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双棍のトラベラー  作者: コルミ
ダンジョンアタック
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人の魔物

「…。まさか魔物を倒すことにこれほど罪悪感を覚えるとは…。せめてこいつらの魔石は回収しておく…」


 苦々しい表情を浮かべながら魔石を拾うカルドラ。その姿にサニアとアイーシャも苦笑いだ。

 すぐに5つの魔石を拾い終え、カルドラが戻ってくる。


「この階層では大きめの魔物もたくさん出てきそうですね。用心しましょう」


 サニアの言葉に頷く2人。

 そして3人は前の階層と同じようにアイスウォールでマーキングしながら壁沿いを歩き始める。

 しばらく歩くと大きな猫の魔物を含めた群れが現れ、それを先ほどと同じ要領で対処。

 そしてまたしばらく歩くと再び魔物の群れが現れる。

 しかし今度そこに混ざっていた大きい魔物はあまり相手にしたくないタイプの魔物だった。

 プロテクションからサイクロンの流れで小動物サイズの魔物を一掃した後に残され、防壁に攻撃を加えるのは"人"の魔物だった。


「…くっ。存在は知ってたけど、実際見ると気分のいいもんじゃないな…」


 魔物は淀んだ魔力から生まれる。その姿は世界に存在する生き物に準じている。当然"人"もその対象に入っている。


「うおあああああ!」

がんっ がんっ がんっ


 その人の魔物は攻撃的な表情で理性が飛んだ目をし、石で防壁を叩いている。魔物は黒い(もや)を纏っているのでそれで普通の生き物と見分けがつくが、この"人の魔物"はそんなものが無くても表情ですぐにわかりそうだった。


「…。カルさん、そちらの3"匹"をお願いします。私はこちらの3"匹"をやります」

「…わかった。まかせろ」


 サニアはあえて"匹"と数え、目も前のものが人ではないと自分に言い聞かせる。

 カルドラも剣を抜き、5層を開放して身体強化を発動。一気に仕留めにかかる。

 人の魔物は最低限の衣服と木の棍棒や石などしか装備していないため、はっきり言って他の同サイズの魔物から比べると雑魚と言わざるを得ない。たまに鎧や剣を装備した強い人の魔物も出るそうだが、それでも本物の人には遠く及ばない。

 人の強さとは経験と技術と心なのだ。


「はぁ!!!」

ズバァ!

「「「ぎゃあああああ!!!」」」


 カルドラは漆黒のロングソードを横に薙ぎ払い3匹まとめて仕留める。


「マルチソーサリー、『『『レーザ!』』』」

ビビビュ!

「「「ぐがっ!」」」」


 サニアはマルチソーサリーで3つに増幅したレーザで3匹の心臓をまとめて打ち抜いた。

 6匹の人の魔物は黒い(きり)となり、魔石を残して消滅した。


「………」


 カルドラが無言で魔石を回収する。現在小さい魔石の処理に困っているギルドでも人型サイズの魔物の魔石なら喜んで買い取って貰える。

 しかしやはり人の魔物の魔石を拾うのは気分の良いものではない。


「……。カルさん。その魔石見せてください」

「ん? どうした? なにか気になるのか?」

「いいから早く!」

「?」


 アイーシャが人の魔物が残した魔石を見せろと言う。よくわからないが言う通りアイーシャのところまで持って行って見せる。

 すると彼女はカルドラの手に乗る魔石に手をかざす。


「ピュリフィケーション…」


 パァァァと柔らかい光が溢れ、魔石の淀んだ魔力が浄化されていく。

 深く暗い色をしていた魔石があっという間に透明感のある青緑色になった。

 浄化が完了したのだ。


「……なんで浄化を?」


 カルドラが疑問を投げかける。

 その問いにアイーシャは神妙な表情で答えた。


「カルさんとサニアさんの心の引っ掛かりが、少しでも軽くなればと思いまして…。まぁ浄化しても魔石は魔石なんですけど…」

「アイーシャ…」


 確かに浄化しようとしなかろうと魔石は魔石。魔物の核だったというのは変わらない。

 しかし視覚的にとても美しい宝石のようになったことで、先ほどよりは抵抗感は少なくなった。

 そしてそれ以上に、アイーシャの心遣いがとてもうれしく感じた。


「…アイーシャさん。ありがとうございます。その心遣いがとてもうれしいです」

「あぁ…。アイーシャ、ありがとう」


 2人が礼を言うと、アイーシャはえへへ…と恥ずかしそうに笑った。


「さぁ! 早く移動しましょう! また魔物が集まってきちゃいますよ!」


 空気を切り替えるようにアイーシャが声を上げ歩き出す。

 そんな彼女をカルドラとサニアは微笑みながら追いかけた。

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