第113話 大手下着メーカーの本社
「キャー、綺麗!」
「ねー、これ、手触りがすごい。なんだろう。ふわふわ感。こんなの初めて!」
「えー、どれどれーっ!」
下着モデルたちの歓声が響いている。
宇宙で名高い女性物下着デザイナーのドン・ハルキサワ事務所所属のモデルたち。
今日はドン・ハルキサワが契約提携している大手下着メーカーの一つ、クレオラント社の新開発素材の試着体験のため、メーカー本社のスタジオにみなで来ていた。事務所のNo.2、副社長ルイーザに引率されてである。スタッフを入れて、総勢30名。
スタジオの机の上には、あれこれの新開発素材が並べられている。興味津々に、目を輝かせるモデルたち。
レイラも、いろいろ手に取ってみる。
「へー、肌触りも見た目も、本当にみんな違うんだな」
机に並べられた試供品の数々。ありとあらゆる種類がある。これが、素材に模様、アクセサリー、デザインの組み合わせで、また無数に変化をするんだ。
レイラは下着モデルになる前から、もちろん下着には注意を払っていたけど、素材の種類だ違いだなんて深く考えたことはなかった。
クレオラント社の開発部の女性が、自信満々に、説明する。
「当社製品は、下着だけで5000種類以上の素材を使用しています。どれも開発部が時間と予算をかけて、一つ一つ丁寧に作り上げたものばかりです。今日は新開発のものを、しっかりと試していただきます」
5000種類!
モデルたちから、おおっ、と声が上がる。
そんなにあるんだ。レイラもぽかん、となる。それじゃあ1日に一つ試しても、10年あっても全部体験できないんだ。いや、これ、製品の数じゃなくて素材の数だよね。素材の組み合わせとか考えたら、もう一体どんだけの数になるんだろう。
クレオラント社だけでなく、大手メーカーは研究開発に凌ぎを削っている。レイラたち契約提携下着モデルの試着体験のレポートも、研究開発の貴重な材料となるのだ。
◇
「さあ、いろいろ手に取っていただけましたか? では、実際に試着していただきます。付け心地、着心地、履き心地、しっかりレポートしてくださいね」
素材についての工学的技術的な説明を一通りした後、開発部の女性は言った。みんな着替えに入る。
レイラも、ワクワクする。新素材を試す。いつもの撮影とは、また違った仕事だ。もちろん新素材の下着での撮影もする。実際の見栄え、それも重要だ。
フワフワした素材の下着を選ぶ。これを試着してみよう。
クレオラント社の試着撮影のためのスタジオ。郊外の本社の中にある。とても広かった。
ドン・ハルキサワ事務所のスタジオは、星都のタワービルの中にあるので、やや、手狭だった。ここは開放感がすごい。
「気持ちいいスタジオだな」
広々とした空間で、レイラの心も和む。
スタジオの広さだけではない。スタジオのガラス戸の向こうは、広く美しい庭園になっていた。噴水や、小川がある。いろいろな構図で撮影できるよう、趣向が凝らされていた。
キャッキャするモデルたち。
試着タイムの始まりである。




