掃討作戦の進捗
その後カルドラとアイーシャはギルドに顔を出していた。
カルドラの傷跡を気にしていた受付嬢に傷跡が無事治った事の報告と、坑道の掃討作戦の進捗状況を確認するためだ。
「本当にすごいです…。あの数の傷跡をこんなにきれいに出来るなんて…」
「ふっふっふっ。努力の勝利です」
驚く受付嬢に偉そうにするアイーシャ。しばらくの間調子に乗ってそうだ。
「それで、掃討作戦の方は今どんな感じですか? 情報来てます?」
カルドラの質問に、少し困った顔になる受付嬢。
「はい。あまり良い状況ではないようです。貴方方の報告を参考に魔術士中心で構成された先遣隊が早朝に出発したのですが、魔物のあまりの多さに早々に撤退して来たんです。坑道で群れというのが本当に厄介らしくて…。今会議室でこの町のギルドと兵士の上層部が話し合っているところです」
「…だいぶ大事になってるんですね」
網目状に掘られた坑道。こちらの行動を制限された上で向こうは群れで突撃してくる。しかも魔物は死を恐れないから殲滅するまで止まらない。そもそも魔物に死という概念があるのかも怪しい所だ。
「閉鎖空間だから火魔法で一網打尽ってわけにもいかないでしょうからね…」
「え? そうなの?」
アイーシャがなかなか難しい話をし出した。その辺の知識がないカルドラがきょとんとする。
受付嬢が簡単に説明してくれた。
「基本的に坑道のような、周囲が壁に囲まれている空間での火魔法の使用は厳禁です。私も何故そうなるのかは存じませんが、魔法が発動しなかったり、使用者の意図しない大火力になったり、爆発したりするんだそうです。そして閉鎖空間ではもしそうなった場合回避ができません」
「へ~…。魔術士はそういうのも気をつけないといけないんですね…。あぁ、だからサニアはエアカッターで…」
その説明にカルドラが1人納得している横でアイーシャがどや顔をしている。
(ほんと、頭は良いんだよなアイーシャは…。なんで行動があんなにぶっ飛んでるんだか…)
何回目とも知れないアイーシャに対する感想をそっと心の隅に追いやり、いろいろ教えてくれた受付嬢に感謝を告げる。
「うん。とりあえず坑道についてはわかりました。情報ありがとうございます」
その言葉にニコッとして頭を軽く下げる受付嬢。
そしてせっかくギルドにいるので簡単な採取依頼でも受けようと思い、それについて聞いてみる。
すると受付嬢がパラパラと依頼書の束に目を通し、一枚の依頼書を見せてくれる。
「これなど如何でしょう。クオーツサラマンダー1匹の納品です。皮素材の確保が目的の依頼なので倒し方に少し注意ですね。あとは…内臓が珍味として有名です。この依頼ではそちらは対象外なので、解体の際に確保しておいても良いかもしれませんね♪」
「珍味! カルさんこれ受けましょう!」
さすがはアイーシャである。食に貪欲だ。
「待て待て、そもそもクオーツサラマンダーってやつをおれは知らん。受けるにしても情報を集めてからだ」
慎重なカルドラの意見に受付嬢が笑顔で情報をくれる。
「クオーツサラマンダーはこの町の鉱山周辺の森に生息してる大型の両生類ですね。成体は全長3.5メートルくらいです。水魔法を使うので結構強いですが、カルドラ様たちなら問題にならないレベルかと」
「…なるほど。依頼の期限は?」
「1週間です。でも町の商会から定期的に来ている依頼なので、最終的に達成できれば過ぎちゃっても問題にはならないと思います」
なかなかにアバウトなことを言う受付嬢。この町はこんな感じでも大丈夫らしい。
さすが鉱夫の町、大雑把だ。
「わかりました。これを受けます。他に何か注意点とかありますか?」
「先ほどもお伝えした通り、皮素材の確保が目的の依頼になります。ぼろぼろにしてしまうと査定額がガクッと下がりますのでご注意を。詳しい倒し方や解体の方法は隣の建物の解体受付で教えて貰えるはずです。どうぞ立ち寄ってみてください。それと乱獲は処罰対象ですので、もし1匹目をぼろぼろにしてしまってもそのまま納品してください。2匹目は狩らないようにお願いします」
たくさん狩ると捕まるらしい。名前からしてさぞ美しい皮素材なのだろう。絶滅しないように町をあげて保護しているようだ。
重要情報も聞けたので次は隣の建物で技術的なことを聞いてくることにした。
受付嬢に挨拶をする。
「なるほど。ありがとうございます。じゃあ行ってきますね」
「はい。お気をつけて」
笑顔で手を振ってくれる受付嬢に手を振り返し、2人はギルドを後にした。




