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下着モデル潜入捜査官レイラの事件簿  作者: 茜見零
事件簿No.9 リョウタの災難
104/181

第104話 美女の謎



 「どう思う? リョウタの話」


 下着モデルの仕事を終えて。


 寮に戻ったレイラ、隣の部屋のカオリのところに来ていた。


 警察案件じゃない謎。こういうのは、カオリの数列家の能力が役に立つような気がしたのだ。


 カオリ、数列家のダウナー系下着モデル。いつもの夢見心地な瞳で、言う。


 「御伽話の世界ですね」


 御伽話。


 そうだ。美しい森で、突然、美女が現れた。接吻(キス)された。意識を失った。気がついた時にはベッドで寝ていた。美女は、消えていた。


 「リョウタさんが目を覚ました時にいた小屋は、どこにあるかわからないんですね?」


 「うん。位置座標確認登録しなかったんだって。慌ててて。それですぐ追われて逃げだしたから、どこかわからないって。ただ、かなり森の奥の方だってことしか、わからない」


 「そうですか。本当に夢想(ファンタジー)ですね。儚く消えた美女。最後にちょっと変な通信(メッセージ)が来ましたが、美しい御伽話ということで、いいんじゃないですか? あ、通信(メッセージ)を書いたのは、きっと森の魔女です。美女の正体は、森の魔女。だから、正しい通信(メッセージ)の書き方を、知らなかったんだと思います」


 「森の魔女? あなたがそういうこと言うんだ」


 カオリなら、納得のいく説明を考えつくだろうと思ったのだが、そうでもなさそうだ。レイラは、言う。


 「いろいろ引っかかるのよね。例えばリョウタは、接吻(キス)されて急に意識を失った。どうしてだろう」


 カオリは、キョトンとして、


 「おかしいですか?」

 

 「うん。御伽話とか夢想(ファンタジー)じゃなくて、現実の世界の話だよ。そんなに都合よく、いきなり意識が飛ぶと思う?」


 「うーん、そうですね。私は数列を極めようと考えていると、時々意識が、ぼーっとしちゃう事はありますが」 


 「……それは、特別! 普通だったら、やっぱり変だよ」


 「じゃあ、これはリョウタさんの作り話ということですか?」


 「それもどうかな。作り話なら、もっとましな話を考えるでしょ。いかにもありえない話をするなんて、おかしい。リョウタが嘘をついてるようには見えないんだよね」


 「リョウタさんの話が、全部本当だった。すると、どうなります?」

 

 「美女は、人間の意識を一瞬で飛ばす方法、それを使った」


 レイラはきっぱりと、言う。


 宇宙警察のエリート刑事なのだ。犯罪の匂いには、その鋭い嗅覚が反応するのである。


 「リョウタに近づいて、意識を飛ばして、どうにかしたかった。そういうことになるんだよね」


 一瞬で、人の意識を飛ばす方法。レイラは職業柄、いろいろ知っていた。


 昏睡剤を飲ませる。


 これが1番ポピュラーなやり方だ。しかし、今回の場合は当てはまらない。リョウタは、美女と唇が触れたとたんに意識が飛んだという。何かを飲ませる隙は無い。もちろん、こっそり皮下注射をしたとか、そういうこともありえない。


 「そこで、麻酔スプレーとか」


 レイラは、刑事の思考回路で、可能性を一つずつ検討していく。


 「あるんですか、そういう便利なスプレーが」


 犯罪捜査には、うといカオリ。


 「うん。でも一瞬で完全に意識を飛ばすとすると、対象の間近で、かなり濃く噴霧しなきゃだめ。そこで問題になるのは」


  美女とリョウタは、顔をくっつけていたのだ。美女がこっそり強力な麻酔スプレーを噴霧したら、当然ながら自分も一緒に倒れてしまう。


 「いろいろ考えても、わからないのよね。まだ知られていない人の意識を飛ばす方法。それがあるなら、これは問題よ」


 刑事の観点である。


 「あの、もしかして」


 と、カオリ。


 「その美女の人が、人の意識を飛ばす研究をしていて、リョウタさんを使って実験をした、そういうことだと言うのですか?」


 「うん……ひょっとしたら、もっと大掛かりな、犯罪組織とか、政府の研究機関の秘密の実験だった、そういうことかも」


 「ええっ!」


 カオリは驚く。


 少し飛躍しすぎじゃないかな、と思うが、レイラは真剣である。

 

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