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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.10 盗まれたショーツ
118/195

第118話 探偵の出番



 「ここへ来るまでに、会社の予備調査の内容については目を通した」


 ギルバンは、言う。

 

 「今日、スタジオに、大勢の人間の出入りがあった。そして重要な企業機密である、新開発素材のパンツが1枚なくなった。そういうことだな。もし、このパンツが持ち出され、情報が他社の手に渡ると、クレオラント社にとって大打撃となる」


 レイラは、うなずく。いたってシンプルな事案だ。ギルバンは続ける。


 「パンツは、モデルが試着した後、他の下着と一緒に、クリーニングの籠に入られた。それは、みんな見て確認している。ところがその後、クリーニングの籠を確認すると、パンツはなくなっていた。屋内のスタジオにも、外の温室スタジオにも、どこを探しても見当たらない。重要な企業機密が、消えてしまった」


 「そうよ。で、どうなの?」


 と、レイラ。ジリジリする。結論は、わかり切ってることなんだけど。


 「うむ」


 ギルバンは、もったいぶって、両手を頭の後ろに組む。

 

 「大勢の人間がいるところで、何かが一つ無くなった。こういう場合、調査をするのは、通常極めて困難だ。ところが今回の場合、みんなの証言が一致している。実にスッキリとした事件だ。誰にも見られずに、パンツを持ち出すことができた者、それは1人しかいない。レイラ、犯人はお前だ」


 ビシッとした目線でレイラを突き刺すギルバン。


 「あのさ」


 レイラは、苛立つ。


 「私、絶対やってないから! 会社の人にも散々言ったけど」


 「真実というのは」


 ギルバンが、重々しく言う。

 

 「論理の導くところ、必ず受け止めなければいけない。それがたとえ、どのように受け入れがたいものであってもだ」


 「あんたねえ、何の名探偵気取り? 私が持ち出した? そんなことしてないし。だいたい持ち出して、どこに隠したっていうの?」


 「それを調べるのが、俺の仕事だ。状況はかなりの程度、わかっている。こんな楽な仕事は、初めてだ」


 ギルバンは。指をパチンと鳴らす。レイラの苛々、ますます強まる。刑事の自分が、私立探偵なんぞの取り調べを受けるなんて。


 「じゃあ、さっさと解決してよ。私が盗んだとか、絶対ありえないからね」


 ギルバン、やにわに立ち上がり、両手をドン! と、机につく。


 「レイラ、ここはひとつ、ちゃんと話をしよう」


 「なによ」


 「すべてを話すんだ。今のパンツの在処を言ってくれ。今なら、まだ、間に合う。出来心で、ついパンツを持ち出してしまいました、そう言うんだ。そうすれば、穏便な処分もできるぞ」


 「あのさ」


 レイラのキリキリ、限界に。


 「あんたの取り調べって、50億年以上、遅れてるんだからっ!」


 ギルバン、じっとレイラを見つめる。


 そして口元に、ふっと笑みを浮かべると、


 「そうか。やはり、お前がそう簡単に落ちるわけは、ないか」


 「落ちるも何もやってないし、何にも知らないからね」


 「では」


 ギルバンの目が、また光る。


 「身体検査をさせてもらうぞ」


 「え?」


 身体検査、だって?



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