自信
カルドラもあわあわしたい気持ちだったが、そうもしてられない。すぐに加勢に向かわなくては。
しかし…。
遠くではジークとカオスサラマンダーの怪獣決戦。すぐ横では男とサニアの魔法決戦。いったいどちらの加勢に行けばいいのか、とても悩ましい。
強いて言えばサニアの魔力量が心配か。あれだけの魔法を瞬間的に使っているのだ。魔力量に自信があるのかもしれないが、対する男は最小限の動きで対処している。いずれ差が出てくるかもしれない。
「加勢するならサニア側だな。よし、アイーシャ。何とかサニアをプロテクションの中に入れてやってくれ。おれがあの魔族とやらとタイマンしてくる」
「え!? 大丈夫ですか!? すごく強そうですよ!?」
アイーシャが心配してくるが、大丈夫だ。
「あの程度の速さなら問題ない。絶対におれには当たらん。サニアの魔法も含めてな」
「………え???」
カルドラの自信に困惑するアイーシャ。カルドラは更に続ける。
「サニアをプロテクションに入れたらこう伝えてくれ。"全部避ける。安心してぶっ放せ"ってな。じゃ頼んだぞ」
「ちょ! カルさん!」
言いたいことだけ言い残し、カルドラは棍棒2本を手に男に向かっていく。
一方のサニアはこの男に魔法を当てるにはどうすればいいかを考えていた。
(魔法の練度がとても高い。そして体術も。どちらかだけなら対処も容易だったんですけど、ここまで高水準にまとまっていると厄介ですね…)
男は体術も魔法も一級品だった。下手な攻撃は躱され、当たったと思った攻撃は高出力の小さな防壁で防がれる。そしてじりじりサニアとの距離を詰めていた。
(このままでは捕まりますね。向こうもいつまでも同じパターンでは動かないでしょうし、そろそろリズムが変わるはず。できればこちらから仕掛け――)
ダッ!
(!!! しまっ――)
思考していたサニアに向かって男が急加速して突進してきた。
ほんの少しの思考の遅れが致命的な危機を作ってしまった。
なんとか体制を立て直そうとするも、男のスピードが速すぎる。防御魔法が間に合わない。
「死ね」
「―!」
男のナイフがサニアの喉元に迫る。その瞬間。
「邪魔するぞ」
「!!!」
ドガッ
男は横から強烈な蹴りを貰い吹っ飛ばされる。
空中で体制を整え攻撃を貰った方を見ると、棍棒2本を構えた若い男が襲い掛かってきていた。
「貴様、舐めているのか? 棍棒だと?」
「楽でいいぞ? おまえも使ってみろ」
そのまま男は棍棒男との戦闘に移行する。
そして九死に一生を得たサニアは上がった心拍数を落とすため、静かに呼吸していた。
(…はぁ…、…はぁ…、…はぁ…、危なかった…。カルさんが来てくれなかったら…、今頃…)
背中に冷汗を感じるが、気にしていられない。すぐに戦線に戻らなければ。
大杖を握りしめ、踏み出そうとする。
「サニアさんストップ! ちょっと待ってください!」
「え?」
後ろからアイーシャの声が聞こえ、振り返ると…。
「プロテクション!」
シュパっと一瞬でドーム状の防壁が現れ、サニアとアイーシャを包んだ。
アイーシャはサニアの前で膝に手を置きぜぇぜぇしている。
「アイーシャさん…、大丈夫ですか? 息上がってますよ…?」
「…はぁ…はぁ…全速力でっ! …カルさんについてっ! …走ってきたんですっ! …息もあがりますよっ! …あの人速すぎですっ!」
「……なるほど?」
ぜぇぜぇするアイーシャも心配だが、今はカルドラの方が心配だ。あの魔族は相当な手練れ。冒険者でもない旅人が相手をするには危険すぎる。
そう思いカルドラを見ると、そこには何とも余裕そうな立ち回りで男を翻弄しているカルドラの姿があった。
「…カルさんって、もしかしてとんでもなく強い方ですか?」
思わずアイーシャに質問してしまった。
「…もともとすごかったですけど、…なんだか今日は一段とすごいですね」
アイーシャも驚いているようだ。
「あ、カルさんからサニアさんに伝言です! 『全部避ける。安心してぶっ放せ』、だそうです!」
「…………なんて???」
意味不明な伝言に理解が追い付かなかった。




