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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.10 盗まれたショーツ
116/195

第116話 パンツの調査



 パンツが1枚無くなった。


 そういうことでは、ない。


 宇宙でも超一流の下着(アンダーウェア)メーカー大企業、クレオラント社。それが技術の粋を結集して作った新素材の下着(アンダーウェア)。絶対の企業秘密案件だ。


 それが、無くなった。大企業の命運をかけた技術流出案件である。1枚のショーツでも、莫大な利益の得失が生まれるのだ。


 今日、試着したモデルたちが脱いだ下着は、すべて洗濯カゴに入れた。それをチェックしたところ、ショーツが1枚ないというのである。


 事件である。


 モデルたちを始め、ドン・ハルキサワ事務所の面々は、食堂から別室へ移される。


 クレオラント社の開発部責任担当者の女性社員が、事実関係を確認する。


 今回試着した下着(アンダーウェア)は、誰が何を着たか全て記録されていた。問題の、無くなったショーツは履いていたのは、



 ネクリ。



 透かし織(レース)に宝石を散りばめた模様のショーツ。


 間違いなかった。



 ◇


 

 「ちょっと待ってください」


 レイラは、手を挙げる。


 「ネクリが問題のショーツ、手に持っているのを見ました。そしてネクリは、それを洗濯カゴの中に放りました。私は確かに見ました。間違いありません。ネクリがショーツを盗んだとか、そういう事はあり得ません」


 と、力説する。


 他のモデルからも、ネクリが問題のショーツを洗濯籠に入れたのを見た、との証言を得られた。


 ネクリは自分の着ていた下着(アンダーウェア)を、すべて、洗濯籠に入れた。それを何人も見て、しっかり証言している。ショーツを持ち出すことはできない。絶対に不可能だ。それは、はっきりした。では、誰が。


 モデルのみんなが、試着したスタジオ。


 最後に1人で残ったのは、


 レイラ。


 皆の証言が、一致した。スタジオを最後に出たのはレイラ。その後、スタジオの扉はぴったりと閉じられた。会社の人が確認している。間違いない。



 ◇


 

 「えええっ! 私、やってませんけど!」


 急に雲行きが怪しくなってきた。みんなの証言を総合すると、そうなる。レイラは、焦る。私が新開発のパンツを盗んだ? そんなことあるわけないんだけど。そうはいっても。開発部の女性の冷たい視線が刺さる。なんだか急に重たい感じが。


 「な、何なの、この空気」


 確かに。


 レイラは、ネクリが自分の下着(アンダーウェア)を、洗濯カゴに入れるのを見ていた。ネクリがスタジオから出ていくのを見ていた。そして、モデルのみんながスタジオを出て行った後、1人だった。これは自分でもわかってるし、みんなの証言でも、そうなる。レイラが、ネクリのショーツを物欲しそうに見ていた、と言う証言も出た。


 あのショーツを、欲しいと思った。それは確かだ。うん。


 でも。


 ネクリのショーツを盗むなんて、ありえない。


 自分じゃやってないのはわかっているけど。これは、かなりまずいな。置かれた状況。刑事の手法と手順での客観的分析。どう考えても怪しいのは自分。レイラはいよいよ焦る。


 「レイラ、あなたを疑ってるわけじゃないの、これは決まりなの」


 と、ルイーザ。


 「ちゃんと調べてもらってね」


 否応なく、レイラは、クレオラント社の取り調べを受けることになった。



 ◇



 「あの、私、確かにスタジオに最後に1人で残っていました。それはその、今日一緒に撮影したお猿さんに挨拶しようと、そういう理由で。別に、みんなが脱いだ下着に手を出したりはしていません」


 我ながら馬鹿なことを言っている。それはわかる。いかにも、妙なごまかしを並べてるようにしか。でも、事実なのだ。


 不審の目でレイラを()るクレオラント社の社員。


 「専門家の調査を受けてもらいます」


 と、言われた。



 1人で別室に連れていかれたレイラ。


 今の状況って。自分は疑われている。大企業に徹底的に身辺調査されたら、どうなるか? パンツ泥棒とかの前に、宇宙警察の刑事だとバレちゃう。


 まずいな、どうしよう、と焦りに焦りまくっていると。


 調査員が、現れた。


 「ええっ!」


 レイラは、唖然となる。


 現れたクレオラント社の調査員。


 「なんで、あんたが!?」



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