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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.9 リョウタの災難
105/182

第105話 森へ



 「レイラさん、落ち着いてください」


 カオリが、ちょっとだけ声を高くして言う。


 「そういう秘密の研究なら、そんな、とんちんかんなやり方ではしないと思います。それなら御伽話とか、森の魔女とか考えた方が、まだ現実的です」


 「そう? ちょっとしたことが、大事件解明のきっかけになるなんて、よくあるのよ。不思議なことが起きた。その背後に何があるのか。現実的に起こりうる可能性を、1つ1つ考え、検討していく。真実は、その先にある。たとえそれがどのようなものであっても、真実を追わなくちゃいけないわ。小さなことを見過ごさない。これが基本よ」


 レイラはきっぱりと言った。刑事たるもの、犯罪の匂いがすることは、どうしてもスッキリと解明したいのだ。


 これが下着モデルとしてふさわしい発言なのかは、考えてなかったが。


 「わかりました。私も真実が知りたいです。森の魔女の秘密がわかったら、面白いですし」


 カオリは素直に言って、携帯端末(パッド)を取り出し何かを調べている。


 「ここで考えていてもこれ以上、何も出てこないようですね。レイラさん、明日は仕事入ってなかったですよね。2人で調べに行ってみましょう」


 「調べに? どこへ?」


 「意識を失ったリョウタさんが運ばれた小屋です。そこへ行けば、きっと何かわかります」


 「うーんと、さっきも言ったけど、それがどこか、わからないんだよ」


 「リョウタさんが意識を失った位置座標は、わかりますよね」


 「うん。星立自然公園の中だよ」


 「連れていかれたのは、自然公園に隣接する私有地エリア。ここも広大な森で、所々に人が住んでいます」


 カオリは携帯端末(パッド)を見ている。


 「この私有地エリアの森は、現在、600以上の所有者区分に分かれています。部外者が入ると警報器(サイレン)が鳴って、番犬ロボット番人ロボットが出動して追い払います。リョウタさんを連れて行った美女の人というのは、私有地の通行許可証(パスポート)を持つ、内部の人だった。そういうことになります」


 「それは間違いないね。だけど、広い私有地エリアに大勢の所有者がいる。どこの誰が、どうやって調べるの?」


 「足跡です」


 カオリの言葉に、レイラは、えっ、となる。


 「足跡?」


 「そうです。足跡を辿っていけば、小屋にたどり着くことができます」


 「ちょっと待って。リョウタは、エアバイクに乗ってたんだよ。足跡なんて残らないよ」


 エアバイクと言うのは、低空で飛ぶ乗り物である。


 カオリは、首を振った。


 「リョウタさんは、私有地エリアで、大勢の番犬ロボット番人ロボットに追われたと言っていました。番犬ロボット番人ロボットには、足があります。たくさんのロボットの足跡、まだ、残っているはずです」


 「あ」


 レイラも、ようやくわかった。


 なるほど。とりあえず、リョウタが逃げ出した小屋までは、行けそうだ。


 よし。


 「行ってみようか、カオリ」 


 「はい、よろこんで」


 先に待っているものは何か。


 犯罪組織か、国家の陰謀か、それとも森の魔女か。


 赤い髪と赤いドレスの美女。


 この世のものとは思えない美しさだった、と、リョウタは語っていた。



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