第42話 流されモデル
「ほらー、みんな、集まってー、遊びに来てるんじゃないんだからねーっ」
後ろから、ルイーザの声。
「さ、戻ろう」
レイラ、カオリの手を引いて、歩き出す。
その時。
ゴオオオオオッーン!
空に大きな音が響いた。破裂音? 振動で地表までビリビリする。
ピカッ!
空いっぱいに光。天と地を貫き、裂いていく。
「みんな、伏せて!」
ルイーザの絶叫。
事務所の撮影スタッフにモデルたち、慌てて氷原に伏せる。
レイラは、カオリを抱えて伏せた。
「なんだろう、今の。雷?」
「いいえ」
と、カオリ。落ち着いている。
「雷なら、まず光が来て、その後に音です。今の音と光は。プラズマ放電の逆流です」
「プラズマ? それって何だっけ。そんなのよくあったっけ?」
「いいえ。めったにあるものではありません。そして、これは予測できないものです。私も初めてみました。星の極点から宇宙への電流放射が、ごく稀に、宇宙空間の電磁場の状況によって、跳ね返されることがあるのです。それがこの現象です。起きた現象としては、強力な雷が落ちた、そう考えてよいと思います」
「ふうん、滅多に見れない自然現象なんだ。これ、危険なんだよね」
「ええ。でも、直撃する可能性はほとんどありません。今回は、だいぶ近くに落ちたようですが。一度発生したら、続けての逆流放射は、もうありません」
「そっか、もう安全なんだね」
レイラ、立ち上がる。
カオリは、氷原に座ったまま。
モデルやスタッフたちも、そろそろと立ち上がっている。もう安全でいいのかな? 戻らなきゃ。すごいスペクタルだった。リョウタは、ばっちり撮影したのだろうか。
バキッ
大きな音がした。
なんだ。レイラは、あたりを見回す。
バキッ、 バキッ、
不気味な大きな音が続く。
「ええっ!」
レイラの目の前。
氷原に大きな亀裂が走る。それは見る間に黒い谷間となり拡がり、
「なに? どうなってるの?」
レイラの、足元がグラつく。
「うわっ」
氷原に片膝をつくレイラ。また何か起きた。カオリを抱える。
目の前にできた氷の亀裂、そして谷間。それは広がり、どんどん向こう側と距離が離れていく。
「あっ!」
やっとレイラは気づいた。
レイラとカオリは海のすぐそばまで来ていた。
その足元、今のプラズマ逆流放射の直撃の振動で、氷原の縁にヒビが入り割れ、レイラたちいる場所は小さな浮かぶ氷山となって、海に流されているのだ。
速いスピード。氷海、結構流れが速いの?
遠くでルイーザが叫んでいるが、もう聞こえない。
どうしよう。
小さな氷山に乗って、カオリと一緒に漂流。
身に付けているのは、撮影用の下着とミュールだけ。
氷点下の世界で命綱の温油。
確か。
30分しか保たないんだっけ。
その時間が過ぎたら。
ええ! これ、まずくない!?




