着きました
魔法陣診断の結果、とりあえず何も問題は見つからず一安心の3人。
しかしサニアから「これから寝る前に必ず魔法陣を確認します」と宣言され、カルドラは戦々恐々としていた。
(魔力の同期の時に手を握られるのがなぁ…。サニアが美人すぎて…本当に何回やっても慣れない…)
別に恋愛感情があるわけではない。単純にサニアの容姿が現実離れしていて緊張してしまうのだ。
(人によっては嬉しくてたまらないだろうが…、少なくともおれにはそう思えん…。あぁ…胃がキリキリする)
「ピ?」
カルドラが青い顔をして歩いているとソラが顔を覗き込んでくる。
ソラはカルドラが気を落としていると必ず気にかけてくれる。さすが10年来の付き合いは伊達ではない。
「ソラ~! 可愛い奴め!」
「ピー!」
捕まえてお腹を撫でてやると擽ったそうにじたばたするソラ。可愛い。
「あんまりいじめると嫌われちゃいますよ~?」
アイーシャが微笑みながら言ってくる。
するとソラがするっとカルドラの手から脱出し、すい~っとアイーシャの頭の上へ。
「嫌ですって♪」
クスクス笑うアイーシャ。
その一部始終を観察していたサニアが興味深そうに手を伸ばし、ソラの頬を撫でる。
「本当に不思議な子ですねソラちゃん。普通ドラゴンはこんなに人と関わろうとはしないはずなんですけど…」
「ピ?」
不思議そうな顔をしつつ、今度はサニアの手の中へ移動するソラ。自由奔放である。
「子どもの頃、偶然ソラが卵から孵るところに出会して…。それからずっと一緒だからな。何回か林に置いて来ようとしたんだけど離れなくてさ」
「ふ~む…。興味深いですね…」
「ピ♪ ピー♪」
一緒に居る経緯を説明するカルドラの言葉を聞きながら手でソラを転がすサニア。ソラはされるがままである。
「いろんなところで私たちを助けてくれますもんね。完全に旅の仲間です♪」
「ピー!」
アイーシャの言葉に、サニアに転がされながら元気よく返事をするソラ。可愛い。
「ドラゴンは龍脈の化身って話だけど、おれにはあんまりピンと来ないな。ソラはソラだしな」
「ピー!」
するっとサニアの手から抜け出して、そう言うカルドラの頭に鎮座するソラ。
常に自由に動き回り周辺から消えることもしばしばだが、何だかんだソラは一番長い時間カルドラの近くにいる。
「やっぱりそこが定位置なんですね」
「もはや帽子ですね」
「はは! 帽子は初めて言われたな!」
「ピ?」
サニアの帽子発言に笑うカルドラ。ソラは首を傾げる。
龍脈の化身、環境の守護神と言われるドラゴン。そんな種族の彼がカルドラの側を離れない理由は分からない。しかし今までのソラの振る舞いを見れば、余程の事がない限りソラがカルドラから離れることはないというのは想像に難くない。
そのまましばらく歩くと、3人は町に到着した。
「わー! 着きましたねー!」
「おー! 着いたなー!」
「え? おー。着きましたー?」
「ピー!」
ノリノリのアイーシャとカルドラに健気に合わせくれるサニア。そんな彼女の姿に2人は笑いが止まらなくなり、サニアは顔を赤くして言い訳をする。
そんな3人を余所にソラは町を見る。
町は石造りを基本に木が組み合わさった独特の様相を呈しており、その町の向こうには岩肌が露出した大きな山が聳え立つ。
その山を、ソラはじーっと見つめた。
「もう! 到着したんですから早く町に入りましょう! 行きますよ!?」
顔を真っ赤にしてスタスタ先に行ってしまうサニアを謝りながら追う2人。
「ごめん、悪かったよ。あまりに可愛くてつい…クククッ」
「そうですよサニアさん! 反則級の可愛さでした!」
「2人とも謝ってないですよね!???」
何とかサニアを宥めつつ町に入った3人。目先の予定を話し合う。
「さて、まずは宿の確保かな?」
「そうですね。拠点確保が最優先かと」
「あれ? 物資確保はいいんですか? 前の街ではそれも真っ先にしてましたよね?」
アイーシャの質問にカルドラが答える。
「うん。今回はこれの件もあるからな」
ひしゃげた棍棒をポケットから取り出し、2人に見せる。
「もし前の街の鍛冶師が言っていた通りここの鍛冶師がこれを直せるなら、この町にはしばらく滞在することになる。滞在中に確保した物資がダメになっちゃうのは勿体ないからな。まずは鍛冶師にこれを直せるか確認して、その返答によって物資の確保時期を決めようかと思って」
「なるほどです!」
キリッと納得顔のアイーシャ。
「鍛冶屋に用があるのはおれだけだから二手に別れようか。どこか分かりやすい合流場所は――」
カルドラがそこまで言うとサニアが待ったをかける。
「カルさん。その棍棒の顛末は私も気になります。一緒に行っちゃだめですか?」
「私も気になるかも…」
アイーシャも同行を願い出る。2人が棍棒を気にしていたとはとても意外だった。
「…わかった。じゃあさっさと宿見つけて鍛冶屋を探しに行こう。日が傾く前に話をつけたい」
「そうですね。ゆっくり食事したいですし」
「鍛冶屋探しながらおいしそうなご飯屋さんも探しましょう!」
今後の流れが決まり、3人は町へ繰り出した。




