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双棍のトラベラー  作者: コルミ
未知の世界は意外と近い
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常識の外側

 そのあまりに巨大な体躯に驚愕する。丸まっているので辛うじて全体像がわかるが、もし立ち上がったらどれほどの大きさなのか想像も付かない。

 そのドラゴンの瞳は全てを見透かすような不思議な色を帯びており、その瞳でカルドラとソラを見ていた。


(おかしいおかしいおかしい!!! さっきまで何もなかったじゃないか! 何も…! …………い…いや、違う。居た、最初から。……おれの認識が…阻害されていた…???)


 記憶を辿ると、確かにこのドラゴンは最初からそこに"居た"。しかしカルドラはそれが当然で、"異常はないと思い込んで"いた。それがどうしようもなく不気味で恐ろしかった。


「ピー。ピー」

(………………。…………………………、………………………………。………………!)


 ソラとドラゴンが会話しているように感じる。ソラはこのドラゴンと意思疎通ができるようだ。

 そしてカルドラは理解した。ソラはカルドラをこのドラゴンに会わせたかったのだ。

 そう理解したカルドラは、ここでやっとドラゴンを観察し始める。

 その巨体は岩のような質感の深く暗い銀色の甲殻と鱗で覆われ、その隙間が深い翡翠色や金色に光っている。おそらく体から溢れる魔力が光っているのだ。そしてカルドラから見える前足は巨体に見合う立派なもので、その物々しい爪は岩など簡単に砕いてしまうだろう。

 ひと際目立つのはそれまた巨大な背中の翼だ。畳まれてはいるが、この巨大なドラゴンを丸ごと包み込めそうな圧倒的サイズ感だ。実際ドラゴンの下半身はその翼に隠れて確認することができない。


(……、…………………………?)

「…!」


 カルドラに思念が飛んできた。なぜか意味が理解できる。「さて、そろそろ落ち着いたか?」と言っているようだ。

 非常にもやもやする感覚だが、今はそんなこと気にしていられない。意思疎通ができるならいろいろ聞きたいことがある。


「あ、あんたは…何なんだ…? ソラは、なぜおれをここに連れてきた…?」

(我は古代よりこの地を見守ってきたものだ。最近そのちっこいのがよく遊びに来るのだ。ただ紹介したかっただけではないか?)

「し、紹介したかった…だけ…?」

「ピ!」


 元気に返事をするソラ。どうやら本当に紹介したかっただけのようだ。

 普段ならここで肩の力が抜けるのだが、目の前に巨大なドラゴンがいるこの状況ではとてもそんなことできない。


「なぁ…。さっきまでおれは…、あんたを全く"認識"できなかった…。何かの魔法なのか…?」


 緊張の残る口調で何とか質問する。先ほどの認識阻害とも言うべき現象はどうしても聞いておきたい。


(ふむ、結界の影響だろうな。窪地に入ったとき違和感を感じなかったか? それが結界の境界だ。普段は窪地は見えないようになってるのだがな。今回はそのちっこいのが一緒だったので入れてやったぞ)

「えーと、つまり窪地を見えなくする結界の影響であんたも見えなくなってた…と」

(おそらくな)


 いろいろ丁寧に教えてくれるドラゴン。少しずつ緊張も解けてきた。


「はぁ…。ソラ、最近いないことが多いと思ったら、ここに来てたんだな」

「ピ!」


 町からここまで結構距離がある。ここで遊んでいたなら町で見かけないのも当然だ。


(はっはっはっ! 我も久方ぶりの客が嬉しくてな! そのちっこいのには感謝しておるぞ!)


 巨大なドラゴンの顔が少しだけ笑っているように見える。大笑いしている思念とのギャップがすごい。


「ソラを構ってくれてありがとな。最近おれたち坑道に潜ったりいろいろしてたからソラと遊べなくてさ…」

(よい。先ほど伝えた通り我も楽しんでおる。同族とやり取りするのも80年ぶりくらいなのでな)

「80年…?」


 ソラの子守り(?)をしてくれていたお礼を伝えたら気になる思念が飛んで来た。ちょっと突っ込んで聞いてみる。


「もしかしてその80年前のやり取り、人族と魔族の戦争に関係してるのか?」

(ほう。ちゃんと歴史を継承しておるな。感心よ。その通りだ。魔族の動向を監視し、やつらの暴挙をどこまで許容するかを同族たちと話しておったのだ)


 これはすごく貴重な情報だ。80年前の戦争の生き証人が目の前にいる。もっと詳しく聞けるかもしれない。


「暴挙を許容…っていうのはどういう意味なんだ?」

(ふむ…。人族の間で、我ら龍族はどのような存在だと伝わっている?)


 質問したら質問が返ってきた。素直に答える。


「龍脈から生まれ、生まれた地域を護る守り神。龍脈の化身。環境の守護神。そんな感じに伝わってる」

(……ふむ…)


 それを聞いたドラゴンは少し間を置き、カルドラの質問に答えてくれた。


(まぁ大体そんな感じだ。我ら龍族は、環境を破壊し母なる星を脅かす存在を決して許さぬ。80年前、魔族は我らの怒りを買う寸前まで暴れたのでな。あと少し暴れていたら我らが魔族を滅ぼす手筈になっておったのだ。魔王とやらは龍族と殺り合えると考えていたようだが、我らを(あなど)り過ぎよのう)


 人族からの目線では絶対に知り得ない戦争の裏側の話だ。

 実は魔族は滅ぼされる寸前だったらしい。そして魔王は種族を滅ぼせる力を持つドラゴンとも戦える自信を持っていた。

 過信か…、それとも…。

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