第109話 小屋の中で
光線銃を向けられて。
レイラは慌てて両手を上げた。
鳥打帽の女性は、
「このエリアの管理センターから、通報がありました。不審者が侵入したと。それで見に来て見れば。あなたたち、エアバイクを乗り回してここまで暴走してきたんですね。どういうつもりですか? ここは私有地です。うちのお嬢様に、何をするつもりなのです?」
と、鋭い眼を向けてくる。
レイラは、うちのお嬢様? あのアンドロイドのこと? と、思ったが、とにかく撃たれちゃまずいと
「あの、私たち、怪しい者じゃありません。職場の人がこの森で不思議なことに出会ったというのを聞いて、確かめに来たんです」
「不思議なこと?」
鳥打帽の女性は、なおも光線銃を構えたまま。
レイラは、同僚のリョウタが自然公園で美女に遭遇し、気がつくと森の中の小屋に連れ込まれていたことについて、話す。
「本当にものすごく、美しい女性だった、そう言ってたんです。この人のことです」
レイラ、両手を上げたまま、アンドロイド美女に目線を。ともかく、〝お嬢様〟らしい。
じっとレイラとカオリを見つめていた鳥打帽の女性は、
「そうですか」
と、光線銃を下ろした。
「この前来た青年の話を聞いたんですね。確かに気になる、そうですね。あなたたち、悪い人でもないようです。お嬢様に会いに来た。それでは少し話をして進ぜましょう」
女性はアンドロイド美女に向かって、
「さあ、お嬢様、中へどうぞ」
小屋の扉を開け、恭しく案内する。
アンドロイド美女は、微笑を浮かべたまま、小屋へ入って行く。
優雅で、軽やかな足取り、物腰だ。
でも。なめらかな動きだが、確かに、人間とは少し違う。レイラは感じた。言われてみれば確かにアンドロイドだ。それに、やっぱり表情も、そんなに種類はないんだろうか。言葉もしゃべれないのかな。
「さあ、あなたたちも、入りなさい」
美女を中へ入れると、鳥打帽の女性はレイラとカオリを招く。表情はすっかり柔らかくなっていた。光線銃は、もう腰の拳銃嚢にしまっている。
レイラとカオリ、お互い一度見つめ合った後、素直に小屋に招かれることにする。
◇
小屋の中。明るく、清潔な部屋だった。窓のカーテンを開けると、明るい陽の光がいっぱいに溢れる。
奥にベッドがある。リョウタがあそこに寝かされていたのだろう。卓と椅子も、ある。
「さ、お座りください。私はドーラ、ここの今の主です」
レイラとカオリ、言われるまま、椅子に座る。皆で卓を囲む。
アンドロイド美女は、すぐに、別室に引っ込んだ。結局、一言も喋らなかった。
「お気づきでしょう? うちのお嬢様がアンドロイドだということは」
と、ドーラ。レイラとカオリ、頷く。
「はい。びっくりしました。最初、人間だと見間違えてしまいました。こんな美しい女性を見たのは、初めてです」
レイラの素直な感想に、ドーラは、くっくっ、と笑う。
「そうですね。出会った人をびっくりさせてしまう。だから、普段はここから出ないようにしているのですが。お嬢様は、遠い昔のここの主であった、ゼラント侯爵家の令嬢の似姿そのものなのです」
大昔の、侯爵令嬢の似姿のアンドロイド。
どういうことなんだろう。
深い森の奥の静かな小屋の中で。
ドーラは、レイラとカオリに、アンドロイド美女の由来を語り始める。




