クオーツサラマンダー
少し後。町の近くを散策するカルドラとアイーシャ。
時間的に対象を狩ることはできないが、とりあえず森の下見をしておこうということになり周辺をふらふらと歩き回っている。
「しかし…、解体受付のおっさん、大雑把だったなぁ…」
「ハハハ…、そうですね…」
先ほどの解体受付でのやり取りを思い出す2人。
皮を傷つけない狩り方を聞いたら「目を潰してえぐれ」。
解体方法を聞いたら「時間の無駄だからやるな」。
内臓の取り出し方を聞くと「触るな持って来い」。
バルドレンとはベクトルの違う"職人"の姿がそこにはあった。
一応受付の周りにいた冒険者のフォローによると「腕は最高」とのこと。
「内臓が珍味っていうなら血抜きくらいはすべきだと思うんだが…、大丈夫なんだろうか…」
依頼受付で聞いた話と解体受付で聞いた話の微妙な食い違いに頭を悩ませる。
しかし触るなとはっきり言われてしまったので勝手にやるわけにもいかない。
「でも周りの人たち皆笑ってましたし、きっとすごく信頼されてる人ですよ!」
「うん、まぁ…、それはおれも思ったよ。ある意味あれで愛されてんだろうな」
アイーシャの言葉でギルドの依頼受付とは違う解体受付の独特に雰囲気を思い出し、少し心が温かくなる。
そんな話をしながらまた少しふらつくと、キラキラ光を反射する大きな太ったトカゲのような生き物を発見した。
クオーツサラマンダーだ。
「居たな…」
「居ましたね…」
遠目にじっくり観察する。
見つけた個体は全長2メートルくらい。その体表には水晶が鱗の様にびっしり張り付いており、当たった光が乱反射してとても煌びやかだ。
解体受付にいた冒険者の話だと、額に張り付いている大きな水晶が特に価値が高いため"絶対に傷つけるな"とのことだった。
「…………動きませんね?」
「……あぁ」
見つけたその個体は全く動かずに寝そべっており、寝ているのか起きているのかもわからない。
すると奥の茂みから体高1メートルくらいの大きな猫のような生き物が現れ、クオーツサラマンダーの匂いをクンクン嗅ぎ始める。
「……無防備すぎるだろ」
「あぁぁ…食べられちゃいますぅ」
そして大猫がいざ噛みつこうとすると、その口の前に水の壁が現れ噛まれるのを防いだ。
同時にクオーツサラマンダーが急に体を翻し、水晶がびっしりついた尻尾で大猫の顔をぶっ叩く。
ばちぃぃぃぃん
「がぅっ!」
大猫はふっ飛ばされ一回転し、すぐに立ち上がると茂みの中へと走っていく。
その一部始終を観ていた2人は顔を見合わせる。
「強いんだな…」「強いんですね…」
見つけた個体は聞いていた全長より小さいためおそらく若い個体。それでいて今の貫禄である。もっと大きい個体はさらに強いだろうことは容易に想像がつく。
「…一旦帰るか」
「…そうしましょう」
最低限の目安を視ることができたので、2人は下見を終え宿に戻ることにした。




