追放神官
その後2人は近くの飯屋、腕相撲を繰り広げた酒場とは別の店で料理を待っていた。流石に腹が減ったということで移動したのである。
ちなみに、カルドラが腕相撲に興じている間に付近を散策していたソラが近くに何があるかを把握していたため、すんなり飯屋を発見することができた。
当然だが神官は無一文のため、カルドラの奢りである。
「そういえばあんた、なんで無一文なんだ? 酒場にいた理由から察するに、この町の教会に所属してる感じでもなさそうだし。あんたどこから来たんだ?」
疑問に思っていたことをまとめて聞いてみたカルドラ。それに対し神官が淡々と答える。
「えーと、まず所属なんですけど。私は2つ隣の町の、孤児院に併設された教会に所属していました」
「…"いました"?」
「はい。数日前にここの隣の街で教会の大きな大会があったんですけど。そこでちょ~っと粗相をしまして、追放されてきました。あ、神官位は剥奪されてないので今でもちゃんと神官ですよ?」
「………なるほど」
いったい何をやらかせば追放なんてことになるのか想像もつかないが、この神官ならその"何か"をやるという謎の信頼感があった。
「一文無しの件はですねぇ。追放にあたって私の親のような存在の神父様が銀貨を3枚持たせてくれたんですけど。この町に着いて、おいしい物を食べて、宿に泊まって、更においしい物を食べたら無くなってました! てへっ」
(可愛い顔で誤魔化しているが、きっとその親のような神父は泣いてると思うぞ)
心の中で顔も知らない神父に同情しつつ思う。この神官は誰かが保護しなければ生きていけないのではないか…と。
「貴方はどうなんですか? トラベラーとか言ってた気がしますが、どうしてこの町に?」
「ん? おれ?」
神官がわくわくした様子で聞いてきた。
「おれはあんたみたいな愉快な理由はないよ。子どもの頃からずっと世界の景色をこの目で見たいって夢見て。途中ですぐ死なないように訓練して…。で、少し前に満を持して旅に出た。そんな、ただのトラベラーだよ」
「へぇ…。なんだか素敵ですね、そういうの」
「そうか? 普通だよ」
「…ふふふ」
何が面白いのか、ニコニコと笑う神官。それを見ていたら、自然とカルドラの頬も緩んだ。
「で、あんたこれからどうする気だ? 今回は奢ってやるけど、文無しじゃすぐ死ぬぞ?」
一応心配してやるカルドラ。
「そーなんですよねー、どうしましょうか。そもそも追放され立てなので旅の目的も何も無い状態なんですよねー。まぁ私はおいしいものが食べられればそれでしあわせなんですけど。お金が無いのでおいしいものも食べられません。うぅー」
おでこをテーブルに押し付けてごろごろさせる神官。それを憐れみながら眺め、思う。
(金を稼ぐという頭はないのかこいつは…)
やはりこの神官は1人で生きていくことは不可能だ。生きられるにしても、昨日のような輩に捕まり奴隷落ちが関の山な気がする。こいつには決定的に生活力がない。




