三途の川で 何釣るの?
スピンキャストリールと言うリールがある クローズドフェイスリールとも言われるリールで アメリカのゼブコ社が製作したリールだ。
ベイトリールのスタイルで スピニングリールの機能を合わせたリールで 世界一操作の優しい釣り用リールと言われる。むかしは 日本でも大小のメーカーが作っていたが 今はほとんど無くなった。釣具屋なのに 置いていない所がある。買うには 通販か 中古やに通うしか無い。
そんなリールの1つを 高校2年の 知縄紡は手に入れた。この夏h81才で亡くなった 母方の祖父 竜三の遺品で 知縄紡がもらう事にした。
知縄紡は 小さなころ よく祖父に釣りに連れてってもらった。正確には連れて行かれたと 言うべきだが 嫌ではなかった。釣りよりも ついて行けば買ってもらえる オヤツが楽しかった。
最初は延べ竿で ハゼなどをとっていたが そのうちに 祖父が投げたリール竿に 掛かった魚を巻き獲らせてもらった。延べ竿のハゼとは 比べものにならない 強い引きがあった。釣り上げた時の喜びは ハゼよりも 大きかった。
そのうちに 知縄紡自身 ルアーフィッシングに 興味をおぼえ 祖父に相談すると このZ03モデルを使って教えてくれた。子どもが使うには 少し重いリールだが 操作の簡単さでは 1番である。残念ながらこのリールでは釣れなかったが 自分1人で釣りをした 思い出のリールである。
祖父の釣り道具はたくさんあるが おじさんたちや いとこ連中も多く 知縄紡はこのリール1つで満足した
釣竿は 以前祖父に買ってもらった ベイトのパックロッドがある。ルアーも バイトして買ったものを 持っている。
知縄紡(あえて これでハゼ釣りしようかな)
などと考えると 祖父があの世で笑っている気がした。
休日がきた 祖父の形見のリールを
持って 電車を使ってハゼ釣りに向かう。パックロッドに 小型のクーラーBOX 簡単な道具なので 大きめのリュック1つに収まる。電車やバスを使った釣行には 最高である。
向かったのは 祖父がよく連れてってくれた 河口近くのハゼ釣りポイントである。公衆トイレとコンビニがちかくにあり 駅からは少し歩くが足場も安全で 家族連れにも人気の釣場である。
着いた早々 知縄紡は釣りの準備を始めた。2号ナス型オモリの胴突き仕掛け ハリは1本でハリスは10cmほど エサはアオイソメをつけた。
最近は ハゼ釣りのエサにホタテを使う者が多いが 延べ竿には良いが 投釣りにはエサが取れやすく向いていない。
知縄紡は一投目を下から振り込んだ 仕掛けは岸から10mほど先に着水 底まで沈めて 少しリールを巻いて糸を張る。5秒まって少しだけ 仕掛けを手前に引き寄せて また5秒まつ これを繰り返してポイントを探る。
正面以外に 扇形に振り込んで 同じように探っていくと ブルブルッとハゼ独特のアタリが有り 15cmほどのハゼが釣れてきた。
知縄紡「釣れたよ おじいちゃん」
知縄紡はニンマリと笑い ハゼをビクにいれた。
普通釣った魚をビクやバケツに入れる時 タップリの水に入れるが ハゼの時は 水は少なめで ハゼの背中が出るくらいの方が良い その方が ハゼは呼吸が出来て 長生きする。もちろん 川や海につけておくか ブクブクで酸素吸入してやる時は 関係ない
知縄紡がつかっているのは 水を入れる部分が ズック生地でできた 昔はやった 折りたたみ式のもので ハゼ釣りにはこれを使うと決めている。昔は釣りには 必ずこれを持って行ったが ルアーをやるようになり 使う事は減った。とりわけ夏場の釣は クーラーBOXは必要なアイテムになった。
ルアーの釣りで キャッチ&リリースの時もかかせない。飲み物を冷やしたり 弁当を冷やしておくにも 必要である。
そんなわけで 釣の仕方も随分と違ってきた。以前は釣れる魚が多いので夜釣りをしたが 今は熱中症対策で夜釣りをする。
しかし さすがに11月ともなれば 暑さもおさまり 昼間も安心して釣が出来る。今回は祖父をしのんで エサで釣る。最近はハゼクラと言って こがたのクランクベイトと言うルアーでハゼを釣るのがブームになっている。アユもアユルアーなるもので 釣っている。アユは縄張りを持つ魚で 侵略者は体当たりで立ち向かう。その性格を利用したのが 友釣りである。アユルアーも 原理は同じで ルアーを敵と思って体当たりすると ハリに掛かってしまう。偽物のアユに騙されて 釣られるアユは どれ程無念だろう。それ以上に エサと思って食ったのが偽物だった魚は どれ程の恨みを残しているのやら・・・
そこにいくと エサ釣りはまだ罪悪感が少ない。少なくとも最後の食事はちゃんと食わせるのだから。
知縄紡は順調に釣り上げる。釣れてくるハゼも15cmを超える良型が多く 引き味も良い。釣りながら フと思った。
知縄紡(おじいちゃん ちゃんと あの世に行ったかな? 三途の川の渡し舟に乗らないで 川岸で釣りしてないだろうね〜)
祖父の棺桶には 愛用の和竿が 入れられて 一緒に焼かれた。墓にも小さな竿とリールなど 釣具屋が納められている。家族が遺言に従った結果だが どう見てもあの世で釣る気満々な死に方である。
知縄紡「・・・三途の川って 何が釣れるんだろう?」
思うに三途の川の魚たちは 死んでまで人に釣られたくは無いだろう・・
むしろひとに復讐する事を考えるのではないか?又は魚の天国に行けない魚たちの 人で言えば地獄が三途の川なのではないか?と 私なんかは思うのだか 知縄紡は違う。
知縄紡「おじいちゃんなら 何釣るかな〜? 釣れれば何でもイイ人だから・・・」
そこまでつぶやいて 知縄紡は思う
知縄紡(三途の川は人によって 渡る場所も方法も違うって言うよね! おじいちゃんは どこを渡るんだろう?)
三途の川を 渡し船で渡るのは 一般の人達で 生前の行いがとても良い人ほと上流を渡れて 最上級者は 橋を渡り 次は 浅瀬を歩いて渡る 行いにより下流になり 腰ぐらいまでは 歩けるらしい その後は舟で渡り 悪人は それより下流を 泳いで渡らせられると言う。知縄紡はそこが気になった。決して祖父が善人扱いが 悪人扱いかを気にしている訳では無い。
知縄紡「おじいちゃんが とこを渡らせられるかで 釣りもの 変わるよね 上流ならイワナやヤマメの渓流魚 チョイ下流なら 本流釣りやアユ釣り 空に下流なら コイやフナなど5目釣り 最下流なら 普通は汽水域になり海と川の魚を 両方狙えるけど・・・三途の川の河口って海につながってるのかのかな?」
あくまでも釣の悩みである。それも 自分が釣ることを考えている。
ハゼは良型が20匹以上釣れて 帰り支度を始めたが 三途の川の釣りが 頭を離れない。
知縄紡「おじいちゃん 夢に出てきて教えて。良さそうなポイントに合わせてイイ子になるから」
と 川に向かって手を合わせた。




