似た者同士
建物を背に地面に座り、倒れた神官を膝枕しながらぼーっとしていたら夜になり、そのまま星を眺めていたら夜が明けた。途中で軽く寝ていたので眠気は無い。
ソラもずっと寄り添ってくれていた。相変わらず可愛いやつだ、と頬を撫でてやる。
それにしてもこの神官はいつまで眠り続けるのか…。さすがにそろそろ立ち上がりたくなってきた。そう思っていたところで神官がもぞもぞ動き出した。
「…………んぐ………むにゃ……ぁれ?」
「よ、おはよう。よく眠れたかい?」
「ピー!」
目が合い、きょとんとしつつ周りを確認する神官。みるみる顔が赤くなっていく。少しずつ自分の状況を理解していっているらしい。
そしてゆっくりとカルドラの横に移動すると、きれいな土下座をした。
「もうしわけございませんでした!」
相変わらずの面白い行動に内心ふふっと笑うカルドラ。
「いいよ謝らなくて。むしろこっちは感謝しなきゃいけないんだ」
「感謝…、ですか?」
顔を上げ、首を傾げる神官にカルドラは続ける。
「そうだよ。あんたの回復魔法のおかげで、今までの自分が如何にガタガタの状態で動いてたのかよくわかった。驚いたよ、本当に」
神官の回復魔法を受けたカルドラは、今まで感じたことのない身体の軽さを味わっていた。幼い頃から自身の特殊な体質に苦しみ、それを制御するために訓練を繰り返してきた身体には、自己治癒では癒しきれない"歪み"のようなダメージが蓄積していた。そして神官の魔法がそれらを根こそぎ取り除いたのだ。
「まぁあれだけの蓄積ダメージを抱えていたらそうでしょうね。私も診た時驚きましたもん。いったい今までどれだけ無茶してきたんですか?」
「いろいろな」
「ふぅ~ん?」
じとっとした視線を送ってくる神官。しかしそれについてはカルドラも言わなければならないことがあった。
「それはそうとあんた。あの魔法、本来は"別の使い方"をするんじゃないのか? 例えば、複数人での使用が前提…とか」
「んぐっ!」
わかりやすく動揺する神官。それを見てため息をつく。
「やっぱり…。おかしいと思ったんだよ、神官が魔法を1回使っただけで昏睡するなんて。何人前提なんだ?」
「……………最低5人です…」
「5人!!???」
驚愕するカルドラ。そして怒鳴る。
「バカかおまえは!!! そんなもの1人で使って…! 下手したら死んでたぞ!!!」
「だ、大丈夫です! ほら、この通り元気いっぱい!」
「お、おまえ…!」
神官のあまりの無鉄砲ぶりに頭が痛くなってきた。
魔力は生命力の源だ。それが枯渇すれば死んでしまう。この神官はそのリスクを冒して、5人での発動前提の大魔法を1人で行使したのだ。
「だめだ、あんたと話してると頭が痛くなる」
「あ! ひどい! 自分だって見ず知らずの人を助けるために骨折したくせに!」
ぶーぶー文句を言い始める神官。
「そりゃあの状況を見たら普通助けるだろ」
「助けに来てくれたの貴方だけですよ?」
「そ、それは…。おれは勝てる可能性があったから動いただけで、きっと他に強いやつがいたらそいつが動いてたさ。」
しどろもどろに言い訳をする。そんなカルドラに神官は問う。
「これ、私の勘ですけど。貴方きっと、勝てる可能性が無くても来ましたよね」
それを聞いて思い返してみる。あの時、助け方なんて考えていただろうか…と。
「…たぶん行ってたな」
「でしょう? それ、私が魔法使ったのと何か違いますか?」
この神官はカルドラのボロボロの身体を目の当たりにし居ても立ってもいられなくなり、危険を承知で大魔法を行使した。たしかに酒場でのカルドラと行動原理は同じなのかもしれない。そう思うと不思議な親近感が湧いた。
「………似てるのかもな?」
「…そうですね。似た者同士です」
「ピー!」
ソラも同意しているようだ。
そして少しの間、2人でクスクス笑い合った。




