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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.3 黄金のカツレツ事件
24/86

第24話 釣り針



 「はい、お疲れ様ーっ!」


 撮影は終わった。


 リョウタは、ご機嫌である。


 レイラは更衣室で撮影用の下着を脱いで、普通の下着と服に着替えてくる。


 「今日はどうも、ありがとうございました」


 リョウタに、丁寧にお辞儀する。新人らしく、ぴしっと背筋を伸ばして。


 「うーん、レイラちゃん、本当によかった。なんていうか、君の爆発的なエネルギー、みんなを星屑にしちゃうようなのを感じちゃった。もう、吹っ飛ばして、吹っ飛ばして、吹っ飛ばすのね。熱かった。周りはみんな消し炭ね。もう、カメラを持つ手が火傷するかと思うくらい」


 撮影が終わっても、まだ軽く興奮(トランス)状態のリョウタ。


 「そんな」

 

 レイラは、ややぎこちない笑顔を浮かべ、もう一度、お辞儀。リョウタは何を言ってるんだ? みんなを吹っ飛ばして消し炭? 悪党相手ならそうしてやるけど。下着モデルの自分にそんな(パワー)(オーラ)だあるの?


 「もう、私、夢中で。何がなんだかわからず。本当に、すごいお仕事の体験できました。どうもありがとうございました」


 なるべく新人ぽく。カメラを置いたリョウタ。ギラギラした目でレイラを見つめる。 


 「謙遜しなくたっていいんだよ。やっぱりルイーザさんが目をつけるだけある。君、何かあるね。またの仕事も、一緒によろしくね」


 こういうのも、カメラマンのモデル操縦術なのだろうか。将来、有望そうなモデルを気を良くさせて、味方につけておくとか。打算と野心が、渦巻く世界。


 とにもかくにも。


 「まあ、どうしよう」


 レイラは、〝嬉しくてしょうがありません〟アピール。オドオドしてみせる。突如、脚光を浴びた新人の女の子。


 「リョウタ先生に、そんなふうに言ってもらえるなんて。お世辞でもうれしいです。心臓がひっくり返っちゃいそう。ああ、みんなに自慢したいなあ。でも、私、本当にモデルは初めてで。何がいいのか悪いのか、全くわからないんです。だから、いろいろ不安で。みんなに認めてもらえるのは嬉しいけど、全然勉強が足りない。どうすればいいんだろう、いつも悩んでるんです」


 すっとリョウタに近づき、小声で、囁くように言う。


 「レイラちゃん、君は、あれこれ心配するようなことを、何にもないよ。勉強が足りない? 確かに、経験が足りないと不安だよね。仕事の事、業界のことで、悩んでいるの?」


 「はい」


 レイラ、目を伏せる。


 「本当に、誰かにいろいろ相談できるといいんですけど」


 「うーん、それじゃ」


 リョウタの眼が光った。


 「僕でよければ、相談に乗るよ」


 おおっ、


 食いついてきた。


 レイラ、内心、やったぜと叫ぶが、さあらぬ体で、


 「そんな。リョウタ先生に相談に乗ってもらえるなんて。私、まだ駆け出しだし」


 「ううん、いいんだよ。将来ある子の力になれるなら、僕はなんだって惜しんだりしないさ」


 耳元で囁くように、言ってくる。


 「本当ですか?……それじゃあ、よろしくお願いします!」


 レイラも、小声で。


 他のスタッフに見えないように、こっそりと、リョウタと連絡先を交換する。


 仕事が終わり、スタッフの面々に挨拶し、撮影ルームを出る。


 1人になるやいなや。携帯端末(パッド)で、さっそくリョウタに通信(メッセージ)を送る。 


 『今日はどうもありがとうございました、先生のこと、頼りにしています』


 すぐに返事が来た。


 『レイラちゃん、こちらこそよろしくね。話がしたいの? じゃあ食事でもする? 今日空いてる』


 来た。 


 食いついてきた。


 レイラは、はい、ぜひ、喜んでと返信する。


 よし。


 潜入捜査。次の段階へ。


 今度の標的(ターゲット)は、


 カメラマン、リョウタ。



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