第105話 森へ
「レイラさん、落ち着いてください」
カオリが、ちょっとだけ声を高くして言う。
「そういう秘密の研究なら、そんな、とんちんかんなやり方ではしないと思います。それなら御伽話とか、森の魔女とか考えた方が、まだ現実的です」
「そう? ちょっとしたことが、大事件解明のきっかけになるなんて、よくあるのよ。不思議なことが起きた。その背後に何があるのか。現実的に起こりうる可能性を、1つ1つ考え、検討していく。真実は、その先にある。たとえそれがどのようなものであっても、真実を追わなくちゃいけないわ。小さなことを見過ごさない。これが基本よ」
レイラはきっぱりと言った。刑事たるもの、犯罪の匂いがすることは、どうしてもスッキリと解明したいのだ。
これが下着モデルとしてふさわしい発言なのかは、考えてなかったが。
「わかりました。私も真実が知りたいです。森の魔女の秘密がわかったら、面白いですし」
カオリは素直に言って、携帯端末を取り出し何かを調べている。
「ここで考えていてもこれ以上、何も出てこないようですね。レイラさん、明日は仕事入ってなかったですよね。2人で調べに行ってみましょう」
「調べに? どこへ?」
「意識を失ったリョウタさんが運ばれた小屋です。そこへ行けば、きっと何かわかります」
「うーんと、さっきも言ったけど、それがどこか、わからないんだよ」
「リョウタさんが意識を失った位置座標は、わかりますよね」
「うん。星立自然公園の中だよ」
「連れていかれたのは、自然公園に隣接する私有地エリア。ここも広大な森で、所々に人が住んでいます」
カオリは携帯端末を見ている。
「この私有地エリアの森は、現在、600以上の所有者区分に分かれています。部外者が入ると警報器が鳴って、番犬ロボット番人ロボットが出動して追い払います。リョウタさんを連れて行った美女の人というのは、私有地の通行許可証を持つ、内部の人だった。そういうことになります」
「それは間違いないね。だけど、広い私有地エリアに大勢の所有者がいる。どこの誰が、どうやって調べるの?」
「足跡です」
カオリの言葉に、レイラは、えっ、となる。
「足跡?」
「そうです。足跡を辿っていけば、小屋にたどり着くことができます」
「ちょっと待って。リョウタは、エアバイクに乗ってたんだよ。足跡なんて残らないよ」
エアバイクと言うのは、低空で飛ぶ乗り物である。
カオリは、首を振った。
「リョウタさんは、私有地エリアで、大勢の番犬ロボット番人ロボットに追われたと言っていました。番犬ロボット番人ロボットには、足があります。たくさんのロボットの足跡、まだ、残っているはずです」
「あ」
レイラも、ようやくわかった。
なるほど。とりあえず、リョウタが逃げ出した小屋までは、行けそうだ。
よし。
「行ってみようか、カオリ」
「はい、よろこんで」
先に待っているものは何か。
犯罪組織か、国家の陰謀か、それとも森の魔女か。
赤い髪と赤いドレスの美女。
この世のものとは思えない美しさだった、と、リョウタは語っていた。




