やりやがったぜ
ダンジョンの入り口がある坑道奥の広間。
そこに設営されているキャンプで兵士たちは寛いでいた。
「あの3人がダンジョンに入ってから魔物がぜんぜん湧いてこないな。順調に進んでるってことかね?」
「どうやってあのネズミの群れを突破するんだよ…。方法が知りてぇよ…」
寛ぎつつダンジョンに入って行った3人の話をする兵士たち。彼らが入ってから結構時間が経つが、一向に戻って来ない。
魔物がダンジョンから出てこないところをみると死んではいないようだが、それなら自分たちが全く進めなかったダンジョンを、彼らは順調に探索し続けているということになる。その方法がとても気になる。
「戻ってきたら聞いてみようぜ。それがわかればコアの破壊が現実味を帯びるってもんよ」
「だな。無事に戻ってきてくれよ…」
3人の無事を祈る兵士。情報を持ち帰ってほしいのもあるが、単純に彼らが心配でもあるのだ。
そんな感じで寛いでいると、ダンジョン入り口の警備をしていた兵士が声を上げる。
「皆!!! 集まってくれ!!! 異常発生だ!!!」
「!!!」
その言葉にキャンプにいた兵士が全員ダンジョンの入り口に集まった。
「どうした!? 何があった!?」
1人が聞くが、聞くまでも無く異常が見えていた。
ダンジョンの入り口周辺の空間が歪み始めているのだ。そして小さな魔石が次々に吐き出されている。
「これは…、もしかしてダンジョンコアが破壊されたのか!!!」
「たぶんそうだ。あの3人やりやがったぜ」
兵士たちの間に歓声が上がる。自分たちが全く歯が立たなかったダンジョンを、自分たちよりかなり若い3人組がわずか数時間で攻略してしまったのだ。まるで物語の主人公のような活躍だった。
「よし! 回復魔法使えるやつ、集まってくれ。それと食料とか水とか、いろいろ用意しといてやろう。疲れてるだろうから十分に労ってやろうぜ!」
「おう! おれ食いもん持ってくる!」
「おれは回復魔法使えるからここで待機しとくよ」
すぐにダンジョンから吐き出されてくるであろう3人のために慌ただしく動き出す兵士たち。
そして吐き出される魔石が目に見えて大きくなってきた。
「……これ小動物サイズの魔物の魔石じゃないよな。結構デカいぞ…。それをこの数倒してるのかよ…」
どんどん出てくる大きい魔石。そして最後にかぼちゃサイズの魔石がドンッと吐き出された。
「なんだよこのサイズ!? あいつら何倒したんだ!???」
困惑が広がる兵士たちを余所に、ついに3人が吐き出される。
1人は黒い剣を持ち立っていて、1人は両手を地面につき激しく呼吸し、1人は倒れていた。
一瞬の暗転の後、カルドラの視界に映ったのは広間のキャンプ地だった。
驚きの表情を浮かべる兵士たちが周りに集まっていた。無事に戻って来れたようだ。
しかしそんなことよりも確認しなければならないことがある。
「アイーシャ! サニア!」
周囲を見渡すとすぐ隣にアイーシャが座り込んでいた。その隣にサニアが倒れている。
すぐにアイーシャに状況を確認する。
「アイーシャ! 大丈夫か!? サニアはどうしたんだ!?」
アイーシャは息を切らしながら途切れ途切れ答える。
「…サニアさん…、……魔力欠乏…、……魔力をあげて…、……はやく…、……」
「……っ! わかった…!」
アイーシャの言葉にサニアが非常に危険な状態であることがわかった。すぐにサニアを抱き起す。
「サニア! 大丈夫か!?」
「………………、………………、………………」
かなり弱弱しいが呼吸をしている。なんとか生きているようだ。すぐに魔力を送り始める。
すると周りの兵士たちも心配して声を掛けてきた。
「大丈夫か!? なにかできることはあるか!?」
「あ…、えーと…。アイーシャ? アイーシャは魔力大丈夫か?」
兵士の言葉に、自分よりアイーシャの方が心配になり声を掛けるが…。
ぱたんっ
「おいおい嬢ちゃん! 大丈夫か!?」
「アイーシャ!?」
ついにアイーシャも倒れてしまった。
「おい兄ちゃん! 2人はどういう状態だ!?」
「おそらく2人とも魔力欠乏です! 魔力を2人に!」
「わかった! 兄ちゃん変われ! あとはおれたちに任せろ!」
「あ…、はい、わかりました。よろしくお願いします…」
兵士たちはテキパキと倒れた2人を介抱し始める。
サニアもさっきより顔色が良くなっている。アイーシャも安心したような表情を浮かべて寝ているので大丈夫そうだ。
ほっと胸を撫で下ろし、介抱される2人を眺めていたカルドラ。しかし急に身体の力が抜け、ふらふらとよろめき始める。
「…ん? おい兄ちゃん。大丈夫か――」
ばたんっ
ついにカルドラも力尽きた。
「おい!!! 兄ちゃんしっかりしろ!!!」
こうして3人は無事全員生還することができた。そして目が覚めるまでキャンプでお世話になるのだった。




