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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.3 黄金のカツレツ事件
30/118

第30話 ウェルカムドリンク



 リョウタの招待。


 当日の夜が来た。



 レイラ、慎重にドレスを選ぶ。


 ネクリ推奨のピンクのドレス。フレッシュ感、若い女の子の初々しさを最大限強調したドレスだ。


 失踪したナミエは、清楚系だった。そういうのが好みなのかもしれない。合わせよう。


 ドレスを纏うレイラ。


 全身鏡で、チェック。


 よし。


 今日はこれが、刑事レイラの戦闘服だ。持ち物は小さなバッグだけ。電撃携帯端末(パッド)と、硬化プラスティックスティック、それに薬物検知器が入っている。



 エアカータクシーで、リョウタの家の前に、乗り付けた。


 リョウタの家。


 星都でも一流のタワービルの中にある。超高額高級でスペースはたっぷり。さすが、成功者だ。


 レイラ、重力制御式エレベーターで、上層階へ飛ぶ。


 透明なガラス壁から見える星都の景色。


 無数の光が輝いている。


 この夜の光と闇の中に消えた1人の少女。絶対に真相は突き止める。


 

 ◇



 「やあ、よく来てくれたね、レイラちゃん」


 ピンポンすると、すぐに(ドア)を開け、リョウタの顔が覗く。


 今まで見た中で、最上級に(とろ)けた顔。目尻が下がりまくっている。


 普通だったらレイラが絶対に交際したくないタイプの男だが、今は仕事だ。好悪の感情はない。


 「本当にお呼ばれしてくれるなんて。嬉しいです」


 なるべく可愛らしく、レイラ、伏し目がちにいう。油断させるのだ。ギリギリまで、刑事の本性を出してはいけない。


 「さ、入って、今日はパーティー!、パーティーだからね!」


 リョウタ、よだれを垂らさんばかりにしている。


 「失礼します」


 レイラは、室内へ。


 すばやく視線を走らせる。


 贅を尽くした室内。さすがに趣味は良い。最先端ファッションの粋が惜しげもなく。こういうところに入っただけで、メロメロになっちゃう子だっているだろう。


 「レイラちゃん、じゃあ、そこで待ってて。僕、準備してくるから。あ、寛いでね。自分の家だと思って」


 リョウタは、せかせかと奥へ消える。


 レイラ、一つ息をする。


 疑ってない。まずは成功だ。いよいよ突入。後戻りはできない。


 これからの手筈。


 見立てが正しいなら。


 これから2人で普通に乾杯し、食事をするながれになる。


 そしてリョウタは。タイミングを見て、〝黄金(きん)のカツレツ〟を勧めてくるだろう。受け取ったレイラは、ドキドキするふりをしながら、そっと、薬物検知器を使う。違法薬物(ドラッグ)の反応が出たら、すかさずリョウタを危険薬物所持の現行犯で、取り押さえる。後は、警察にすぐ通報して、応援を呼ぶ。しっかり証拠を抑えれば、組織的捜査ができる。全く証拠を残さずに人1人消すことは、できない。ナミエの手がかり、きっと見つかるだろう。


 まずは。


 今の段階で、疑われてはいけない。


 リョウタが〝黄金(きん)のカツレツ〟を持ち出すまで。


 場馴れしていない、うきうきした、ぽっと出の女の子を演じるのだ。


 えーと。


 今、するべきふさわしい行動とは。


 レイラ、考える。


 室内を、キョロキョロ見回す。


 おや?


 小さなカウンターに、12色の小さなグラスが並べてある。中には、グラスの色と同じ、12色のドリンクが。


 ウェルカムドリンクか。


 ここは、好奇心いっぱいの無邪気な女の子を演じるチャンス。


 「うわー、これ、可愛い!」


 レイラ、わざと明るく大きな声を出す。


 「なにかなー、綺麗! 12色のドリンク! こんなの見るの初めて! 決めた! 私は、ブルーにする!」


 レイラ、12色のグラスから、ブルーのグラスを選び、ぐっと飲み干す。



 「うわああああっ!」



 思わず悲鳴。かすれた悲鳴だ。


 喉が焼けた。


 喉からすぐに食道、胃、そして全身がかっかと燃え上がる。痺れる。心臓の動悸がする。呼吸できない。


 頭がグラグラする。


 視界が歪む。


 

 しまった!


 

 これは危険薬物(ドラッグ)


 〝黄金(きん)のカツレツ〟を仕込んでたんだ!


 まさかウェルカムドリンクに仕込むとは。完全に油断していた。いきなり(ドラッグ)を飲ませてくるとは。いや、この可能性だって、考えてなきゃいけなかったんだ。潜入捜査に来て、なんてザマ。


 レイラ、意識がぼやける。


 「レイラちゃん、どうしたの?」


 いやに頭に響く。リョウタの声だ。感覚器官も、おかしくなっている。


 リョウタ。レイラの歪んだ視界に、(とろ)けるような顔が、大きく広がっていく。


 だめだ! 取り押さえないと!


 しかし。体が全く動かない。全身から汗が噴きでる。もう声も出せない。目を大きく見開く。


 「レイラちゃん」

 

 その声が、ガンガン頭に響く。


 リョウタの顔、さらに大きく歪みながら、迫ってくる。


 もう全部溶けちゃいそうだ。



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