保護者?
とある広大な森の近くの比較的大きな街。
その街の宿で迎えた穏やかな朝。カルドラはその宿の部屋でソラと戯れていた。
「昼までぐっすりとは…、秘密の特訓とやらは相当大変だったんだな…。なぁソラ」
「ピ♪」
さっきサニアが部屋に来て、アイーシャは昼まで目を覚まさないだろうからのんびりしようと言ってきたのだ。それを聞き、やることが無くなってしまったのでソラと遊んでいる。
頬を撫でてやると気持ち良さそうに受け入れるソラ。可愛い奴め、と更に捏ね繰り回してやる。
「サニアもこの時間で魔法陣の解析を進めたいって言ってたしなぁ。…………魔法陣か」
「ピ?」
ソラが不思議そうにカルドラを見る中、カルドラは部屋の中心に立った。
(4層までの開放なら問題ないとサニアから言われている。5層の開放は安定してできるようになった。3層への干渉をしないように4層を開放できるよう練習だ)
生まれた直後からカルドラの命を繋いでいる5層構造の球体魔法陣。劣化が進み、その能力の全てを扱うことは叶わないが、扱えるところまでは完璧に使いこなせるようにしておきたい。
(要領は特殊体質の扱いと同じだ。身体の声を聴くように、魔法陣の声を聴くんだ…)
筋肉が千切れるまで筋力を引き出せてしまうカルドラの特殊体質。それを制御するために子どもの頃から続けてきた身体との対話。その対話の範囲を命綱の魔法陣まで拡張させる。
(層の境目を意識しろ。3層には絶対に触れちゃいけない。その上で4層を制御するんだ…)
数日前にサニアと行った魔法陣の動作確認。その際は3層に干渉しようとしただけで魔法陣が自己崩壊を起こしかけた。魔法陣の崩壊はカルドラの死に直結する。そのため、3層に一切影響を与えずに4層に干渉する繊細な意識制御の練習が不可欠だった。
「ピ」
ソラが見守る中、カルドラは深い集中状態に入って行く。
と、いうことがあったのが5日前。現在カルドラはしかめっ面のサニアから健康診断ならぬ魔法陣診断を受けていた。
次の町へ旅立って5回目の野営が終わった朝。サニアとアイーシャの支度が終わるのを待っている間にカルドラが例の練習で集中しているのをサニアが発見し、練習の詳細を聞いたサニアが血相を変え魔法陣を診たいと言ってきたのだ。
「カルさん。確かに4層まで開放しても大丈夫と言ったのは私です。でもそんなに頻繁にぱかぱか開閉したら魔法陣にどんな影響があるか…。今後は練習前に私に声を掛けてください」
「……面目ない」
叱られてしょんぼりしているカルドラを眺めつつアイーシャが声を掛ける。
「しょんぼりしてるカルさん可愛いですね♪ お母さんに叱られた子どもみたいです♪」
最初は知らないうちに危険なことをしていたカルドラにアイーシャも驚いた。しかし自分も隠れて危険な鍛錬をしているのであまり強く言えず、とりあえず魔法陣のことはサニアに任せておけば大丈夫、と現状を楽しむことにしたアイーシャだった。
しかしそんなアイーシャにもサニアのお叱りが飛ぶ。
「アイーシャさん? 貴方も無茶に関してはカルさんといい勝負ですからね? そんな態度だといざ自分がやらかしたときにカルさん助けてくれないですよ?」
「えぇ!??? 私もそっち側なんですか!???」
実はパーティーを組むに当たって、カルドラとアイーシャの今までの戦闘の話はこの5日間で全てサニアに共有されている。
話を聞いたサニアは"自分が2人を見張らなければ"と本気で思った。冗談を抜きにして、そうしないと2人が死んでしまうと思ったのだ。生きて森に辿り着いたのが不思議なくらいだった。
(はぁ…。やんちゃな子どもを持つ世のお母さんたちはこんな気持ちなのかしら…)
心の中でため息をつくサニアだったが、そんな無茶をし合い支え合っている2人はすごいとも思っている。その絆の強さは少し羨ましいくらいだった。
(でも、これからはしっかりサポートさせてもらいます。2人とも絶対に死なせませんから)
心の中で決意を新たにするサニア。そしてしょんぼりする2人にフォローを入れて元気づける。
その姿は傍から見たら完全にお母さんだった。




