第101話 爆弾画像
女性下着の世界で宇宙にその名を知られたドン・ハルキサワ事務所は、朝から騒然となっていた。
「ねえ、見た?」
「うん。びっくりした。なんだろう?」
「リョウタ、さすがにまずいんじゃないの?」
「まだ、決まったわけじゃないよ」
「でも、リョウタ、前から女の子にだらしないしワキが甘いから、いつかやらかすんじゃないかと思ってたのよね」
モデルたちは口々に。あちこちでリョウタの話題でもちきりだ。
ドン・ハルキサワ事務所の通信リストに、とんでもない投稿があったのだ。
ベッドインしている、リョウタと、女性の画像。
そして、
「令嬢の身体を奪ったこと、再び近寄るなら、厳しく詮議する所存。もう当家とは、決して関わらぬように」
との一文が添えてあった。
◇
「僕は何もしていません! 本当です。信じてください」
リョウタは青くなっていた。
リョウタはドン・ハルキサワ事務所専属のカメラマンである。下着モデル撮影については、第一人者であった。ドンの信頼厚い、芸術家気質の職人。撮影の腕前については、誰もが認めていたが、
「あなたねえ、とうとうやってくれたのね」
リョウタを呼び出した事務所のNo.2で副社長のルイーザは、詰め寄る。事務所の経営面は、実質的にルイーザが切り盛りしていた。トラブルの対処も、ルイーザの仕事。
「ルイーザさん!」
リョウタは、叫ぶ。
「信じてください! 絶対、何もなかったんです! 今回については」
「今回については?」
ルイーザ、不審のまなざし。
リョウタ。凄腕カメラマンだが、前から女の子にだらしないところがあったのだ。とにかく、すぐ声をかける。あまり後先のことを考えずに行動する。別に女の子と付き合う事はいいけど、業界人として、ハメを外しすぎると、問題になる。
「いや、その、いつも、僕は問題は起こしていません!」
「うーん、そうだけどね」
ルイーザ、眉を寄せる。
「わかってると思うけど、ファッション業界ってイメージ商売なのよ。イメージが命。うちは女性下着の仕事だからね。女性に嫌われるイメージがついたら、それでおしまいなの。そこんとこ、いつも頭に入れておいてくれないと。しつこく言ってるでしょ」
「え、ええ、だから、これは本当に」
「ふーん」
ルイーザは、問題の画像に目を落とす。
「確かに、これだけじゃ何とも言えないわね。まだ、どうこうって話じゃない。でも、わざわざこういう画像を送ってくるってことは、何か考えてるってことだよね。これで終わりになるのかな。それならいいけど。あなたのことを心配してるのよ。ドンはあなたのことをすごく買ってるんだから。だから、自重してっていつも言ってるの。ちゃんと期待に応えてね」
「あ、はい、僕は本当に潔白でーー」
「うん。わかったから。とりあえず、今はね」
と、ルイーザ。
まだ大事になる状況でもない。ひとまず、様子を見よう。
「じゃ、仕事に入って。モデルたちには、動揺しないように言って、私から言っておくから」
仕事モードのルイーザ、テキパキと動く。




