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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.3 黄金のカツレツ事件
26/97

第26話 黄金のカツレツの誘い



 おしゃれなレストランで。


 レイラは、心ときめく新人の女の子っぽく、瞳をキラキラさせる。のぼせ上がってる感を出そうと、努力する。


 「素敵なお店ですね。今日は本当にありがとうございます」


 「うーん、ここはまあまあだね、もっといろんな店知ってるから、また教えてあげるよ」 


 リョウタ、(とろ)ける笑顔で、ギラギラしたまなざしをレイラに向けてくる。


 強い視線をぶつけてくる。これは私にぞっこん? いや、それとも、そう見せておいて、私をうまく操縦しようとしているのかな?


 事件捜査は得意でも、こういう駆け引きは苦手な、というか、まったくの初心者なレイラ。


 今日はしかし、男女の駆け引きに来たのではない。そう見せておいて、なるべく情報を引き出せなくちゃ。


 まずは、無難に、新人らしく、仕事で困った話、悩みの相談などをしてみる。


 「ランウェイの時、すっごいカメラとお客さんの視線の集中放火にあって、もう頭から全部飛んじゃったんです。せっかく習ったウォーキングも何もできなくて」


 「あはは。みんなそんなもんだよ。気にすることないさ。習ったことより、自分に自信を持つことが大事」


 「そうなんですか。あ、こういうのもありました。下着をどう見せようかばかり考えていると、頭がこんがらがっちゃって。ほんと、自分が何を着るかもわからなくなっちゃうんです。私って、本当にダメで」


 「うんうん、心配ないよ。すぐに、下着が君をみんなに見せてくれるようになるさ」


 「えー、そうなんですか」


 まずまず、無難な会話が続く。下着モデルとしては、実際に新人なので。いろいろ話せることはいっぱいあった。



 食事が進む。

 

 (グラス)を重ねたリョウタ、目の光がどんどん妖しくなり、饒舌になる。軽い興奮(トランス)状態。芸術家気質にありがちな、自己陶酔型なのだ。レイラは、慎重に分析する。


 リョウタは、がんばって無邪気な仔猫ちゃんの顔をするレイラを前に、業界や自分の仕事の話を熱く語りだす。


 「いやー、レイラちゃんはぐんぐん伸びて行ってくれるから、こっちも助かるんだよ。花開かせようとしても、芽吹くのも難しいっていう子も結構いるからね。素材素質はよくてもね。そこからどう伸びるかってのはわからないものさ」


 うんうんと、相槌を打つレイラ。



 ◇


 

 「今日はどうもありがとうございました。本当にためになるお話を、いっぱい聞けました」


 レイラは、無邪気な笑顔。


 デザートの時間になっていた。


 いろいろ下着ファッションモデル業界の話は聞けたが、核心部分の事は聞き出せていない。やや、焦りがあった。しかし、急いではいけない。有力情報源を確保できただけでも、よしとしなければならない。そんなに突然核心の情報に迫れるものではないのだ。


 しかし。


 何とか食いついていく。


 「リョウタ先生、本当に感激です。すごく素敵なお店でした。こんなの初めてです。もう大感動です」


 瞳をキラキラさせるレイラ。


 「そう?」


 斜に構えたリョウタ。すっかり上機嫌である。


 「はい。大きな海老の料理、すごかったです。もう、びっくりしちゃいました」


 「ああ、あれはね」


 リョウタがもったいぶって言う。


 「超古代の原種(プロトタイプ)手長海老を巨大化させた、10倍手長海老ね。気に入ってくれた? あれから最近出す店多いよ。でも」


 リョウタ、(とろ)けるような笑みをさらに深く。


 「新人モデルの子を、本当に虜にするのは、こういう店じゃない」


 レイラ、目をぱちくりしてみせる。


 「どういうことでしょう?」


 ふふ、とリョウタは笑う。


 「女の子をね、うっとりとさせる秘密、それがあるんだ。僕には」


 なんだ? 


 レイラは、全力警戒モード。全神経を集中して聴く。何か重要なことを話しそうだ。


 リョウタは、陶然と。身を乗り出して、レイラに囁く。


 「黄金(きん)のカツレツだよ」


 「えっ?」


 レイラ、戸惑う。なに? 重大な秘密を打ち明けるように言ってくるからなにかと思ったらカツレツか。リョウタの秘密がカツレツ? なにそれ。カツレツって、厚く切った豚肉に衣をつけて揚げたあのカツレツのこと?


 面食らうレイラ。


 リョウタは、しっかりとレイラの瞳を見つめている。


 「本当にとっておきなんだ。僕のはね。もう、何人も、モデルの子がこれに溶けちゃってね。緑の髪の子の。もうメロメロ。みんなそうなる。これはもちろんレストランなんかで出せない。出ない。僕の家で、出せるんだ。本当のとっておきっていうのは、そういうものなんだ。どう? レイラちゃん、興味ある? 体験してみたい?」


 リョウタの瞳の妖しさ、最高潮に。


 レイラの体が凍りつく。


 今、なんて言った?


 緑の髪の子!


 そう、間違いなくそう言った。


 ナミエ!


 失踪したモデル。


 いきなり核心が来た!


 欲しいと思っていた情報。このために潜入捜査をしていたんだ。


 レイラ、すばやく頭を働かせる。


 カツレツ? モデルの子がみんな溶けちゃう? 緑の髪の子がメロメロ?


 どういうこと?


 その時、頭に何かがよぎった。


 内心、あっと叫ぶ。


 そうだ!


 カツレツ。これは隠語(ジャーゴン)だ。


 10数年前に流行した危険な違法薬物(ドラッグ)! それをカツレツというんだ。


 確か宇宙警察が全力で捜査介入撲滅した違法薬物(ドラッグ)だ。


 そのカツレツ(ドラッグ)で。緑の髪のモデルの子がメロメロ。


 つながった。


 間違いない。


 ナミエは、リョウタの違法薬物(ドラッグ)パーティーに参加した。


 そして〝溶けた〟


 もう姿を見せることはなかった。


 間違いない。


 真相を見つけた。



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