崇拝
その後、サニアの案内で2時間ほど歩くとあっさりと森の外の街道へ出た。そのあまりの速さに何とも言えない顔になるカルドラとアイーシャ。
「おれたちがあれだけ迷った森をこんなあっさり…」
「さすが森の魔導士様…」
「地元ですからね♪」
サニアが軽く返す。そして道中に話した内容を確認する。
「まず街に行って旅の物資を調達、でしたよね?」
「そ。迷って全部使っちゃったからな。また揃え直さないと」
そう。森で迷ったせいでほぼ何も残っていないので、街で揃え直さないといけないのだ。
しかし、サニアにとっては街に寄るのは都合がよかった。
「今まで街の皆さんにたくさんお世話になったので、挨拶ができるのはありがたいです」
それを聞いたカルドラはすぐに反応する。
「そういう都合はどんどん言ってくれよ? 旅に目的はあるが、行き先が決まってるわけじゃないんだ。どこに立ち寄ったってバチは当たらん」
「そーですよー。物資調達がなくたって挨拶があるなら街には寄りますよー」
その2人の返答にサニアは心がふわっと温かくなるのを感じる。
「ふふふ、ありがとうございます。やっぱり2人ともやさしいですね」
「普通だよ」
「心残りは少ない方が良いですからね!」
そして3人で雑談しながら歩くと、すぐに街の門に到着する。
「あ、サニアちゃん久しぶりだね。最近来なかったから心配してたよ」
「えぇ、お久しぶりです。少し用事が重なって引き篭もってたんです」
すぐに門番から声を掛けられるサニア。その様子にある情報を思い出すカルドラ。
(そういえば雑貨屋のおっちゃんが、街では森の魔導士は有名人だって言ってたな。サニアのこの容姿…。もしかしてすごく人気があるのでは…?)
そんなことを思っている最中もサニアと門番の会話は続く。
「そうか、大変だったんだね。まぁせっかく来たんだからゆっくりしていきなよ」
「はい。ありがとうございます。でもこれからはしばらく街に来られないと思います。だから今回は街の皆さんに挨拶回りをしようと思ってて――」
サニアがそこまで話すと門番が急に慌てだす。
「え!? こ、来れないってどういうことだい!? 旅行とか行くのかい!? いつ頃また来れそうなの!? あ、まさかどこか具合が悪いとか!?」
あまりの取り乱しように驚くカルドラとアイーシャ。サニアも困惑しているようだ。
「え? えーと…この方たちと旅に出ることになったので、いつ帰って来れるかはわかりませ――」
「旅!??? この方たちって…! あれ、あんたたちこの前ここから出発した旅人だよな? サニアちゃんとどういう関係なんだ…?」
「え!? 関係って言われても、おれたちはサニアの友達で――」
「友達!!!?????」
混乱していたかと思ったら次はカルドラたちを尋問し始める門番。
(な、なんだ!?? もしかして…、サニアって人気があるとかを超えて崇拝されてる!???)
その後なんとか門番を落ち着かせ、最後は涙ながらにサニアに別れを言う門番から離れ街の中へ。
「サニア、街ではおれは別行動を取る…! 挨拶回りはアイーシャと頼む…!」
すぐにカルドラが戦線離脱を宣言。それにアイーシャが異を唱える。
「ちょっとカルさん逃げないでください! いつもの度胸はどこに行ったんですか!?」
「逃げじゃない! 街でのサニアのイメージを守るためだ!」
「イメージ…ですか?」
サニアが首を傾げる。
「おそらくだが、サニアはこの街では神の如く崇拝されている…! そんなサニアの横に男のおれが居てみろ…! サニアのファンたちが血の涙を流すぞ…!」
「さ、さすがにそれはないのでは…」
カルドラの言葉に半信半疑なサニア。しかしカルドラは続ける。
「サニア。自分ではわからないかもしれないが、おまえはすごく美人だ。はっきり言ってこの世の者とは思えない。加えて所作も性格も美しい。才色兼備、才貌両全、秀外恵中、一言で言えば"完璧"なんだよ。おそらくこの街にはサニアのファンが集まる組合なんかもあるはず。そして大抵そういう組合には対象に近づきすぎないようにするルールがある。だからおれが近くにいると組合の連中がサニアに迷惑をかける可能性すらある。だからおれは離れないといけないんだ…!」
「え…? あの…、美しいって…、え…???」
突然褒めちぎられ、顔を赤くして大混乱のサニア。
そしてその説明を聞いてアイーシャは納得したようだ。
「…なるほど。カルさんの言っていることは一応理解しました。たしかにカルさんが近くにいるのはいろいろ不都合がありそうです。同性の私から見てもサニアさん美人ですからね…」
「ア、アイーシャさんまで…」
アイーシャの理解を得てカルドラは最終確認をする。
「ありがとうアイーシャ。でもサニアほどの美人だと同性で可愛いアイーシャにもやっかみが行くかもしれない。十分に気を付けてくれ。いざとなったらプロテクションで防御だ。おれはすでにロックオンされてるかもしれないが、なんとか物資を調達してみせる。じゃ、お互い気を付けて行こう」
そう言い残し、カルドラは街に消えていった。
サニアは2人に美人と連呼され顔が真っ赤になっていた。そして、アイーシャはある言葉を聞いて目が点になっていた。
(……今、私のこと可愛いって……?)
そのまま少しの間、2人は呆然と立ち尽くしていた。
そして2人から離れたカルドラは…。
「よぉ兄ちゃん、ちょっといいかな?」
「お話聞きたいな~?」
知らない男2人に声を掛けられていた。
(く…! やはり来たか…! できる限り穏便に済ませなければ…!)
予想通りロックオンされていたことに愕然としつつ、素直に言うことを聞くことに…。
「わかりました…! おれにできる限りの説明をさせていただきます…!」
そうしてカルドラは街のどこかへ連行されていった。




