情報がいっぱい
「なんか…スケールの大きい話だな。おれには想像できない世界だ…」
素直な感想を零す。
するとなぜかドラゴンが笑い出す。
(クックックッ。宇宙の子と共にある者が何を言うか。そのちっこいののほうが余程壮大よ)
「そらの子???」
カルドラにはドラゴンが何を言いたいのかがわからない。
(我とそのちっこいのは同族ではあるが、母が違うのだ。我は星の子、そやつは宇宙の子だ)
「ん~。さっきも出てきたけど、"ほし"ってなんだ? 龍脈のことか? そらは…空とは違うのか?」
(………なるほど。それも今や古代の知識か…。残酷なものよ…)
「古代の知識???」
時間の残酷さをしみじみと感じドラゴンは目を閉じる。
少しそのまま懐古に浸り、目を開け、カルドラに思念を飛ばす。
(気にするな。母が違うとだけ覚えておけ)
「そ、そうなのか。わかった」
気にはなるが、相手は巨大なドラゴンだ。カルドラにはこれ以上突っ込んで聞く勇気はなかった。
(他に聞きたいことはあるか? 人族とのやり取りも久しぶりだ。いくらでも付き合ってやるぞ)
「…あんた、だいぶ楽しそうだな。話すのが好きなのか?」
(我は人族の営みを観察するのが好きなのだ。だから"ここ"に居る)
「なるほど…」
ソラと良いこのドラゴンと良い。どうもサニアから聞いたドラゴン像と合わない。ドラゴンは人と積極的に関わらないはずでは?という疑問が溢れる。
しかし目の前のドラゴンが聞いてもいないのにその疑問に答えてくれた。
(警告しておくが、他の同族に会っても不用意に近づくなよ? そのちっこいのと我が特殊なのだ。特に黒いやつには絶対に近づくな。視界に入っただけで殺されるぞ)
「視界に入っただけで!???」
恐ろしい警告に愕然とする。そんなものいったいどう回避すればいいのか。
(あやつは人族が大嫌いだからな。仕方あるまい。まぁ安心しろ。あやつが住んでいる場所は人族には到達できぬ)
「そ、そうか…。良かった…」
嫌いだから殺されるのが仕方ないというとんでも理論のドラゴンがこの世界のどこかにいるらしい。幸い人の行動範囲外に住んでいるようなので安心だが、間違っても人族の領域には来ないでほしい。
「ほかのドラゴンもあんたみたいに結界の中にいるのか?」
これも気になることだ。もしドラゴンが皆結界で隠れているならこちらからは発見できない。
(いや、他の同族はこんな結界は使わん。伝えたであろう? 我は特殊だと。人族の観察が趣味なのでな。魔力を感知できるギリギリの距離で居座る必要があったのだ。だからこの魔術を作った。使えるのは我だけだ)
「…本当に変わってるんだな、あんた」
(クックックッ。生を謳歌するには趣味は重要なのでな)
どうにもこのドラゴンは見た目と中身のギャップがすごい。もしこのドラゴンを人に置き換えると行動が完全に犯罪者だ。
しかも動機が"観察が趣味"なのだから救いようが無い。
カルドラはこのドラゴンがドラゴンに生まれて本当に良かったと思った。
(さぁ次の質問はないか? まだまだ語り合おうぞ)
「…はは、さすがに肩の力抜けてきたな。じゃ普通に雑談しようぜ。おれもあんたといろいろ話したい」
(望むところよ)
そしてカルドラはしばらく巨大なドラゴンと語り合った。
やはりというか何というか、このドラゴンはなかなかに愉快な性格をしていて、話せば話すほど打ち解けることができた。
(クックックッ。我を前にここまで寛ぐとは。大した度胸よ)
「いや、こんなに愉快なやつだとわかったら緊張なんてできるか。見た目とのギャップがデカすぎなんだよ」
もはやすっかり仲良しである。
カルドラをここへ連れてきたソラも満足そうだ。
「さてと。ソラ、そろそろ戻ろう。町に着く頃に夕方になっちまう」
「ピ!」
ソラは元気に返事をするとカルドラの頭に乗る。
(なんだ、もう行くのか。ここで寝ても良いぞ?)
巨大な体躯で寂しそうにするドラゴン。本当にギャップがすごい。
「ありがたい提案だけど、町に仲間もいるからさ。今日は帰るよ。また来てもいいか? 次は仲間も連れてきたい」
そう言うと途端に嬉しそうにするドラゴン。
(ふむ。良いだろう。いつでも来るが良い。待っておるぞ。…………お、そうだ。1つ頼まれてはくれぬか?)
「ん? どうした?」
ドラゴンからの頼み事とはいったい何だろうか。大抵のことは自分で解決できそうだが…。
(実は我の真下に魔族がダンジョンを作っていったのだ。魔力が停滞するゆえ早く破壊したいのだが、場所が悪くてな。我が動くと人族が作った洞窟が潰れてしまう。破壊してきてくれぬか?)
「魔族が…ダンジョンを作った…?」
とんでもない情報が出てきた。
現在ギルドと兵士が坑道の魔物の掃討作戦を行っている。その魔物発生の原因が魔族かもしれないのだ。
(うむ。20日ほど前だったか…。洞窟に魔族が入って何やらやっておったぞ。迷惑な連中よ)
「…………わかった。おれだけじゃたぶん無理だけど。なんとかやってみるよ」
(おぉ、やってくれるか。よろしく頼むぞ人の子よ)
そしてドラゴンと別れ、カルドラはダンジョンへの対応を考えながら山を下る。
思わぬところから出てきた魔族の影に不安が過るのだった。




