決着
その瞬間、ぶわっ!と衝撃のようなものが放たれた。まるで筋肉と筋肉を激しく叩きつけ合っているかのような波だ。
そして勝負は完全に拮抗状態だった。構えの段階から左右どちらにも傾かず、ぶるぶると両者が震えている。
(……っ!!! このガキ! この細腕のどこからこんな力出してやがる…っ!)
(……っ! よしっ! 一番の問題だった最初は"流せた"! あとは…っ! ここからっ! 押し返すっ!!!)
ギシギシギシ… ミシ…ミシ…
樽の軋む音が鳴り、筋肉が悲鳴をあげる。
「うおーーー!!! がんばれ若いの!!!」
「冒険者!!! 負けたら恥ずかしいぞ!!!」
「いやー! 負けないでー!」
滅多に見られない光景に酒場も大盛り上がりだ。
そして拮抗状態が少しずつ動き始める。カルドラがじわじわと押し始めたのだ。
(ぐっ…!!! ぬ゛ぅぅぅんっ! 押されるっ…! 返せねぇっ!)
(まずいっ! 繊維が切れ始めたっ! もう少し…! 持ってくれぇぇっ!)
どんどん腕が傾いていく。それに呼応して酒場の盛り上がりも過熱していく。そして…。
「うぉおおおおおあああああああああ!!!!!!」
ばしぃぃ……ん!
カルドラが男の右手を樽に叩きつけ、男の身体が大きく回転し、倒れた。
一瞬の静寂、そこに神官の声が静かに響く。
「決闘の儀は決着されました。神の名の下、命が正しく適応されることを願います」
腕相撲の終決が告げられ、カルドラが勝利を収めた。
「うおおおおおおおおおお!!!」
「すげぇぞ兄ちゃん!!!」
「なんだ今の! 吹っ飛んだぞ!!!」
「かっこいいぞ若いの!!!」
酒場の熱気は最高潮に達した。2人の決闘者の周りに客が集まり次々声を掛ける。
「やったな! かっこよかったぞ!」
「残念だったな! でもすごかったぞ!」
「良いもん観させてもらったぜ!」
「ほれ、おめぇの銀貨だ。受け取れ」
「ほら! 負けた悔しさは酒で飲み込むんだよ! こっちこい!」
負けた男は客数人に近くの席に連行されていく。そしてカルドラは左手をひらひらさせながら声援に応え、酒場の出口へ向かった。
当然客が止めに入る。
「なんだヒーロー。これから飲むんじゃねぇのか?」
「そうだぜ! おまえが残らなきゃ始まらねぇ!」
そんな温かい声を受けながらもカルドラは答える。
「ありがとう皆。でもおれ、元々外で時間潰す予定だったんだ。時間経ったらまた来るよ。」
そう言って外へ向かう。クールだねぇという声がちらほら聞こえる中、それを追いかけようとしていた神官は女性たちに捕まっていた。
「よかったわぁ。これで安心ね」
「本当に無事でなによりよ」
「あはは。心配してくれてありがとうございます」
軽く対応しながらカルドラを探すが、すでにいなくなっていた。
(…追わなきゃ)




