第47話 密室に消えた下着モデル
エスト。
黒のロングヘア、黒の瞳、黒いドレスのモデル。
真っ青だ。体を震わせている。
大きく見開いた瞳。しっかりとミレイヌを見つめている。
ただならぬ様子。
なんだ?
ミレイヌも、ルイーザも、事務所のモデルたちも、みな、息を呑む。
エストが、口を開いた。
はっきりと、ミレイヌに向かって、
「自分が捨てた子が目の前に現れたのって、どんな気持ち?」
そういう言うと、エストは、走り出した。人の波をかき分けて、パーティー会場を出て行く。
みんな、唖然となる。誰も、何も言えない。
ミレイヌ。
蒼白となっている。
ルイーザも、さすがにどうしたらいいかわからない。
レイラは。
突然の出来事にも、刑事の習性でしっかりと観察していた。
ミレイヌは、ショックを受けている。いきなり不躾なことを言われたから?
いや、それだけじゃない。
刑事の勘。
それと。
ミレイヌの前に立ったエスト。手の何かを、しっかりと、ミレイヌに見せていた。指輪。多分、指輪だ。エストの指輪を、ミレイヌは食い入るように見つめていた。
なんだろう。ミレイヌとエスト。関係があるのか?
みんな、まだ誰も動けない。何も言えない。
ここは、私が動こう。動かなきゃ。
とりあえず、エストを追おう。あの様子、只事じゃない。心配だ。
レイラも、人波をかき分けて、走り出した。
◇
会場の外へ出る。重くて厚い扉の外。賑やかな中とは、うってかわって、静かだ。
廊下は、左右に伸びている。どっちだ?
右手から。
支配人のカジヒラが、歩いてきた。
「あの、カジヒラさん、そっちに、誰が走っていきませんでしたか?」
「いいえ、誰も」
カジヒラは、慌てるレイラに、落ち着いて答える。
「そうですか。わかりました!」
と、いうことは、左だ。
レイラは、廊下を左に走る。
しかし。
行くとすぐに、突き当たりとなった。
廊下の奥に扉がある。鍵がかかっている。
「どうされましたか?」
カジヒラが、後ろから追いついて来た。
「あの、うちの事務所のモデルの子が会場を飛び出したんです。ちょっと様子が変だったので、念のために追いかけてきたんですけど。いませんね。おかしいな」
エスト。いったいどこへ消えたんだ?
「ここには、何もありません」
カジヒラが応える。
「この部屋は、倉庫です。念のため、改めますか?」
支配人のマスターキーで扉を開け、中に入る。
がらんとした倉庫。色んなものが置いてあるが、隠れる場所など一切ない。窓もない。
レイラは、刑事の目線と手順で、倉庫の中を調べるが、もちろん何もない。
「こっちのほうは、どこかに非常口とか、何かありませんか?」
「ありません。それは間違いございません」
カジヒラが、きっぱりと言う。
「もう一度聞きますけど、支配人さんの方には、誰も走って行かなかったんですね?」
「はい。間違いなく」
どういうこと?
レイラは、呆然となる。
消えた。
エスト。
下着モデルが消えた。完全な密閉密室空間から。出口は無いはずなのに。
まただ。
モデルの失踪消失。
ナミエに続いて、エストも。
何かが、ある。
間違いなく。




