、直接訊いてみよう」
ピンポンを押す。
だが。返事は無い。もう一度押してみた。やはり同じ。沈黙。
レイラは自分の携帯端末を取り出し、ホテルのフロントへ音声通信する。
「カジヒラ支配人と、お話ししたいのですが」
帰ってきた返事は意外なものだった。
「カジヒラは、休暇を取りました」
「ええっ!」
レイラは驚く。
カジヒラ支配人て、さっきまで普通に働いてたよね。エストの行方を一緒に探してくれたし。それでいきなり休暇? そんなことあるの?
「あの、急に休暇をとったっていうことなんですか? 一体どういう事情です? 今、どこにいらっしゃるんでしょう?」
矢継ぎ早に聞いてみるが、
申し訳ありません、当ホテルスタッフのプライベートについては、お客様にお知らせすることができません、との回答だった。
「なに、これ!」
レイラは、絶句。
突然、様子がおかしくなって失踪したエストに続いて、鍵を握っているらしいホテルの支配人まで失踪。いや、失踪じゃなくて、急な休暇だけど。
「おかしい。これは絶対何かある」
カオリは、ずっといつもの夢見心地な瞳。




