第102話 カメラマンのスキャンダル
「なんだろうね、これ」
レイラは、問題の画像を見ている。
ベッドにリョウタが寝ている。裸だ。上半身しか写っていない。目を閉じている。眠っているように見える。
そして。
リョウタを上から覗き込むようにしている、赤いドレスの女性。顔は見えない。背中を向けている。長く赤い髪。白い頸。女性は、ベッドに寝ているわけではない。ベッドに寝ているリョウタを見つめている。そんな構図だ。
「これだけじゃ、別に何も、スキャンダルってわけじゃないね」
しかし、添えてあった一文。
「令嬢の身体を奪ったこと、再び近寄るなら、厳しく詮議する所存。もう当家とは、決して関わらぬように」
なんだ、これは。
そのまま素直に解釈すると、警告である。リョウタがどこかの令嬢と関係を持った。この赤い髪と赤いドレスの女性だろうか。そして、もう近寄るな、関わるな、そういうことである。
「少なくとも、これなら事件性は全くないんだな」
令嬢の身体を奪った。これは犯罪を匂わせているが、画像はどう見ても犯罪をしている状況ではない。ベッドで眠っているリョウタ。それを見つめる赤いドレスの令嬢。それだけだ。
なぜ、この通信を送りつけてきたのか?
1番簡単な理解は、ゆすりだ。ファッション業界の有名人を狙ったスキャンダルを利用しての、ゆすり。本当に犯罪被害があり、それを告発したいというなら、こんな妙な形で通信を送ってきたりはしないだろう。
この通信じゃ、なんのことかよくわからない。
これはまず最初に、こちらの動揺を誘い情報を小出しにしながら、何か要求してくる、そういうことだろうか。これから、第2、第3の要求がある。ゆすりの線だとすると、そうなる。
この通信だけでは、もちろんゆすりだと断定できない。犯罪にもならない。意味がいまいち分かりにくい警告。ただ、それだけだ。
「まずは事件性、無しか」
宇宙警察のエリート刑事であるレイラは、判断する。
これで終わりなのか? これが始まりなのか?
同僚モデルのネクリは、
「もう、リョウタ、女の子にすぐメロメロになって手を出すんだから。ほんとに病気ね。ちゃんと病気直さなきゃ、絶対ダメだよ」
と、無邪気に言っている。
そうなのか。
レイラは考える。
何か引っかかるのだ。そして。これは警察を乗り出す案件ではない、そう感じる。まだ直感にしか過ぎないけど。
◇
リョウタの説明によると。
休日に、リョウタは、森林の自然公園へ行った。
リョウタは下着モデルの撮影が仕事だが、いい画を撮るためには、常に世界の美しいものに触れてなければならない、人間だけでなく、この世のありとあらゆる美に触れなければならない、かねがね、そう考えていた。カメラマンの仕事には、本当にストイックで情熱的なのである。
美しいものに触れるため、休日になると、愛用のカメラを抱えて、あちこちに出かけていっては画を撮っているのである。
大自然の美しい風景を撮るために行った自然公園で。
リョウタは、出会った。
赤い髪、赤いドレスの令嬢。
それは、これまで見た中で、1番美しい女性であったという。




