偉いと思ってさ
カルドラが町に着くと日が傾き始めていた。
身体強化を使って早めに歩いて来たのだが、さすがに鉱山の途中からだと時間が掛かった。
(ま、ここまでくれば明るいうちに宿に戻れるな)
そう思い、歩くペースを落とす。
ほんのり上がった体温を冷ますようにゆったり歩いていると、カルドラが夜に素振りをしている広場から子どもの笑い声が聞こえてきた。
ちらっと視線を向けると、数人の子どもたちに交じってアイーシャが走り回っていた。
(極々自然に交じってやがる…。すごいな…)
何となく広場と通りの境に腰を下ろし、その光景を眺めてみる。
子どもたちは追いかけっこをしているようで、アイーシャは絶妙な速さで走り、子どもたちを追いかけたり追いかけられたりしている。
(そういえば前は孤児院の横の教会に居たんだっけか。さすが、子どもの扱いがうまいな)
前にアイーシャに聞いた情報を思い出しながらまったりする。
するとアイーシャが1人の子どもに捕まり、ほかの子にも次々と突撃されもみくちゃになって倒れた。
(…ふふ、懐かれてるなぁ)
その微笑ましい光景を穏やかな気持ちで眺める。
そして立ち上がったアイーシャは子どもたちに何かを言い、子どもたちがぶんぶん手を振りばらばらに散らばっていく。解散したようだ。
そして幸せそうな顔のアイーシャが宿の方向へ歩き出そうとしたときにこちらに視線が向く。
カルドラの存在に気付いたようで、パタパタと走ってきた。
「カルさんいつからいたんですか? 夢中で気づきませんでした!」
「ついさっきだよ。アイーシャ楽しそうだったな」
そのまま2人並んで宿へ向かう。
「えへへ。子どもたちと遊ぶの久しぶりだったのではしゃいじゃいました!」
「子どもたちも満足そうだったしな。アイーシャは子どもの相手がうまいんだな」
「追放前は孤児院の子たちと毎日遊んでましたからね。子どもと遊ぶのは得意ですよ♪」
ふふんっと得意げにするアイーシャだったが、その表情には少し懐かしさが滲んでいた。
残してきた孤児院の子たちを思っているのかもしれない。
(突然の追放だったみたいだし、きっと別れも言えなかったんだろうな…)
以前サニアが街に挨拶をしに行く際にアイーシャは「心残りは少ない方が良いですからね!」と言っていたが、もしかすると自分に重ねていたのかもしれないと思った。
そう思うと自然とアイーシャの頭に手が伸びた。
ぽんっ
「わっ。どうしたんですか?」
「ん?」
アイーシャはびっくりしているが振り払うようなことはせず、そしてカルドラはやさしく頭を撫でる。
「アイーシャは偉いと思ってさ」
「……ふふふ、なんですかそれ」
満更でもなさそうに大人しく撫でられるアイーシャ。
そして2人は軽く雑談しながら宿へ歩くのだった。




