第27話 危険な誘惑の先に
リョウタとの食事を終えたレイラは、事務所が用意したモデルの寮に戻ると、さっそく調査に取りかかった。
寮は1人部屋だった。邪魔が入らず安心してじっくり作業ができる。レイラは遠い他の星からドン・ハルキサワの下着モデルに憧れてシン・トーキョー星に来ました、という設定なのだ。
リョウタとは。
レストランで、ぜひまたお誘い下さい、〝カツレツ〟楽しみですと言って、別れた。いきなりの突入には、まだ早い。しっかり下調べして、準備して行かなくちゃ。
違法薬物について。
データを照会精査する。
カツレツ。
あった。
間違いない。違法薬物の隠語。
レイラ、注意深く、カツレツの項目をチェックする。
〝カツレツ〟
向精神薬の1種である。強い幻覚作用がある。開発されたのはおよそ15年前。その特徴。効果は短時間で比較的使用後に影響残さないので、気軽に常用使用する者が続出した。13年前〜11年前に宇宙全域で大流行。効果が短時間といっても、乱用すれば重大な後遺症が残ることになる。被害も拡大した。
強力な催淫作用もあるとされ、パーティードラッグとして流通し、特にショービズの世界で流行した。若い女性が多数この違法薬物の犠牲になった。
事態を重く見た宇宙警察は大規模な捜査摘発に乗り出し、製造元を潰し、流通経路も壊滅させることに成功した。〝カツレツ〟は、8年前にはほとんど見られなくなったが、現在でも、ごくわずかだが流通しており、重篤な後遺症の被害者も、毎年少数出ている。
〝カツレツ〟にもいろいろ種類があるが、最上級品は〝黄金のカツレツ〟と呼ばれる。〝冷めたカツレツ〟といえば、不純物の多いまがい物ことだ。
一昔前に流行した危険薬物。
強い幻覚作用催淫作用。ショービズの世界で流行。若い女性が犠牲。
ドンピシャだ。
何も知らない新人モデルの子に飲ませて、〝溶かす〟メロメロに。
ナミエは、パーティードラッグの罠に嵌った? リョウタの手によって。
絶対許せない。
レイラの体に、怒りの炎が渦巻く。レイラは〝女の敵は許さない〟がモットーである。
〝カツレツ〟のことはわかった。
続いて、リョウタと、モデル業界についても調べる。
リョウタ。
32歳。若いがファッション業界では、その名を知らぬものはいない凄腕カメラマン。
カメラマン養成校を卒業後、ファッションモデル業界1本で進み、あちこちの事務所で修行し名を上げ、3年前からドン・ハルキサワ事務所の専属カメラマンになっている。
リョウタについて精査できる情報はそれだけだった。
一般公開情報。メディアの過去記事に出てくるのは、ファッション業界がらみの記事、人物紹介にインタビュー、カメラマンとしての実績、あとはファッションイベントで名前が出てくる。それだけだ。
プライベートの情報、トラブル、スキャンダル等は、一切見つからない。
警察の記録も参照したが、なにもなし。
現時点の情報では、表も裏も、問題の見つからない人物。綺麗な経歴。
ドン・ハルキサワ事務所と、モデル業界についても情報を改めて洗ってみる。
ドン・ハルキサワ事務所。モデルの出入りが多いが、犯罪がらみの事件は今のところ記録にない。芸能ゴシップスキャンダルはそれなりにあるが、よくある男女関係や喧嘩沙汰だけだ。昔、辞めたモデルが事件を起こした例はあるが、今の状況とは関係ないだろう。違法薬物がらみの事件は、報告されていない。
モデル業界、ファッション業界全体で見ると、当然と言うべきか、違法薬物案件はちらほらあり、毎年、逮捕者を出している。
あれこれの誘惑が多い世界なのだ。
ナミエも、危険な誘惑の先に?




