第118話 探偵の出番
「ここへ来るまでに、会社の予備調査の内容については目を通した」
ギルバンは、言う。
「今日、スタジオに、大勢の人間の出入りがあった。そして重要な企業機密である、新開発素材のパンツが1枚なくなった。そういうことだな。もし、このパンツが持ち出され、情報が他社の手に渡ると、クレオラント社にとって大打撃となる」
レイラは、うなずく。いたってシンプルな事案だ。ギルバンは続ける。
「パンツは、モデルが試着した後、他の下着と一緒に、クリーニングの籠に入られた。それは、みんな見て確認している。ところがその後、クリーニングの籠を確認すると、パンツはなくなっていた。屋内のスタジオにも、外の温室スタジオにも、どこを探しても見当たらない。重要な企業機密が、消えてしまった」
「そうよ。で、どうなの?」
と、レイラ。ジリジリする。結論は、わかり切ってることなんだけど。
「うむ」
ギルバンは、もったいぶって、両手を頭の後ろに組む。
「大勢の人間がいるところで、何かが一つ無くなった。こういう場合、調査をするのは、通常極めて困難だ。ところが今回の場合、みんなの証言が一致している。実にスッキリとした事件だ。誰にも見られずに、パンツを持ち出すことができた者、それは1人しかいない。レイラ、犯人はお前だ」
ビシッとした目線でレイラを突き刺すギルバン。
「あのさ」
レイラは、苛立つ。
「私、絶対やってないから! 会社の人にも散々言ったけど」
「真実というのは」
ギルバンが、重々しく言う。
「論理の導くところ、必ず受け止めなければいけない。それがたとえ、どのように受け入れがたいものであってもだ」
「あんたねえ、何の名探偵気取り? 私が持ち出した? そんなことしてないし。だいたい持ち出して、どこに隠したっていうの?」
「それを調べるのが、俺の仕事だ。状況はかなりの程度、わかっている。こんな楽な仕事は、初めてだ」
ギルバンは。指をパチンと鳴らす。レイラの苛々、ますます強まる。刑事の自分が、私立探偵なんぞの取り調べを受けるなんて。
「じゃあ、さっさと解決してよ。私が盗んだとか、絶対ありえないからね」
ギルバン、やにわに立ち上がり、両手をドン! と、机につく。
「レイラ、ここはひとつ、ちゃんと話をしよう」
「なによ」
「すべてを話すんだ。今のパンツの在処を言ってくれ。今なら、まだ、間に合う。出来心で、ついパンツを持ち出してしまいました、そう言うんだ。そうすれば、穏便な処分もできるぞ」
「あのさ」
レイラのキリキリ、限界に。
「あんたの取り調べって、50億年以上、遅れてるんだからっ!」
ギルバン、じっとレイラを見つめる。
そして口元に、ふっと笑みを浮かべると、
「そうか。やはり、お前がそう簡単に落ちるわけは、ないか」
「落ちるも何もやってないし、何にも知らないからね」
「では」
ギルバンの目が、また光る。
「身体検査をさせてもらうぞ」
「え?」
身体検査、だって?




