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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.1 下着モデル潜入捜査官の華麗なるデビュー
5/22

第5話 メロンサイズの下着モデル



 「レイラ」


 レッスンの合間に。隅で膝を抱えて一息ついていると、声をかけられた。


 振り向くと、レイラを覗き込むようにしている少女。同僚のモデル。


 名前は確か。


 「私はネクリ、よろしくね」


 にっこりとするネクリ。ほわほわしたピンクの髪。人懐っこいクリクリした瞳。やや小柄。


 「私はレイラ、よろしく」


 ネクリは、うふ、と笑う。


 「知ってるよ。レイラ、この前オーディション合格して、もうシン・トーキョー星コレクションデビューなんだよね。すごいね。みんな注目してるよ」


 「あ、いや、その、ありがとう」


 妙にしどろもどろになるレイラ。


 事務所に入ってから、一応、みんなには、新人のレイラです、よろしくお願いします、と挨拶した。それだけで特に何もなかった。みんなそっけない目線だった。ドン・ハルキサワ事務所。モデルもスタッフも大勢いて、出入りが激しい。新顔がしょっちゅう現れる。だから、デビューしても特にどうという事はなく、同僚モデルたちとも、まだあまり話はできていなかった。とにかくレッスン漬けの日々なのである。


 みんなに注目されている?


 そうなのか?


 あまりそういう視線は感じない。間近に迫った最大のイベント、シン・トーキョー星コレクション。みんな何かと忙しく、事務所全体が浮き立っている。


 出演モデルの発表はすでにしてあった。


 後から急に追加出演することになったレイラの名前は、まだ発表されていない。すべてサプライズというわけだ。公式には、ショーの当日に発表されるらしいのだが、事務所の中ではすでにレイラの出演は話は広まっていた。


 

 「私が注目? そんなことないと思うよ」


 レイラ、赤くなる。ネクリは、またうふっと笑う。


 「されてるよ。何しろ大舞台にいきなり選ばれたんだからね。みんな、他の子のことは気にしてないふりしてるけど、やっぱり気にしてるしのよ」


 「そ、そうなんだ」


 潜入捜査で常に周囲に目配りしてなくちゃいけないんだけど。周りが見えていない。これじゃダメだな。レイラは、反省する。


 「あ、でも、ネクリも出演するんだよね」


 「うん!」


 ネクリ、こぼれるような笑顔になる。


 「初めての出演。大舞台なの。事務所に入って、下着モデルデビューしてやっときたチャンスなの。もう、気持ちがどうかなりそう。私、ここに来るまで1年かかったのよ。でも、いきなり出演のレイラにはかなわないな。うちの事務所で、今度のショーに初出演するのは、私とレイラ、あなただけよ。がんばろうね」


 なるほど。ネクリも初めての大舞台で、なんだかんだ緊張しっぱなしなのだ。初出演組同士で話がしたいんだ。


 レイラも、緊張とときめきでいっぱいの新人モデルらしく、微笑む。うまく笑顔できてるかな。


 「ありがとう、ネクリ、一緒に頑張ろうね」


 ネクリは、じっとレイラを()ている。なんだかうっとりとした瞳だ。


 「レイラ、あなたって本当に完璧ね。さすが、ルイーザさんが抜擢しただけのことはあるね」


 「え?」


 いきなり何を言い出すんだろう。ドギマギするレイラに、ネクリはなおも、


 「背が高くて、完璧なプロポーションよ。顔もきりっと整ってるし」


 「そ、そう?」


 レイラ、またまた、赤くなる。


 レイラは長身で手足がスラっとしている。プロポーションは抜群だ。それは自他共に認めるところ。警察学校で鍛えているから、体力筋力はあるが、スレンダーで引き締まった身体。


 でも、トップモデル事務所に入ったら、姿体(ルックス)抜群の子は、ごろごろいた。自分などは地味なほうだ。そう思ってたんだけど。


 まごつくレイラに、ため息をつくネクリ。


 「これ、本当にうらやましい」


 ネクリが、レイラの胸にそっと触る。


 「あ、ダメ」


 レイラ、慌てて身を引く。


 「うふふ、あなたって、本当に最高ね」


 茶目っ気たっぷりのネクリ。


 レイラの(バスト)。メロン(サイズ)であった。しっかりと形良く、ブラジャーの下で存在を主張している。刑事として捜査をするときにはかなり邪魔なので、いつもきつく締めつけるのに苦労しているんだけど。


 「レイラ、あなたって、モデルするために、生まれてきたような子ね。いつ見ても感心しちゃう」


 「そ、そんな」


 「そうよ。あなたの素材が素晴らしいから、あえてドンも、シンプルな下着にしたのよ。下着じゃなくて、あなたを魅せるためにね」


 「え?」


 レイラは、驚く。


 「ネクリ、私のショーの下着、知ってるの?」


 「あれ、まだ、渡されてないの?」


 「うん。まだ基礎レッスンの最中だから」


 「そうなんだ。あなたの出演用の下着、もうできてるよ。大至急で作ったのね。先生が仕上がりをチェックしてるの、こっそり見ちゃった。あなたのは純白。シンプルな白のブラジャーとショーツね」


 純白? 白のブラジャーとショーツ?


 いきなり自分の出演衣裳を聞いて動転してしまうレイラ。


 白の下着。シンプル。それって思いっきり普通の下着そのままじゃない?


 ショーだから、派手で飾った下着、下着というよりおしゃれな服みたいなの着て出演するんだと思ってたんだけど。


 いきなり、まるっきりの下着でデビューだ。


 なんだか……どうしてもドキドキが……止まらない!


 ネクリは瞳をキラキラさせている。

 

 「さすがドンね。あなたには、シンプルな下着が似合う、私もぜったいそう思う。あなたの身体、絶対ショーで注目されるから」


 うわあ。


 レイラの脳、何度目かの沸点越え。

 

 下着モデルデビュー。


 当然肌露出は覚悟してるけど、別に身体を見て欲しいとか注目してほしいとか、そういうつもりは全くなかった。


 ドン・ハルキサワが用意するのはシンプルな白のブラジャーにショーツ。


 私の身体を見せるために? そうなの? まさか!


 モデルをするために生まれてきた子。


 ネクリは、そう言うけど。


 いやいや。


 天職はモデルじゃなくて、刑事、そう心に誓っている。


 悪党をやっつける。この手で! それが私の使命! そのために生まれてきたんだもん!



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