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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.10 盗まれたショーツ
120/195

第120話 ショーツとフウチョウ



 「あったよーっ!」

 

 レイラは叫ぶ。その手には。


 クレオラント社が社運を懸けて開発した、透かし織(レース)に特殊素材の宝石が縫い込まれたショーツ。高々と掲げている。失われて大騒動になっていたショーツだ。


 オレンジフウチョウ。飛び立った先は、温室の高い棕櫚の木の頂だった。さっそく梯子を掛け、レイラが登ったのである。


 棕櫚の木の頂には、小枝を集めて作ったオレンジフウチョウの可愛い巣があった。そこに、キラキラと宝石が光り輝くショーツがあったのである。


 クレオラント社の開発部責任者の女性、レイラが取ってきたショーツを確認する。間違いなかった。安堵の表情が浮かぶ。企業スパイ、技術流出はなかったのだ。犯人は、温室の鳥だった。


 ほっとしたのは、ドン・ハルキサワ事務所のルイーザその他の面々も同じ。事務所の信用問題に発展するところだったのだ。


 誰よりも安心したのは、


 「カオリ、ありがと!」


 レイラは、夢見心地の瞳のダウナー系少女を抱きしめる。


 「いえ」


 カオリは、言う。


 「オレンジフウチョウ。鳥は普通、嗅覚は発達していないのですが、園芸と観賞用に、この鳥はオレンジの香りに反応して、啄み、果実をもいで運ぶように、生命工学で造られたのです。人を恐れる性質があるので、みんながいないときに、こっそりとオレンジの香りのするショーツを持っていったのでしょう。これがわかったのも、すべては数列の導きなのです。森羅万象、宇宙の万物に、不思議はありません。ただ1つの法理に、支配されているのです」


 「ほんと、助かった!」

 

 レイラにとって、いつもなら、危険な匂いのする数列の講釈も、今はありがたく感じた。



 ◇



 ギルバンは。


 「無事解決か。めでたし、めでたし、だな」


 「なに言ってるのよ!」


 レイラは食ってかかる。


 「あんた、今日、何もしてないじゃない! それで、よく報酬を受け取れるのね!」


 「うーん」


 と、ギルバン。


 「俺は来たばかりなんだぜ。調査に着手したばかりだ。俺が本気を出せば、これくらい自力で簡単に解決できたぜ」


 「どうだか」


 レイラは白い目で探偵を見る。


 「あっ、そうだ」


 ギルバン、急に気づいたように、


 「なに?」


 と、レイラ。


 「うん。レイラ、お前が下着モデルだとわかった。せっかくだから、画像を探して、評価してやるよ」


 「……別に、いいよ」


 レイラは、下着モデルである。職業柄、見られるのは当然なんだけど。こいつに見られるのは、なんだか。顔が、カーっと赤くなる。


 「見られるのが、お前の仕事だろ?」


 と、ギルバン。


 「そうだけど」


 「じゃあ、しっかり見てやるからな」



 うぐ……



 なんだろう。レイラの頭、妙に熱く。胸はざわめく。


 「み、見るのは別にいいけど、別に感想とか、いらないからね! もうあんたなんかとは、絶対に会わないんだからっ!」


 カッカして。


 ギルバンを殴り倒してやりたかったのだが、事務所のみんなの手前、自重した。


 

 ◇


 

 華やかな下着モデルの世界に身を置いて。


 レイラの潜入捜査は、続く。




( 事件簿No.10 盗まれたショーツ 了 )



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