第29話 カツレツのパーティーへ
リョウタのお誘いに、返信する。
『お誘いありがとうございます! 明後日は空いてます! 是非お伺いさせてもらいます! もう、大感激です!』
業界の大物に誘われて有頂天の新人モデルの女の子の通信。これでいいのだろうか、レイラは考えながら、慎重に入力する。
通信。すぐ帰ってきた。
『じゃあ、レイラちゃん、明後日、僕の家でね。もう、本当に取っておき、身も心を蕩かしちゃうから。期待しててよ。必ずぶっ飛ぶから』
レイラは、リョウタの通信文をじっと見つめる。
これはもう。
キマリだな。
見立て、推理は正しかったのか。
最悪だが。
それにしても、1人のモデルの死の後に、またすぐ別のモデルを誘う? それならそれで、あまりにも異常すぎる。リョウタは、見た目以上に完全にぶっ壊れているということだろう。
一旦、狂乱の坂を転がったら、どこまでも落ちていく。ぶつかって、止まるまで。
ここで、止めなければいけない。
そうしなければ、これからも犠牲者が出つづけるだろう。
レイラは、ナミエの母親を想う。最悪の暗い結末。知るのはのは辛いことだろう。レイラも辛い、が、自分は刑事なのだ。犯罪を防ぐ。悪党を取り押さえる。何がなんでも。
それしかできることがない。
ナミエが生存してる可能性。あるといえば、あるかもしれない。薬物漬けになって、リョウタの手にずっと? 可能性は低い。でも、なんであれ、生きているならば、そのほうがいい。
レイラは、祈るしかなかった。
レイラ、リョウタの家でのパーティーへ行く準備をする。
冷静沈着な、1人の刑事になっている。
悪党を追い詰める手順。一切の妥協も、手抜かりも許されない。ちょっとした油断から、得られるはずだった良い結果が手をすり抜け、落としてしまうこともあるのだ。
万端の準備。
何を持っていこうか。
乗り込む先は、薬物常用錯乱者の家だ。いるのは1人だけだろう。悪の組織のアジトに乗り込むのではない。
リョウタ1人なら、問題ない。
銃は、いらないだろう。
しかし。
わずかな可能性であっても、危険は考慮しなければならない。リョウタと違法薬物つながりのある連中。ひょっとしたら、他の人間が事件に絡んでることもあり得る。プロの犯罪者が待ち構えているかもしれない。
武器、護身具は、欲しいな。
何がいいかな。
個人の家でも、金のある大物は、警備会社と契約しているのが普通である。
銃は、検知器に引っかかる。どのみち持っていけない。ナイフなど、鋭利な刃物も。
一般の警備の検知器をすり抜ける武器、護身具。
レイラが慎重に選んだのは。
硬化プラスティック製のスティック。小さく折りたたんでおける。こっそり持ち込むのにちょうどよい。
そして、電撃機能付き携帯端末。通常の電子機器と同じ電気出力だが、先端集中電撃で、かなりの威力が出せる。これなら万一検知器に引っかかったとしても、女の子の基本の護身具ですと言い訳できる。
こんなものでいいかな。
レイラは、体術格闘術の修練も積んでいる。鍛えあげられた自分の身体に、ちょっとした武器があれば、それで大丈夫だ。
そして。
宇宙警察の違法薬物対策課が使う、小さなスティック型薬物検知器。僅な薬物でも成分解析判定ができる。これで、〝黄金のカツレツ〟を突き止めるのだ。
よし。
準備完了。
もちろん、何よりも重要なのは、武器ではなく、
疑われないこと。
無警戒の標的にそっと近づき、嵌めて、確実に仕留める。
それが潜入捜査だ。




