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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.4 数列家の下着モデル
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第39話 分解される?




 えええっ!


 

 そんなバカな。


 レイラの周りで、数字と記号が、踊り、跳ね、ぐるぐると回っている。


 なんだか眩暈(めまい)がしてくる。


 動けない。


 必死に体を動かそうとしても。


 手も。


 足も。 


 目の前のカオリ。


 小さな(スティック)立体映像(ホログラム)映写器を握っている。


 あそこから、数字と記号が飛びだしてくるんだ。


 で、なんで。


 数字と記号の映像を見ると、身体が動かなくなっちゃうの? 数列にそんな力があるの? 刑事として様々な戦闘法を学んだレイラだったが、こんなのは初めてだ。


 カオリが、口を開いた。


 「これは、数列家の宿命なのです」


 夢見心地の瞳。何を見ているんだろう。レイラを見ているのではない。遠い彼方の宇宙を見ているような。


 そんな儚げなまなざし。


 「数列家は、50億年の間、数列を究め、森羅万象、星々の神秘を解き明かしてきました。積み上げてきた歴史、とても重いのです。私たちは、宇宙そのものを背負い、宇宙そのものと同化しているのです。数列、それは、宇宙の命の術式(コード)


 なんだ? また何か語り出した。とにかく、私を動けるようにしてもらえない? なんで人を金縛りにするの? やめて!


 焦るレイラ、もちろん声は出せない。カオリの声が響く。


 「それはまだまだ未完成なのです。代々の数列家が取り組んだ宇宙数列の解法。術式(コード)の読み取り。宇宙の奥底は、果てしなく広く、深いのです」


 うん。それはそうだろう。レイラも、そう思う。


 「しかし、あなたは」


 カオリ、レイラを見据えている。


 「あっさりと、数列家歴代の限界を超えました」


 え? 


 ああ。そうか、私が特殊数列なんちゃらを解読したと、思っているんだ。絶対に不可能だということを。いや、だから、それはまったくの偶然で。ちゃんと説明すればわかてもらえるんだけど! 解読なんかしてないから!


 もがくレイラ。ダメだ。身体ピクリともしない。嘲笑うように、数字と記号は回る。ぐるぐると。


 「あなたは」


 カオリ、重々しく告げる。 


 「この世界の存在としては、バグ。100億年先から降ってきた不可能奇跡(オーパーツ)なのです」


 不可能奇跡(オーパーツ)! すごい話になってるな!


 「だから、あなたを確保しなければならないのです。あなたは、宇宙の理法を乱している。これ以上、暴走させてはならないのです。おお、宇宙は、森羅万象は、何という気まぐれを起こすのでしょう。しかし、あなたを捕らえるのもまた、私の定められた宿命なのでしょう。幸い禁縛術式(コード)の数列式が、通用しました。あなたを確保しました。後は、確実にあなたを数列に封じ込め、100億年の不可能奇跡(オーパーツ)の究明をするのです。あなたを、分解します。分解術式(コード)の数列式を発動します」


 分解!


 レイラ、総毛立つ。


 もう、なにを言ってるの!


 私は分解するの?


 私が分解されちゃうの? 数列で人を縛ったり、分解したり、そんなことするの? できるの?


 もうメチャクチャだ!


 分解とか、ダメ!


 悲鳴をあげたいが、やはり声は出せない。


 だが。


 その時気づいた。

 

 身体を押さえつける圧力が、ほんの少しだけ弱まっている。


 カオリ。手の(スティック)をいじっている。禁縛から分解へ。術式(コード)変更の操作をしようとしているのか?


 これが最後のチャンス、らしい。とにかく分解されてはいけない。


 レイラは、精一杯の力で、手を動かす。


 お、動いた! 


 今だ!


 ブラジャーの内側に仕込んだ刑事の秘密兵器に手を伸ばし取り出し、スイッチを押す。


 

 一面、真っ白になった。



 数字も記号も見えない。


 閃光(フラッシュ)だ。強烈な光。警備(セキュリティ)をすり抜けられる、秘密兵器の1つ。シンプルだが、いざというときの切り札になる。


 閃光(フラッシュ)の白い世界。


 レイラは、体が自由に動くのを確認した。カオリの小道具。視覚兵器だったんだ。数字と記号の絵のリズムの作用で、脳だが感覚器官だか中枢神経だかを狂わせて、麻痺させたんだ。


 視覚兵器なら。閃光(フラッシュ)を焚いて立体映像(ホログラム)を消せば無効化できるんだ。やってみれば、なんて事は無い。


 白い閃光(フラッシュ)の中。 


 何も見えはしないが、カオリの位置はわかる。


 レイラ、刑事の本能と磨き上げた技倆を全開にする。


 落ち着いて、素早く手を伸ばし、カオリの両腕をつかんだ。


 「捕まえた。確保」


 

 やったぜ。


 宇宙警察の刑事をなめるなよ。


 森羅万象だか宇宙の理法だか数列術式(コード)だか知らないけど、視覚兵器なんてオモチャで、やられるわけにはいかない!


 分解なんてされるものか!



 大逆転である。



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