第114話 技術の粋
色とりどりの新素材の下着を試すモデルたち。
「はーい、撮影入るよっ!」
自分の出番と、勢いこむリョウタ。事務所の専属カメラマン。リョウタは先日の事件で少しスランプ気味だったが、また立ち直って、いつもの自分を取り戻していた。なんだかんだ、撮る女の子がいれば元気になるのだ。
「さあ、みんな、しっかりポーズとってね。下着は、身に付けるもの。それ以上に、見るもの、撮るものだからね!」
見栄え、映り、が大事なのは当然だ。モデルたちも真剣にポーズをとる。
スタジオ内で、試着撮影を一通り済ますと、
「さあ、それでは、屋外庭園スタジオでの、撮影に入ります」
開発部女性の声。
「いろんな構図、光線の変化を試すのも重要だからね」
と、リョウタ。新素材の撮影。映り具合。カメラマンにとっても、重要なテーマだ。貴重な機会。
モデルたちとスタッフは、ぞろぞろと、外へ移動。
屋外の庭園といっても、当然ながら高い壁に囲まれていて、外からは見えない。屋内のスタジオと同様に安心して下着の試着撮影ができる。庭園は、透明なドームの天井があり、温室仕様になっていた。
◇
「ねえ、レイラ、見て。ここ、いろんな動物がいるね。鳥も」
と、瞳をキラキラさせたネクリが話しかけてくる。
「うん、この温室スタジオ、ちょっとした動物園だね」
庭園には、鳥獣が、のんびりと、たたずんでいた。
孔雀、火喰鳥、極楽鳥、フラミンゴ、駝鳥、色鮮やかな栗鼠、アルマジロ、陸棲ワニ、アライグマ……たくさんの種類。もちろん花や樹も美しく咲き、茂っている。
みんな撮影に華を添える、小道具の役割なんだ。
「キャー、可愛い!」
珍しい動物たちに、早速寄り付こうとするモデルたち。
「こらー、今日の主役は下着の新開発素材よ! 大事な仕事なんだから。みんな、真剣に!」
ルイーザの叱咤が飛ぶ。
温室庭園の、光と影の中で。
賑やかで、真剣な試着撮影。動物や鳥と一緒の撮影や、小動物を抱えての撮影もあった。動物たち、特別に飼い慣らされているのだろう。みな、おとなしくカメラに映っていた。
ネクリは、小型のアルマジロを抱いての撮影で、ご機嫌であった。身に付けているのは、薄いぴっちりした透かしの下着。キラキラした宝石が、いっぱい散りばめられている。
「ネクリ、ゴツゴツしたアルマジロなんか抱いて、透かし織、破けないの?」
と、レイラが声をかけるが、ネクリはここぞとばかり、
「それが違うの。この素材、極薄だけど、すっごく丈夫なの。柔らかいのに、びくともしない。さすがね!」
「へえ、薄い透かし織にしか、見えないけどね。ちょっと触っていい?」
「うん。いいよ。思いっきり引っ張っても、絶対破けないから。それでいて、肌触り、すごくいいの」
レイラ、ネクリの透かし織を撫ぜたり引っ張ったりしてみるが、滑らかな手触りなのに、強靭である。びくともしない。どうやっても破れそうにない。
これにはレイラも驚く。
「すごいね。でも、これに嵌め込んである宝石は? 綺麗だけど肌に当たって、痛くないの?」
「うふ、宝石に見える? そう見えるけど、違うの。これも特殊素材なのよ。全然硬くないんだから。触ってみて」
「え?」
触ったレイラ、目を丸くする。
「ホントだ」
薄い透かし織に、宝石が散りばめられ、縫い込まれている。そうとしか見えないんだけど。
薄いけど破れない透かし織、宝石にしか見えない、柔らかい素材。
華やかな下着の中に新開発技術の粋を尽くし、秘密がいっぱい詰め込まれているんだ。
試着撮影、佳境に入っていった。
青い髪のダウナー系少女モデル、カオリは、黄金色のブラジャーとショーツで、ピンクのフラミンゴにお尻を突っつかれ、キャッと叫んでいた。




