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双棍のトラベラー  作者: コルミ
町での生活 1
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嫌な可能性

「そうだ。サニア、少し確認したいことがあるんだけど、いいか?」

「はい? どうしました?」


 ある程度食事が済み、適度にまったりしているとカルドラがサニアに問い掛ける。昨日疑問に思った魔力のスタミナについてだ。


「実は昨日の素振り、5層開放状態での魔力のスタミナ検証も兼ねてたんだ。結果、5時間以上身体強化を維持しても魔力切れを起こさなかったばかりか、その兆候すらなかった。この魔力のスタミナ、どう思う?」

「……………」


 話を聞いたサニアは黙り込んで考え始めた。真剣な表情だ。


「スタミナがあるなら良いんじゃないですか?」


 ぽけっとした顔でアイーシャが質問してくる。


「まぁ確かにな。スタミナはあればあるだけうれしい。でも5時間だぞ? いくら1度に使える魔力が制限されてるとはいえ、さすがに長すぎないか?」

「んー…」


 アイーシャとしては魔力量で悩んでいる立場なので、スタミナがあるのはすごく羨ましい。しかしカルドラにとっては自身の魔力に未知な部分があるのが気持ち悪いようだ。


「仮定…の話にはなりますが…」


 考え込んでいたサニアが口を開く。


「もし、魔法陣の想定魔力量と、カルさんの実際の魔力量に大きな差異がある場合、そのようなことが起こるかもしれません」

「差異?」

「たとえばカルさんの魔法陣は魔力量10を想定して組まれているとしましょう。今回カルさんは5層を開放してスタミナ検証をしていた。つまり使える魔力量は4です」

「ふむ」

「でもカルさんの実際の魔力量が実は100だったら…。4の魔力を使ったところで残りは96です。自然回復分も入れれば魔力切れはまず起こさないでしょう」

「…………」


 なかなかにとんでもない話をぶっこんで来た。仮にもしそれが本当だとしたらカルドラの魔力量は化け物レベルだ。


「それ…確認する方法はあるかな?」


 一応聞いてみる。しかし返事は芳しくない。


「魔法陣の向こう側に封印されている状態なので…、カルさんの正確な魔力量はわかりません。おおよその見当すら――」


 そこまで言ってサニアは口を(つぐ)む。嫌な可能性に気付いてしまったのだ。


(まさか、カルさんの魔法陣が自己崩壊し掛けていた理由って…、カルさんの魔力量に魔法陣が耐え切れていないから…? だとしたら…ただ魔法陣を再現するだけじゃ不十分…。なんとかカルさんの魔力量を割り出して土台から設計し直さないと…)


 思考を巡らせるサニアの背中に冷たい汗が伝う。心臓がどくんどくんと跳ねる。

 緊張が滲むサニアの表情を見てアイーシャが心配し声を掛ける。


「サニアさん…。大丈夫ですか…? 顔色が…」


 はっとし、返事をする。


「…はい。大丈夫です。……カルさん、これから宿に戻って魔法陣を見せて貰って良いですか? 早急に確認したいことができました」

「……わかった。すぐに戻ろう」


 そして3人はすぐにお会計を済ませ。宿へと戻った。

 サニアの部屋に集まり、サニアとカルドラが向かい合って立つ。

 魔力を同期させ、サニアはカルドラの中の球体魔法陣を確認した。


「カルさん。今回はこのまま魔法を使ってもらいます。5層開放状態で身体強化を使ってください」

「わかった。いくぞ」


 サニアが視ている前で魔法陣の最外層が開き、ブアアアアアと大量の魔力が放出される。そしてその大量の魔力を消費して魔法が発動される。

 サニアはその魔力の流れをじっくり観察する。


(今放出されている魔力と消費されている魔力の大体の量を覚えて、そこから昨日カルさんが検証に費やした時間、更に持続できそうだった時間を計算すれば、本当に大雑把だけど、カルさんの今の魔力量のおおよそが掴める)


 そのまましばらく観察し、放出量と消費量が大体掴めたため、サニアは魔力の同期を解除した。

 そして計算に必要な最後の情報をカルドラから聞き出す。


「カルさん。もし昨日の素振りで身体のスタミナが尽きなかったらどれくらい身体強化を維持できそうでしたか?」

「んー…。たぶん倍…10時間は余裕だったと思うぞ」

「……10…ですか。わかりました」


 そして頭の中で大雑把に計算してみる。するととんでもない数字が導き出され表情が変わりそうになる。が、なんとか堪えてなるべく平静を装って言葉を発した。


「…カルさん、ありがとうございました。いろいろ参考になったので魔法陣の解析も進むと思います。ここからは自由時間にしましょ♪」

「ん? もう大丈夫なのか?」

「はい。今確認した情報を使っていろいろ検証したいので私はこのまま夜まで引き篭もろうと思います。食事時になったら声を掛けてください♪」

「……わかった。あんまり根詰めすぎないようにな?」

「はい。ありがとうございます」


 簡単なやり取りを交わしてカルドラとアイーシャを見送り、すぐに椅子に腰かけ深呼吸をする。

 そして先ほどの計算結果を思い返す。


(カルさんの魔力量は…()()()()常人の6倍…。まさか私と同等以上だなんて…)


 サニアの魔力量は常人の5~6倍。しかしそれは特殊な鍛錬によって得られたものだ。そのサニアに匹敵か、それ以上の魔力量を有するカルドラに驚きを抑えられない。


(5層開放時の魔力放出量からみて、魔法陣が想定している魔力量は常人のそれ。それに対して今のカルさんの魔力量は多すぎる…。師匠がそんなミスをするとは思えない。つまり後天的に魔力量が増えたということになる。でもどういう原理で? あの鍛錬以外で魔力量を増やせる方法があるとは思えない。大人に成長する過程で少しは増えるけど、6倍は増えすぎ…。……わからない、どうやって…)


 予想以上に多いカルドラの魔力量に動揺し、その原因に目が向いていたサニアだったが、すぐに根本的な問題に気づき戦慄する。


(…ううん、気にはなるけど問題はそこじゃない。あの魔法陣の基礎部分を、()()()()()()()()()()()()()。………あの芸術品みたいな魔法陣を…私が…? ……………)


 サニアはゆっくりとテーブルに腕を組み顔を埋める。そして襲い来るプレッシャーに飲み込まれていった…。

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