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双棍のトラベラー  作者: コルミ
町での生活 2
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掃討作戦本格始動

 少しの間3人で祈りを捧げた後、アイーシャが「水を差してごめんなさい」と謝ったが、2人は「大事な事だと思う」と返した。

 そして巨大なクオーツサラマンダーをギルドから貸してもらった専用の台車に乗せ、サニアに茂みを切り開いて貰いながらカルドラが台車を引き、何とか町まで帰還した。

 キラキラ光る巨大なクオーツサラマンダーが乗った台車を引いて歩いていたため、すれ違った人たちから「でっかいなー」「このサイズは珍しい」「がんばったな」などなどの言葉を貰い、ギルドの解体受付のおっさんからは「よくやった」と一言だけいただいた。

 一応おっさんの横にいた別の受付の女性から「とても喜んでます」と説明を受け、「作業が終わったら連絡を入れるので依頼受付で依頼完了手続きをお願いします」と言われたため、隣の建物の依頼受付まで流れてきた3人だった。


「お疲れ様でした。まさか初見でこんなに早く依頼を達成するとは…、私も驚きです」

「やっぱり皆かなり苦労するんですね…」


 良い笑顔の受付嬢に苦笑いのカルドラ。

 攻撃自体は脅威ではないが、体表を傷つけてはいけないという制約の中で、対象があれほど巧みに攻撃を躱して来るのだ。この依頼書が受付嬢の手元に残っていた理由はよくわかった。


「報酬額は皮素材の査定で確定しますので、解体が終わるまでしばらくお待ち頂けますと幸いです。今日中には終わると思います」

「わかりました。よろしくお願いします」


 受付嬢の言葉に頷く。

 そしてこれからどうするかを2人に確認しようと振り返ると、サニアが不思議そうに周りを見渡しているのに気づいた。

 カルドラの視線に気づいたサニアが零す。


「人が少ないなと思いまして…」


 それを聞いたカルドラも周りを見渡してみる。

 確かに少ない。昨日、一昨日と常に数組の冒険者パーティーが(たむろ)していたギルドのホールが今は閑散としている。

 それについて受付嬢が説明してくれた。


「坑道の件の延長です。貴方方が森に出発した後、ここにいた冒険者様たちに坑道の魔物の掃討作戦への参加が呼びかけられたんです。その参加報酬が結構多くて、皆喜んで坑道へ出かけて行きました」

「それは…、なんとまぁ…」


 掃討作戦については昨日ギルドと兵士のお偉いさんたちが話し合っていたと聞いていたが、ついに詳細が決まったらしい。

 (たむろ)する冒険者にまで参加を呼び掛けるその作戦内容に少し興味が湧いた。


「作戦の詳細とかは聞いてます? あの群れにどう対処するのかすごく気になるんですが…」


 その質問にちょっと困った顔をする受付嬢。

 さすがに外部に作戦内容は漏らせないか…と考えていると、その顔の理由は全く別だった。


「作戦…と言えば作戦なのでしょうけど。期待して聞くとがっかりしますよ? まず1隊目が坑道に入り魔物を処理しつつ前進、ある程度倒したら戻る。そして2隊目が入れ替わりで坑道に入り――。という感じで、時間と人数で押し進める力技の作戦となってます」

「………なるほど」


 カルドラたちが持ち帰った情報と、先遣隊の情報。その2つを基に必死に考えた結果、最終的にごり押し作戦しか思いつかなかったようだ。


「でも確かに、場所が坑道内部と考えるとそれしかないのかもしれないですね…。あれだけ狩っても減る気配が無いのですから、減ったそばから供給されてると考えた方がいい。つまりまずはその供給源を見つけない事には話にならない」

「…ダンジョンか」


 サニアの言葉を聞き、自然とダンジョンという言葉が出てくる。

 魔物同様、淀んだ魔力が集まる場所で自然発生するダンジョン。ダンジョン内では魔物と魔石が大量発生するが、たまにダンジョン内に収まりきらない魔物が外に出てくることがある。

 今回、そのタイプのダンジョンが坑道のどこかに発生したということだろう。


「ギルドもそう判断しました。まずは先の作戦で坑道内をマッピングし、ダンジョンを発見し次第ダンジョンアタックを慣行。コアを破壊してダンジョンを消し、外に残された魔物を地道に処理。これが掃討作戦の全容になります」


 受付嬢の説明に3人は納得する。現状ではその作戦が一番現実的だろう。


「…カルドラ様たちはどうされます? 参加報酬はなかなかの金額になってますけど…」

「うーん…」


 金額が書かれた簡単な張り紙に視線を向けつつ、受付嬢が尋ねてくる。

 その金額を見ると確かに魅力は感じる。しかし…。


「アイーシャ、サニア。どうする? ショートソードが無いから今度こそおれは全く役に立てないが…。」


 カルドラの本来の武器は今鍛冶屋に預けている。武器無し状態を解消するために手に取ったのはロングソード。使い慣れたショートソードでもギリギリだったのだ。とても狭い坑道で使える武器ではない。


「私は…止めておいた方がいいと思います…。崩れた時に立て直す手段が無いです…」

「私も同じ意見です…。安定しているときは私とアイーシャさんでなんとかできますが、不測の事態になればカルさんの力は絶対に必要になります。今回はそれに頼れないと確定してしまってますから…」

「だよなぁ…」


 2人の言う通り、安定時はカルドラの出番は無いが、前回のように流れが変わった時は全員で力を合わせなければならない。しかし今のカルドラは置物と変わらないのだ。現状で坑道に入るのはリスクが高すぎる。

 話し合いの結果を踏まえ、受付嬢に返事をした。


「ごめんなさい。今、おれの本来の武器は鍛冶屋に預けてあるんです。代わりに使ってるのがロングソードなんですけど、それじゃ坑道では戦えない。なので今回は…」

「いえ、こちらこそすみません。話の流れで一応聞いてみただけですので、どうかお気になさらず」


 カルドラの言葉に笑顔で返す受付嬢。どこかほっとしているように見える。

 もしかすると3人が再び坑道に入るのを心配していたのかもしれない。彼女から見れば一度カルドラたちを坑道で殺しかけているのだ。もう坑道には行ってほしくないのだろう。


(癖の強い依頼ばっかり勧めてくるけど、根はだいぶやさしい人だよな)


 心の中で彼女に対する印象を思う。

 先日の坑道帰還後の対応と良い、彼女の振る舞いからはその誠実さが良くわかる。仕事上の付き合いだが、彼女と仲良くなれて良かったと思った。

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