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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.4 数列家の下着モデル
33/179

第33話 数列家少女の夢



 いつも無口なダウナー少女が、いきなりいっぱいしゃべった! 


 しかも、わけのわからんことを! 顔も近づけすぎだし!


 なんだって?


 レイラは必死に考える。


 人智で数がどうとか?


 ええと、それって、


 「うーんと、つまり……あの、コンピューターを使わないで、あれこれの計算をする、そういうこと?」


 「はい。そうです」


 カオリは、コクリとうなずいた。


 「なるほど……コンピューターも、電子機器も、一切使わないで、暗算とか手計算で、複雑な計算をやってのけるってこと? そういうのを追求してるのね?」


 カオリ、今度は黙って、またコクリとうなずく。


 なんだ。そういう話か。別に、そういうことするのは全然構わないんだけど。最初からわかりやすく言ってくれればそれでいいのに。


 「計算機やコンピューターに頼らないで計算する……そうすると、頭が良くなるのね?」


 「人智を汲み尽くすのは、人智なのです。数列道50億年の道のりですが、未だ汲みつくせてはいません。まだまだ、私たちは足らないのです」


 また、ややこしくなりそうだ。


 レイラは、話をわかりやすい方へ引き戻す。


 「カオリ、じゃあ、あなたは、結構すごい計算が機械に頼らずできるのね? そういう修行というか、訓練をしてるんでしょ?」


 カオリ、コクリと。


 「問題を出してみてください?」


 え?


 問題?


 数学の問題ってことか?


 レイラだって。警察学校に入学したんだ。電子機器を使わないで数学の問題を解くことは、それなりにできた。今じゃ、数学なんてもう全部忘れたけど。


 夢見心地のカオリ。数列家と称している。ダウナーな子が、今日は妙に積極的なんだけど。

 

 普通の数学のテストができるとか、きっとそういう次元じゃないのだろう。


 レイラは、自分の携帯端末(パッド)を持ちだし、4桁の掛け算問題を入力し表示する。


 「こういうのなら、暗算でもできるの?」


 「はい」


 カオリは、チラっと問題を見ると、すぐに解答を言った。


 レイラが携帯端末(パッド)の計算機でチェックすると、正解だった。


 「おお、すごい」


 無口で、夢見心地の16歳の少女。確かに普通じゃない計算暗算能力を持っている。頭の中は、数字と記号でいっぱいなんだろうか。いや、いつもその瞳には、目の前を数字や記号がふわふわ飛んでいるのが()えるのだろうか。


 数列家。コンピューターに頼らず、自分の脳を使った計算暗算演算力を高めるのを目指す。そういう考え方もあるだろう。


 科学技術全盛の時代になっても、人は、スポーツだ、古武術古武道だ、自分の身体を強化することに熱心だ。レイラも、刑事として、武器や道具に頼らない体術格闘術を鍛えている。(なま)の人間の能力の強化。これが人類永遠のテーマであることには変わりは無い。


 しかし。


 脳を使った計算力をいくら鍛錬で高めても、コンピューターには勝てないだろう。いくら身体トレーニングしても、人間がロボットに勝てるようになるわけではない。それと同じだ。


 人智で、なんちゃらを汲む? そう言ってたっけ?


 コンピューターじゃなくて脳を使って考えることで、できること、見えてくるもの、そういうのもひょっとしたらあるのかもしれない。レイラには、よくわからないが。


 で、結局最初の疑問に戻る。


 「えーと、カオリがその、数列道? で、脳の体操を頑張ってるのはよくわかった。すごいね。本当にびっくりした。それで、その、なんで私が人を探してるって言ったの? 数列で、誰かの考えや、していることも、わかったりするの?」


 カオリ、さらに顔近づけてくる。なんだかもう、くっつきそう。


 「森羅万象のざわめき、星の運行、すべて数列のうち。数列で表現できるのです。数列で量れないものは、ありません。私たち数列家は、()るのです。()えるのです」


 またまた。


 あっちの世界へぶっとびそう。


 なんだかもう。要するに、これは……星占いみたいなものか。


 頭を使いすぎると、オカルトっぽくなるって言うけど、そうなんだな。きっとそういうことだ。


 星占いおみくじでも、それなりに的中することはある。探し人、いくらでも解釈ができる言葉だし。たまたま、かすっただけだろう。


 あまり気にすることはないんだ。


 カオリは、数字、数列の世界に夢中。いつも数列ばかり()ている。


 潜入捜査の秘密に気づくことなど、ありえない。


 ほっとしたレイラ。


 でも。


 どうしても、気になった。


 訊いてみる。


 「あの、カオリ、あなた、なんで下着モデルになったの?」


 カオリは、うつむいた。


 その病的な白さの頬が、かすかに、ほんのかすかに、染まった。


 「脱いで勝負したかったんです」


 うーん。


 レイラは、脱力。


 なるほど。


 数列家といっても、いつも数ばかり追いかけているわけじゃないんだ。


 カオリも、キラキラ光る世界に憧れている、年頃の女の子なんだ。割とフツーかも?


 ただちょっと、数字や記号が頭の周りをいっぱい巡っている子。


 トップ下着モデルの世界。


 いろんな子がいるんだ。


 ブルーのブラジャーにショーツ、お尻にピョンと仔鹿の尻尾を突き立てたダウナー下着モデルにして数列家のカオリ。


 いつまでも、夢見心地の瞳。

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