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双棍のトラベラー  作者: コルミ
未知の世界は意外と近い
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止まった掃討作戦

 次の日の朝。3人は坑道の掃討作戦の進捗を確認するためギルドに足を運んだ。

 このギルドで毎回お世話になっている受付嬢を見つけ、軽く挨拶を交わし話を聞く。


「一昨日の夕方頃に坑道の奥の広間でダンジョンが発見され、ダンジョン入り口を塞ぐようにキャンプを設営。昨日の朝からダンジョンアタックが開始されるも多数の魔物に阻まれ探索が進まず、お昼にアタック中断。夜まで会議が行われた結果、ダンジョンを冒険者向けに開放して攻略されるのを期待して待ちつつ、他の町のギルドと兵士にも応援を要請して再アタックの準備を進めることになりました。その間ダンジョン入り口のキャンプを兵士が交代で駐屯して坑道に魔物が出てこないように見張ることになってます。魔術士の冒険者数名も長期契約という形で駐屯してもらってます」

「…1日でだいぶ状況が変わったんですね」


 なんとすでにダンジョンアタックが開始されていて、なんやかんやで開放されているらしい。

 わざわざ掃討作戦の指揮下に入らずともダンジョンに潜れるすばらしいタイミングだった。


「ダンジョンの中がどんな感じか情報きてます? やっぱり坑道みたいに狭いんですか?」

「いえ。ダンジョン内はかなり広い空間だそうです。でもその空間のあちらこちらから絶えず大量のネズミの魔物が走って来るらしく、全く先に進めないそうです」

「…なるほど。広いんですか」


 昨日の3人での話し合いでダンジョン内が広ければダンジョンを破壊しに行くと決めていた。

 最終確認の意味も込めてアイーシャとサニアを見る。2人は真剣な顔で頷いた。

 それを見てカルドラも頷き、受付嬢に確認を取る。


「そのダンジョン。これから入っても大丈夫ですか?」

「え!??? カルドラ様たちが入るんですか!? で、でもこの前坑道であんなことがあったのに…」


 すごく心配そうな顔をする受付嬢。

 無理もない。3人は数日前に坑道で死にかけてるのだ。なのにまた同じ場所へ行こうとしているなど正気を疑うだろう。


「大丈夫です。今回はある程度情報がありますから」

「でも、でも…」


 カルドラが心配ないと言うも納得できない受付嬢。余程心配なのだろう。

 そんな受付嬢にサニアとアイーシャも声を掛ける。


「ダンジョン内が広いなら私も手札がかなり増えます。坑道でのようなことにはなりませんよ」

「私はこの数日でパワーアップしてるので前より2人を護れます!」

「うぅ……」


 アイーシャの言葉はよくわからないが、サニアの言葉は彼女に刺さったようだ。

 しぶしぶではあるが、ダンジョンに入るための手続きを始めてくれた。


「……わかりました。こちらがダンジョンへの通行証になります。これを坑道の前にいる兵士さんに見せればダンジョンの入り口まで案内してもらえるはずです。それと…アイーシャ様、浄化魔法は使えたりしますか?」

「ピュリフィケーションですか? はい! 使えますよ!」

「実は、たった今このような依頼書が回ってきまして…」


 通行証と一緒に申し訳なさそうに依頼書を見せる受付嬢。

 3人で内容を確認する。


「急募。魔石の浄化。……なるほど。ダンジョンの魔物絡みですか」

「はい。現在も定期的に小動物サイズの魔物がダンジョンから出てきていて、それらをダンジョンの入り口で処理し続けた結果、入り口の横に小さい魔石が山積みになっているそうです。小さい魔石は用途が限られているため一度に大量の売買が難しくて…、でもあまり長期間そのままにしてしまうとその魔石から魔物が生まれてしまうかもしれなくて…、これからダンジョンに入る方に頼むのは非常に心苦しいのですが――」


 そう言う受付嬢の言葉を食い気味にアイーシャが口を開く。


「任せてください! 浄化は神官の本分です! 今溜まってる魔石全部きれいに浄化してみせます!」


 ふんすっと自信満々のアイーシャにぽかんとする受付嬢。

 サニアが微笑みながら補足する。


「安心してください。アイーシャさんの実力ならピュリフィケーションをいくら使ってもダンジョンアタックへの影響はほぼありません。なのでその依頼は私たちが受けますよ」


 その言葉を聞き、受付嬢は少し涙ぐみ深く頭を下げる。


「ありがとうございます…。どうか…、無事に戻ってきてください。待ってます」


 そして3人は尚も心配そうな受付嬢に見送られギルドを後にし、坑道へ向かって歩き出した。

 少し歩くと、サニアが今回の自身の魔法の使い方について話し始めた。


「ダンジョン内がなかなかに広いそうなので、今回は魔法の出力を上げてより広範囲に攻撃していきますね。たぶんしばらくはアイーシャさんも魔力を温存できると思いますよ」


 サニアの言葉に、以前坑道で見た光の大放出が頭を過る2人。

 一応確認を取る。


「一応聞きたいんだが、前に使ってたでっかい光を放出する魔法とか使うのか?」

「シャイニング・レイですか?」

「そう、それ」


 その質問に苦笑いで答えるサニア。


「あれは"戦略魔法"の類なので、実は"禁術"なんですよ。前に使ったものも精一杯出力を抑えてあの威力なので、周囲への影響が大きすぎて普段使いには向かない魔法ですね。ちなみに3人での発動が前提だったりします」


 最後はてへっと悪戯っぽく言った。

 アイーシャは苦笑い。カルドラは右手を顔に当て天を仰ぐ。


(うちのパーティーの女性陣はどうして複数人使用前提の大魔法をぽんぽん使おうとするんだ…)


 そもそも戦略級の魔法を個人が知ってるのがおかしい。サニアにそれを教えたであろう先代の森の魔導士はいったい何者なのか。


「話が逸れちゃいましたね。今回使う予定なのはサイクロン、アイスウォール、フローズン・フィールドあたりです。どれも私の横にいれば安全ですので近くにいてくださいね♪」

「…わかった」「…わかりました」


 とりあえず最初はサニアの動きに合わせて進もうと思うカルドラとアイーシャだった。

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