制限の理由
しばらくそのままダンジョンを歩く3人。
何回か初めのようにネズミの大群に囲まれたが、その度にサニアがサイクロンで一掃。アイスウォールでマーキングしながら順調に探索を進めていた。
「ギルドで受付さんに言ってたけど、サニアってこの前の坑道探索では本当に手札が制限されてたんだな。今日の魔法の使い方はすごく清々しいよ」
「ほんとですよ! すごくかっこいいです!」
ここまでのサニアの活躍を振り返り称賛する2人。
サニアが照れながら謙遜し始める。
「ありがとうございます。でもまだまだですよ。アイスウォールの制御がもっとうまかったら、坑道探索であれほどの窮地に陥ることもなかったですから…」
「…今日のアイスウォールを見ておれもちらっと思ったんだけど、あの時使えなかった理由とかあるのか?」
カルドラの頭の中に坑道を氷で蓋をする映像がふわふわと浮かぶ。
「アイスウォールって周囲を押し退けるように生成されるんですよ。私の制御だと氷の圧力で坑道が崩壊していたと思います」
「……。生き埋めは嫌ですね…」
サニアの説明にアイーシャの顔が青くなる。
「トルネードエッジも何か理由が?」
カルドラの頭の中に坑道の魔物が乱舞し切り刻まれる映像が浮かぶ。
「壁や地面の表面が削り取られて砂埃が坑道内部に充満しちゃいますね。呼吸できなくなります」
「……。窒息は嫌ですね…」
サニアの説明にアイーシャの顔が更に青くなる。
「魔法使いっていうのは頭が良くないとできないな…。尊敬するよ…」
状況に合わせて適切な魔法を選択し行使する。これがどれだけ難しいことかは今の話を聞くとよくわかる。
周囲への影響範囲が広い魔法はその性質上、1つ間違えれば味方の方が全滅してしまうのだ。
自分の能力と周囲の状況を冷静かつ正確に判断できないと魔法使いは務まらない。
「ふふ、なんだか今日はいっぱい褒めて貰えますね♪」
サニアは照れながらも嬉しそうだ。
「『魔導士は常に冷静でいなくちゃいけない』っておばあちゃんがいつも言ってました。その重要性は最近ひしひしと感じてます。でもそういう面では2人の方がすごいですよ? 私が動揺している時、いつも2人が支えてくれてますから」
「…? そんなことあったか?」「ありましたっけ?」
カルドラとアイーシャが首を傾げる。
「ありますよ。たとえば――」
そこまで言うとサニアはなぜか顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
「どうした???」
「な、なんでもありません。…とにかく、私は精神面では2人を見習わなきゃなって思ってるんです」
(ジークの上で至近距離で宥められたのを思い出しちゃいました…)
そう。あれは森の封印が破壊されたとき、盛大に焦り散らかすサニアの顔をカルドラが両手で押さえつけ、無理やり視線を合わせて冷静になるように宥められたのだ。
2人の前で取り乱していたのも恥ずかしいが、顔以外見えないほど顔が接近したことの方が恥ずかしい。
サニアはすごい特技をたくさん持っているが、そういうところはちゃんと女の子なのだ。
(だめ、顔が熱い…。話題を変えなきゃ…)
一度その場面を思い出してしまうとなかなか赤面が収まらず、無理やり話題を変えることにしたサニア。
「魔法の話になったので今のうちに、今日私が使っている風魔法について説明しておきますね。サイクロンもトルネードエッジも、見た目は派手ですが斬撃の威力自体はエアカッターと同じです。なので攻撃対象が狼くらいのサイズになると牽制にしかなりません。もし次の階層でそのサイズの魔物が出たら、アイーシャさんとカルさんにもお手伝いをお願いしますね」
「なるほど。わかった、まかせろ」
「了解しました!」
違う話題を話すことで顔の火照りが落ち着き一安心のサニア。
そのまま探索を続行する。




