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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.9 リョウタの災難
112/188

第112話 至高の美の向こうへ



 「どうだった、カオリ。アンドロイドの究極の美、数列の研究の役に立ったの?」


 星都に戻る帰りのエアバスで。


 レイラは、カオリに訊いた。


 小さな体を震わせながら、数列家の少女は応える。


 「アンドロイド、人造物の美の波長は自然のものとは確かに違いますが、あれほどの完璧な数列の配置、初めてみました。人の造りしもので、あの域に辿り着くことができるなんて。でも、わかりました。人はきっと宇宙万物の根源数列に、迫ることができるのです。想いの強さ、それが無限の可能性を生み出すのです」


 おやおや、とレイラ。


 この子も、卒倒しなけりゃいいんだけど。


 

 事務所へは、事情を説明した。事はあまり騒ぎ立てないでほしいと言うドーラの願いも伝えた。


 ルイーザは、大満足だった。


 「2人で調べに行ってくれたの? お手柄ね。これでみんなすっきりして、また仕事に取り掛かれる。なんてったって、リョウタはうちの事務所に必要なんだから」


 リョウタは。



 ◇



 「どうしたの? 元気ないですよ」


 下着モデルの撮影現場。


 レイラは、張り切って、リョウタに声をかける。レイラはビシッと決めた白のブラジャーにショーツ、お尻にはペルシャ猫の尻尾をピンと立てた、ドン・ハルキサワ肝煎の意匠(デザイン)下着(アンダーウェア)


 カメラを手にしたリョウタ。どうも元気がない。いつも撮影現場では、誰よりもハイテンションで興奮(トランス)状態になり、モデルを盛り上げるのが役割なのだが。


 「僕は、あの美女がアンドロイドだと見抜けなかった。そして今でも、彼女が究極の美だという思いを捨てきれない。本当に圧倒されたんだ……僕の追い求めた美とは何だったんだ。誰かが作った作品を、僕は越えることができないのか」


 声を落とすリョウタ。


 令嬢のアンドロイドに出会ってから、ややスランプ気味である。真相がすべてわかった今でも。芸術家気質なのである。自分の信じる美の基準が揺らぐ。それはとても応えるのだ。アンドロイドに負けた、自信が打ち砕かれた。それがリョウタの災難であった。


 「もう」


 レイラは声を張り上げる。


 「大丈夫! 強い想いがあれば、アンドロイドがびっくりするような、すごい写真だって撮れるから! それに、生きている人間のピッチピチの女の子の方が、絶対にアンドロイドよりもいいに決まってるんだから!」


 レイラも下着モデルの仕事に打ち込んでの自尊心(プライド)がある。アンドロイドに負けたと言われて、このままでいるわけにはいかない。


 レイラは、足を開き、両手を組んで高く掲げ、大胆なポーズをとる。ペルシャ猫の尻尾をピンと立てて。



 「さあ、撮ってちょうだい、最高の1枚をね! ここにある美しさ、リョウタなら、きっと見つけられるんだから!」



 ◇



 華やかな下着モデルの世界に身を置いて。


 レイラの潜入捜査は、続く。



( 事件簿No.9 リョウタの災難 了 )



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