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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.10 盗まれたショーツ
119/195

第119話 数列家の出番



 身体検査。


 レイラは、もちろんギルバンにではなく、クレオラント社の女性社員によって、素っ裸になっての入念な身体検査を受けることになった。民間企業の内部調査である。法律上の捜査権限は無い。だからといって、拒否するわけにはいかないのである。


 「これでわかったでしょ? 絶対に私じゃないから」


 身体検査を終え、取調室に、女性社員と入れ替わりに戻ってきたギルバンに向かって、レイラは言う。もちろん、消えたショーツは出てこなかった。


 「ううむ」


 ギルバン、顎を撫でる。


 「おかしい。パンツが煙のように消えてなくなる。そんな事はありえない。やはりどこかに、見落としがあるんだ」


 「うん。ちゃんと考えてね。あんたが仕事をきちんとすればいいのよ」


 「レイラ、お前、侮れんな。巧妙な(トラップ)を張った。そう、見える」


 「だから、絶対に私じゃないって! もう疑わないでよ!」


 「いずれにせよ、俺の眼を、いつまでも欺き通すことは、できん」



 レイラも、もちろん、必死に考えていた。


 ネクリのショーツ。クリーニングの籠に入れたのは、この目で確かに見た。その後。誰も籠から、持ち出せなかったはずだ。最後に部屋に1人で残っていたレイラ以外には。


 企業スパイとして、疑われている。


 このままじゃ、本当にまずい。なんとかしなくちゃ。



 ◇



 「レイラさん、疑惑は晴ましたか?」


 ギルバンの取り調べを終え。


 一応、放免されたレイラは、事務所のモデル、スタッフみんなの待機している会議室に戻ってきた。声をかけてきたのは、カオリ。


 「うーん」


 レイラの顔色、冴えない。


 「結局、ショーツは出てこないし。どうやってなくなったのかわからない。私が1番疑われている状況、全然変わりないのよ。もう、本当に困った。カオリ、数列の力で、ショーツを探せないの?」


 「特殊素材の一枚の布。残念ながら、数列道50億年の歴史を汲み上げても、探すのは難しいです」


 夢見心地な瞳のカオリも、お手上げのようだ。


 ネクリも、やってくる。不安げな表情だ。


 「レイラ、ごめんね。私のショーツのせいで」


 「ネクリのせいじゃないから。気にしないで」


 「レイラが盗むなんてありえない、みんな、それはわかっているから」


 「うん。ありがとう」


 その時、カオリが、


 「ネクリさん、今日は香水を変えましたか?」


 不意に、訊いた。珍しく、強い口調。


 「え?」


 目を丸くするネクリ。


 「うん。変えたよ。オレンジの香り。わかるでしょ」


 「オレンジ」


 カオリの夢見心地な瞳が、見開く。


 なんだろう、レイラはカオリを見つめる。香水のことなんて、急に言い出して。数列家の少女。何か気づいたのか? でも、香水とショーツの消失と、何の関係があるの?


 「真相が、わかったかもしれません」


 カオリが言った。



 ◇



 みんなで、下着(アンダーウェア)を試着体験した、スタジオに集まる。


 ドン・ハルキサワ事務所の面々、クレオラント社のスタッフ。それにギルバンも。


 「ちょっと実験をしてみましょう」


 カオリが、言う。


 「ネクリさん、ハンカチは持っていますか? ハンカチに、今日使った香水を落として、クリーニング籠の置いてあった場所に、置いてみて下さい」


 うなずくネクリ。自分のハンカチに、香水を1滴垂らし、床に置く。


 「皆さん、では、なるべくハンカチから、離れて見守りましょう。準備はできました。これで、真相がわかるはずです」


 カオリの指示に従って。みんな、ハンカチから離れて、スタジオの隅に。


 いったいどうなるのか?


 固唾を呑んで見守る。


 この温室へのガラス戸は、開け放たれている。


 温かな風が、室内に入ってくる。


 やがて。


 不意に、何かが、飛び込んできた。


 「あっ!」


 みんな、思わず叫ぶ。


 オレンジ色の鳥だ。小ぶりな体。長く美しい羽根をしている。鳥は、まっすぐに、ネクリのハンカチへ。そしてハンカチを咥えると、また、温室へと飛び立っていった。


 みな、呆気にとられる。


 「決まりです。これで、犯人がわかりましたね」


 カオリが言う。


 「ショーツを持っていったのは、あの鳥です。極楽鳥を特殊進化させた、オレンジフウチョウです。オレンジの香りに目の無い鳥です」


 みな、オレンジの鳥の飛び立った先を、見上げる。



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