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双棍のトラベラー  作者: コルミ
ダンジョンアタック
97/108

自慢の防壁

「ガアアアアア!!!」

ブォン ギィィン ドガンッ

「はあああ!」

ビュッ ガキンッ


 カルドラとドラゴンは超至近距離で攻防を繰り広げていた。

 ドラゴンの体格で突進と連続攻撃を組み合わされると捌き切れないと判断したためだ。

 ドラゴンの猫パンチ風の攻撃を、頑丈さが自慢のタングスライト合金製の剣で受け流し、攻撃の切れ目に斬撃を叩きこむ。

 しかしドラゴンの甲殻と鱗はとても硬く、なかなか有効なダメージは通らない。

 最初に前足を切ることができたのは、上手く指の間に斬撃が滑り込んだからだ。少しでも逸れていたら弾き返されていただろう。


(ここまで硬いとは…。関節の内側を狙うしかないな。でも、この攻防の中じゃそれも難しい…)


 ただでさえ動きの速いドラゴンの懐に無理やり居座っているのだ。そこでの攻防の最中に狙った箇所へ攻撃が入ることはほぼない。

 じっくり狙ったらこちらの動きが鈍り、その瞬間猫パンチ風の攻撃、さしずめドラゴンパンチが叩きこまれ即死するだろう。


(この巨体でこの速さ、そしてこの硬さ。身体強化を使ってるな…。まったく…、厄介極まりない…)


 人族(ヒューマ)土人族(ドワーフ)、そして魔族(ディーマ)のような人類以外が身体強化を使うのを初めて目の当たりにするカルドラ。

 身体強化とは人類が大きな他種族に対抗するために生み出された魔法だと聞いたことがあった。しかし目の前に身体強化を使う大きな他種族がいる。身体強化が人類の専売特許ではないことを思い知らされる。

 しかし、双方が身体強化を使うことで見た目通りの身体能力差での戦闘を余儀なくされているカルドラだが、なんとか攻撃の差し合いに持ち込めているのは、彼が"感覚加速"という特殊技能(スキル)を有しているからだ。

 自身の感覚を加速し、世界をゆっくり知覚できるカルドラだからこそ、高速のドラゴンの攻撃を的確に捌くことができている。


(だが…、"ここ"に入ったのは失敗だったかもしれん。ジリ貧だし、抜け出すことも難しくなった…)


 ドラゴンの突進からの連続攻撃を嫌って自ら飛び込んだドラゴンの懐。確かに体格差によるごり押しを防ぐことはできている。しかし現状、カルドラにはドラゴンにダメージを与える手段がない。しかも距離を取ろうと少しでも後退すればドラゴンはすぐさま距離を詰め追撃を叩きこんでくる。

 最初に入ってはいけないと考えていた袋小路に自ら飛び込んだ形になっていた。


「ガアアアア!!!」

ドガンッ!

「…くっ!」


 ドラゴンの攻撃が地面を穿つ。

 ここまでこのドラゴンと攻防を繰り広げてきたが、カルドラは1つ確信していることがあった。

 このドラゴンはこの攻防を心の底から楽しんでいるのだ。

 手を抜いているのかどうかはわからないが、ドラゴンの表情が喜びに満ちているのはわかる。

 鉱山の窪地で話したドラゴンは思念で大笑いしていても表情はほんの少し笑う程度、感情と表情に大きな差があった。つまり目の前のドラゴンの表情から感情が読み取れるということは、その奥の感情はその表情の感情で満ち溢れているということだ。


(楽しんでくれるのは光栄だがな…、こちとらいっぱいいっぱいなんだよ…!)


 心の中で悪態をつきながらなんとか突破口を探すカルドラ。しかしどんな手段を考えても最終的に叩き潰される未来しか見えない。完全に詰んでいた。

 今カルドラにできるのは少しでも生きながらえるためにこの攻防を続けることだけだった。

 しかし延々と続くかと思われたその攻防は突然終わりを告げる。


ドガアアアァァ!


 ドラゴンの背後の"横穴"から突然竜巻が噴き出したかと思うと、それに押し出されるように大きな猫の魔物がドラゴン目掛けて吹き飛んできたのだ。


「!!! ギャアアアス!」


 突然の横やりに驚いたドラゴンは体を回転させ、尻尾でその猫の魔物を殴り飛ばし衝突を回避する。

 そしてカルドラがその隙に全力で後退し、ドラゴンと距離を取ることに成功した。

 離れたカルドラに気づいたドラゴンは恨めしそうに殴り飛ばした猫の魔物を睨みつける。そして猫の魔物は黒い(きり)となり消滅した。


「カルさん!!! 良かった、まだ無事ですね!!!」


 アイーシャの声が聞こえたかと思うと、猫の魔物が飛び出した横穴からアイーシャとサニアが走ってきた。


「アイーシャ! サニア!」


 2人の無事な姿を見て安心するカルドラだったが、すぐに警戒を促す。ドラゴンが怒りに満ちた表情で2人を睨みつけていたからだ。


「2人とも気をつけろ! そいつは見た目以上に速い!!!」


 カルドラが叫ぶと同時にドラゴンが2人目掛け凄まじいスピードで突進し始めていた。大きな翼を盾のように自身の前に広げている。まとめて轢き殺すつもりのようだ。


「プロテクション!!!」


 アイーシャがすぐに防壁を展開。

 ドラゴンがそれにぶつかる。


ドオオオン!

「ギャア!???」


 ドラゴンがプロテクションに弾き返され地面に転がった。

 すぐに立ち上がり驚愕の表情で防壁を見る。


「ふふん! オーガの棍棒フルスイングに比べたら全然余裕です!」


 アイーシャがふんすっと胸を張る。そして彼女の横にいるサニアが驚愕の表情を浮かべている。


(確かに攻撃力ならオーガの方が上だろうが…。それでも、それはどうなんだアイーシャよ…)


 カルドラもアイーシャの防壁のすごさを改めて実感し、若干引いてしまった。

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