アイーシャの作戦
次なる獲物を求め、森を探索する3人。
やっと対象を発見した。
「居たぞ。かなりでかい」
見つけたクオーツサラマンダーは体長3メートル後半はありそうな超大物だった。
その体表に輝く水晶はどれも大きく、この個体の生きてきた年数の長さを感じさせる。
例に漏れず、この個体も微動だにせず地面に寝そべっていた。
「あの…、本当にさっきの作戦を採用するんですか…? 発案したのは私ですが…、あまりに幼稚と言いますか何と言いますか…」
おずおずと言うアイーシャのその言葉に、カルドラがニッコリ笑って答える。
「アイーシャ。こういうのはな、シンプルなのが一番良いんだ。さっきの作戦はその点が最高だ」
「私も同じ意見です。少なくとも今まで出た作戦の中では一番成功率が高いと思います」
「うぅぅ。複雑な気分ですぅ…」
笑顔の2人と困り顔のアイーシャ。
そんな会話をしていたらもう対象のすぐそばまで近づいてしまった。
そしてカルドラが2人に声を掛ける。
「2人とも、ポケットに"アレ"は入れたな?」
「「(こくり)」」
カルドラの確認に2人が頷く。
「よし。作戦開始だ。いくぞ!」
カルドラの掛け声と共に3人が3方向に別れ、クオーツサラマンダーの頭部を取り囲む。
そしてカルドラとサニアは身体強化を発動。アイーシャはリフレクションを発動する。
そして3人はクオーツサラマンダーの顔目掛け、一斉に"砂"を投げ始めた。
「!」
驚いたクオーツサラマンダーはウォーターウォールで顔を防御。
しかしカルドラが水の防壁が掛かりきっていない箇所に回り込み砂を投げ付ける。
「!」
嫌がるクオーツサラマンダーがカルドラ目掛けウォーター・レイを発動。水圧でふっ飛ばそうとする。
しかし油断の無いカルドラは水程度の速さでは捉えられない。
「えーい!」
「えい! えい!」
ウォーター・レイを使ったことでウォーターウォールが薄くなり、そこにアイーシャとサニアが砂を投げ付ける。
「!」
水の防壁を貫通し、数粒の砂がクオーツサラマンダーの片目に入った。
必死に手で目を擦りつつ、サニアに向かってウォーター・レイを発動。身体強化で素早くなっているサニアは、視界不良で狙いの甘くなったそれを丁寧に躱す。
「そぉい!」
その隙にカルドラが無事な方の目に砂を投げ付ける。
クオーツサラマンダーは目を瞑りギリギリ回避。
「えい! えーい!」
アイーシャが追撃と言わんばかりに砂を投げ付ける。
そして今度はアイーシャに向けてウォーター・レイが発動。
しかしそれはリフレクションにより反射され、クオーツサラマンダーの顔面に高圧の水流が襲い掛かる。
バシャアアアア
「!!!」
びっくりしたクオーツサラマンダーは反射的に水が飛んできた方向へ口を大きく開けて威嚇のポーズ。少しの硬直が発生。
その硬直を見逃さずカルドラが剣を構え、砂で視界不良に陥っているクオーツサラマンダーの目を目掛けて渾身の突きを放つ。
ザクゥ
「!!!!!」
突きはクオーツサラマンダーの眼窩に吸い込まれ、対象の頭蓋の内部を破壊する。
クオーツサラマンダーは少し痙攣し、そのまま動かなくなった。
「…やりましたか?」
「………」
サニアの言葉を聞き、カルドラは刺さった剣を少し動かしてみる。
反応は無し。完全に息絶えている。
「大丈夫。狩猟完了だ」
カルドラは剣を引き抜き、軽く拭くとポケットへ。
そんな彼にサニアが嬉しそうに駆け寄る。
「やりましたねカルさん。お見事でした」
「ありがとう。でも、皆の連携の結果だよ。うまくいくとは思ってたけど、あんなにきれいにハマったのは正直驚いた。アイーシャの作戦が完璧だったな」
そう言ってアイーシャを見るカルドラ。
しかし彼女からの返事はなく、彼女はクオーツサラマンダーの亡骸の前に膝をつき、静かに祈りを捧げていた。
カルドラとサニアは顔を見合わせ、そしてアイーシャに倣い、2人もクオーツサラマンダーに祈りを捧げた。




