第108話 美女の謎
レイラとカオリ、息を呑む。
確かに。
見たこともない美しさだ。
降り注ぐ光の中、赤い髪と赤いドレスは、さらさらと風に揺れている。
明るく透き通った瞳。柔らかく結ばれた紅い唇。
かすかな微笑みを浮かべている。
ドキュッ!
レイラ、胸の動悸を感じる。
なんだ、これは。
レイラは、ファッション界のトップ事務所の契約モデルである。美女なら毎日、散々見慣れている。
それでも。
目の前の美女。別格だ。いや、なんだか非現実的。別世界感。どこか遠い星へいきなり連れ込まれたような。夢想の星へ。
ファッション界で美を追い求め続けてきたリョウタが真底心打たれ、カメラのシャッターを切ることもできなかった、というのも素直に理解できた。
見ただけで、わかるのだ。
なんだろう。なんでこんな人が、ここに現れるんだろう。現れてどうするんだろう。また接吻して失神させるの? 何のために?
突然の美女の出現にすっかり凍りついたレイラだったが、
「レイラさん」
カオリの声。あくまで冷静である。
「わかりました」
「……え?」
レイラは、やっと気を取り直す。
「わかった? ……それ、どういうこと? 何がわかったの?」
「はい」
カオリは、きっぱりと言った。
「あの人の正体です。あれは人間ではありません。アンドロイドです。放つ波長でわかります。人とアンドロイドでは、数列の響きが違うのです。これは、生命なき者です」
◇
アンドロイド?
レイラはまじまじと、微笑む美女を見つめる。
これが人造物なんだ。
驚きである。
確かに、非現実的、別世界な雰囲気だ。究極至高の美。これが精巧なアンドロイドなんだ。
宇宙世紀の時代、ロボット、アンドロイドも進歩している。だが、外見も動きも完全に人間そっくりというのは、まだできていないはずだ。
でも、目の前のアンドロイド美女は。少なくとも外見は人間、いや、人間を超えている。
うーん、しかし、待てよ。
さっきから、美女はずっと、レイラとカオリを見つめているままだ。
瞬きもしてるけど。
表情は変わらない。変えられないのかな。リョウタには、ずっと微笑みながら近づいてきて、接吻した、と言っていた。
やっぱり、表情や動きに制約があるんだ。
この画で見るなら、完璧な美女だけど。
彫像のようにも、見える。
◇
婉然と微笑む美女。正体はアンドロイド。
謎が少し解けたような、逆に深まったような。
アンドロイドとわかっても、じっと見つめてしまう。
見つめ合っていると、
「そこで、何をしているのです」
背後から、声がした。
振り向くと。小屋の影から、人が現れていた。
女性だ。鳥打帽に、乗馬服。革のブーツ。髪には白いものが混じり、高齢のようだ。
手には、光線銃。
その銃口を。
レイラとカオリに向けている。




