ダンジョンコア
それから3人は順調に2階層目の探索を進めていく。
2階層目は1階層目より少し小さく、円周3キロほどの空間だった。それでもかなり広大だが…。
そして1階層目と同じようにアイスウォールを頼りに2週目を回り、その途中で地面に穴が開いているのを発見。次の階層への道だと思い近寄ったのだが…。
「…ただの穴ですかね?」
「足場が無いので…、そうかもしれません」
「やれやれ。まぁ落とし穴じゃなかっただけマシか」
その地面に開いた穴には足場が無かった。
下の方に地面が見えるので次の階層に行けるには行けるが、行ったら戻って来れないだろう。
「他を探そう。……アイーシャ? 行くぞ?」
「………」
カルドラとサニアが別の道を探そうと歩き出すも、アイーシャはまだ真剣な顔でその穴を覗き込んでいる。
不思議に思っていると、突然アイーシャが驚いた顔になり声を上げる。
「カルさん! サニアさん! あれ! あれ見てください! ダンジョンコアです!!!」
「なにぃ!???」
すぐに戻ってアイーシャが指さす方を確認する。すると奥に見える壁に埋まるように大きな魔石が輝いているのが見えた。
それは青緑の美しい色だが、周りに黒い靄が炎のように揺らめいている。そして壁には翡翠色や金色に輝く線が無数に走っており、それらが大きな魔石に集中しているように見える。
「……なるほど。"龍脈の魔力"があのコアに流れてるんですね。だから魔物がどんどん生まれて外に溢れ出したと…」
サニアが何か納得したような顔をしている。
「龍脈…。星の魔力…だっけか…」
「はい。おそらく本流ではないですが、細い流れの一端があそこを通っているのでしょう。それをあのコアが堰き止めて淀んだ魔力に変換しています」
「………ドラゴンが言ってた『魔力が停滞』ってそういう意味か」
ドラゴンは魔族がダンジョンを作ったと言っていた。もし龍脈の流れを止めるためにこのダンジョンを作ったのなら本当に迷惑なやつらだ。
「サニアさん。ここから魔法でアレを狙い撃ちできたりしません?」
アイーシャがだいぶ横着した提案をしているが、確かにここから破壊できるなら手っ取り早い。
「………コアがかなり濃い魔力で覆われています。魔力による攻撃は減衰してしまうかも…。……そうか、物理寄りの魔法なら…、でもこの距離だと…」
サニアがぶつぶつ言いながらいろいろ考え始めてしまった。
とりあえず彼女の考えがまとまるまで大人しく待つことにした。
「……ごめんなさい、ちょっと難しいかもしれません。魔法攻撃で石を破壊するのは熱で溶かしたり凍らせて圧力で割ったりという方法になるのですが、対象があのサイズかつ濃い魔力で護られているのでどちらも時間が掛かり過ぎます。一応物理攻撃みたいな扱いでウォーター・レイで木を切ったりできるのですが、石相手には試したことがありませんので…」
「ウォーター・レイで…木を切る…?」
ポロっと出た言葉に血の気が引くカルドラ。
以前カルドラはクオーツサラマンダーが使うウォーター・レイの直撃を受け空中へふっ飛ばされたことがある。サニアが同じ魔法を使うと木を切れる威力になるらしい。
木を切れるなら人体など簡単に切断できるだろう。あのクオーツサラマンダーがウォーター・レイを極めていなくて本当に良かった。
「う~ん…。ここからが無理なら近づいてカルさんに叩き割ってもらうしかないですね。素直に別の道を探しましょうか」
青い顔をしているカルドラを置いてアイーシャが立ち上がる。
「そうですね。探索を再開しましょう」
サニアも立ち上がり進行方向へ視線を向ける。すると遠くに魔物が集まり始めているのに気づいた。
「…まずはお掃除からですね。穴に落ちないように気を付けてください」
「了解」「わかりました!」
すぐにアイーシャがプロテクションを展開し、迫る魔物を待ち構える。
ここまでかなりの回数戦闘をこなしてきた。このダンジョンでの戦い方はすでに最適解で安定している。
この後サニアがサイクロンで小動物サイズの魔物を一掃するまでカルドラは待機することになる。なので遠くに見える大きめの魔物の種類を把握しておこうと神経を集中させて眺めてみる。
すると下から、バサッ…と羽音のようなものが聞こえた。音の正体を確かめようと足元の穴を見たカルドラはぞっとして叫ぶ。
「2人とも!!! 穴から離れろ!!!」
「「え?」」
アイーシャとサニアが振り返ると、剣を抜いたカルドラが穴に向かって剣を振り下ろしていた。
次の瞬間、穴からドガンっ!と巨大な"手"が伸び、その手をカルドラの剣がズバンッ!と叩き切った。
「「きゃあああ!」」
「ギャアアアアアアス!!!」
アイーシャとサニアが驚き悲鳴を上げ尻餅をつき、穴からは大きな声が響くと同時に手が引っ込む。
そしてカルドラが叫ぶ。
「2人で"ここ"を頼む! おれは下で戦ってくる!」
そう言うとカルドラは穴に飛び込んでしまった。
「カルさん!???」
すぐにアイーシャが穴を覗き込む。
すると落ちていくカルドラを追って、黒い靄を纏った"ドラゴン"が降りていくのが見えた。
「ド、ドラゴン!?」
アイーシャの言葉を聞き、すぐにサニアも穴を覗く。
彼女もドラゴンを確認したのか険しい表情を浮かべる。
ドンッ がしがしがし バンッ
「「「キーキー」」」「「「ガルルルル」」」
そして展開された防壁に魔物が押し寄せてきた。そちらもどうにかしなければならない。
アイーシャとサニアは顔を見合わせ、自分たちのやるべきことを確認し合う。
「すぐに片付けて援護にいきましょう! いくらカルさんでもドラゴンの相手は無謀です!」
「はい!」
そしてサニアは防壁に群がる魔物の群れにサイクロンを放った。




