お酒絡み?の過去
「で、君たちはなぜここに集まってるんだい?」
「え? なんでですかね?」
「えぇいつの間にやら、不思議ですね」
なぜかアイーシャとサニアがカルドラの部屋で寛いでいる。そしてカルドラの質問に対し2人ともとぼけ顔だ。
アイーシャは時々変な行動を取るから百歩譲ってわかる。しかしサニアまでとはどういうことだ。
「まぁいいじゃないですか。皆でおしゃべりしましょ?」
アイーシャがニコニコしながら言う。
(そういえば今日のアイーシャは一時しょんぼりしてたな…。その分の補填って考えればこの行動もわかるか…?)
無理やり理屈っぽく考えてアイーシャの行動を理由付けしてみる。
まぁそういう理由ならおしゃべりに付き合うのも吝かではない、とも思ってみたり。
「アイーシャさん鍛冶屋でしょんぼりでしたからね。今その分取り返しましょう♪」
(だからサニアさんそんなドストレートに言わないであげて…)
心の中でサニアに突っ込みを入れる。
(何だろう。鍛冶屋の時といい、もしかしてサニアは空気を読むのが苦手なのだろうか。それともおれが気を使いすぎなのか?)
自分ももう少しいろいろ突っ込んだ方がいいのか?と悩んでいると、アイーシャが目を輝かせ元気に声を上げた。
「そうそれです! それについて2人に誤解をさせてしまってるのではないかと思って、それの説明をしたかったんですよ!」
「「誤解?」」
カルドラとサニアの反応が被る。
「たぶんお2人は、私に何か重い過去が~とか思ってませんか? 違いますから!」
顔を見合わせるカルドラとサニア。
「それについて話したいなら突っ込んで聞くんだが、あそこまで視線が冷たくなるのは結構すごいことだぞ? 過去に何かあったんじゃ―と心配になるレベルだったぞ?」
「そうですよ…。特にアイーシャさんは普段元気いっぱいなので、落差がすごくて…」
2人の突っ込みにぐぬぬぅという顔をするアイーシャ。
「わかりました。実際に経験したことを話せば納得してくれますよね? 大したことでは無いと!」
また顔を見合わせるカルドラとサニア。
「そこまで言うなら聞いてみたいが…。無理に話さなくても良いんだぞ?」
「そうですよ? アイーシャさんにどんな過去があろうと、アイーシャさんはアイーシャさんですからね?」
心配する2人。しかしそれを強引に振り切りアイーシャは話し出す。
「大丈夫です! 聞けば納得します! ではまずは…、父と路地裏に住んでた時の話から――」
とんでもないことを話し出すアイーシャにすぐカルドラがストップを掛ける。
「ちょちょちょちょちょちょちょっと待て重い重い重いからそれ!」
焦るカルドラにちっちっちっと指を振るアイーシャ。
「焦っちゃダメですカルさん。まだお酒が出てきてませんよ?」
「それ以前の問題なんだよ! なんだ路地裏って! 酒なんかよりそっちの方がやばいだろ!」
え~?という顔のアイーシャ。そこにサニアが口を挟む。
「カ、カルさん…。ひとまず、ぜ、全部通して、聞いてみませんか? 突っ込みは…、さ、最後に取っておきましょう…」
明らかに動揺しているが話は聞きたいらしい。確かに気にはなるが…。
アイーシャを見ると話したそうにうずうずしている。
目を閉じ天井を仰ぎ、覚悟を決める。
「…わかった。なるべく口を挟まないように努力する。アイーシャ、話してくれ」
「わかりました! では路地裏の続きから――」
そうして語られたアイーシャのお酒エピソードはこんな感じだ。
1,路地裏生活で隣に住んでたやつがひどい酒豪で、父がよく絡まれていた。しかし酒が抜けると非常に仲が良い友人だった。
2,孤児院時代、近くに住んでた酒豪の男がよく神父に絡んでいた。しかしやはり酒が抜けると神父の手伝いも良くする善良人。
3,修道院時代、酒に溺れた神官が破門。そいつもやはり酒さえなければ優秀だった。
4,教会所属の神官時代、夫の酒癖に悩む夫人の相談を受け2人に説教。しかし結局夫は犯罪を犯し牢獄行き。更に似たような酒がらみの相談はほとんどが解決できず、酒飲みは破滅していった。
「――という感じです! どうです!? 特別重い過去って感じじゃないでしょう!?」
カルドラは右手で顔半分を覆い俯いた。サニアに至っては俯いて両手で顔を覆ってしまっている。
「…あれ?」
少々困惑しているアイーシャにカルドラが話しかける。
「アイーシャ。鍛冶屋で泥酔して寝てたバルドレンさんに白けた視線が向けられた理由はよく分かった。確かにそれだけのダメ酒豪どもを見てきたならあの視線は納得だし、一つ一つの酒絡みの話はアイーシャに関する重い過去ではない。お前の言った通りだったよ」
「でしょう!? 誤解が解けたようで私は満足です!」
ふんすっと満足そうなアイーシャ。これで彼女はなんの気兼ねも無くぐっすり眠れることだろう。
(だがアイーシャよ…。路地裏での生活や、孤児院での生活の話はな。一般的には重い過去なんだよ…)
ちらっとサニアを見る。…しばらく復帰は難しそうだ。
(よし。とりあえず明るい話をしよう。このままじゃアイーシャまでおれたちの重い雰囲気に引っ張られて収集がつかなくなる。楽しそうなアイーシャの声を聞いてればサニアもそのうち回復するだろ)
そしてその後、カルドラは強引に話題を変えて楽しい話を振りまくった。心の突っ掛かりが取れたアイーシャは元気に振られた話に乗り、少しするとサニアも会話に参加し出し、しばらく3人で会話を楽しみ、夜が更けていった。




