いつもと違うソラ
とある飯屋で料理を待つ3人。
そしてサニアの膝の上には、なにかと人混みを避けて滅多に飯屋に入らないソラの姿があった。
今日は珍しく一緒に飯屋に入り丸くなっている。
「そう言えば、宿屋でソラちゃんどこにいたんですか? 部屋をノックした時はいませんでしたよね?」
アイーシャが首を傾げる。
そう。ソラがあの場にいれば、ピーと返事をするなりカルドラを叩き起こすなり、きっと何かしらの行動を起こしてくれていたはずだ。
「昨日おれが部屋に戻ったときはベッドで丸くなってたから、朝になって外に遊びに行ってたんじゃないか? 窓開いてたし…」
「相変わらず自由ですねー…」
カルドラの返答に少し困り顔の混じった微笑みで返すアイーシャ。
カルドラは続けて話す。
「自由なのは相変わらずではあるんだけど、この町に入ってからちょっといつもと様子が違うんだよなぁ。昨日は日中ずっといなかったし、今は珍しく人混み空間にいるし」
うーんと考えるカルドラ。
ソラを撫でながらサニアも話に加わる。
「昨日は私たちがずっと屋内にいたからでは? 早朝から昼までは坑道、その後はしばらくギルドの中でしたし」
「……いつもなら坑道を出た瞬間飛び付いて来るはずなんだよなぁ」
さすがに付き合いが長いだけあって、カルドラはソラの行動パターンをよく理解しているらしい。
うんうん悩むカルドラにサニアが1つ提案を出す。
「………聞いてみましょうか?」
「ん???」
聞いてみる…とはどういうことかと、変な声が漏れるカルドラ。
「動物と簡単な意思疎通ができる魔法があるんです。ソラちゃんは自我がかなりしっかりしているみたいですから、たぶんある程度の行動理由はわかると思いますよ?」
「へー…、そんな魔法があるのか…」
「私も初めて聞きました…」
物珍しがる2人。そしてサニアが「ではやってみます」と魔法を展開する。
少しの時間ソラを見つめるサニア。すると少し困った顔になった。
「…どうだった?」
カルドラが結果を尋ねる。
「"レジスト"されました…」
レジスト…つまり魔法を受け付けなかったということだ。サニアもこれは予想外だったらしい。
「膝に乗って寝るくらい信頼してくれてるので大丈夫だと思ったんですけど…。もしかするとドラゴンには魔法が効き難いのかもしれませんね…」
そう理由を推測してみるも、信頼してくれてると思っていた相手からの意思疎通拒否はさすがにショックだったらしく、目に見えてしょんぼりするサニア。
すると丸くなっていたソラが立ち上がり、サニアの顔を見上げる。
「……あ」
サニアの顔に一瞬驚きが広がったかと思えば、そのまま嬉しそうな表情へ変わっていく。
不思議に思うカルドラが尋ねる。
「…いったいどうした?」
「ソラちゃんから僅かですが意識が飛んできました。"親愛"…のような感情です。たぶん…レジストは自分の意思じゃないよって伝えてくれているんじゃないかと…」
そしてサニアがやさしくソラの頬を撫でるとソラもすりすりと返し、また膝の上で丸くなった。
そんな様子をサニアの隣で見ていたアイーシャが微笑む。
「ソラちゃん、本当に良い子ですね」
「えぇ、本当に…」
アイーシャの言葉にサニアが同意し、温かい雰囲気が広がる。
カルドラもそれを対面から眺め微笑む。
(結局ソラの様子がいつもの違う理由はわからないけど、まぁソラはソラだしな。心配しすぎる必要もないってことか)
心の中でそう結論付け納得する。
そして丁度そのタイミングで注文した料理が運ばれてきたので、3人は温かい雰囲気のまま食事を満喫することができた。




