騎士の力
アルスは走った。動きの鈍いオークは無視し、俊敏なオークはすれ違いざまに切り伏せる。そして大オークとの距離がどんどん縮まり、対象の周辺を確認できる距離まで来た。
(…! カル! やはり戦っていたか!)
そこでやっと大オークと普通のオークに囲まれつつ、人間離れした動きで攻撃を躱し続けるカルドラを視認した。
(なんという身のこなしだ…! それが例の見切りというやつか…! だが、それでは…!)
明らかに余裕がなかった。捕まるもの時間の問題だ。
そしてそれはカルドラも感じていたらしく、彼は恐ろしい選択をする。さっきまでとは次元の違う威力の斬撃をオークに放ったのだ。
(!!! カル! 君はまさか!)
アルスの予感は的中する。カルドラの攻撃が当たった瞬間、明らかにカルドラの動きが鈍ったのだ。だがすぐに立て直し2撃目を放つ。しかし今度は完全に動きが止まる。
(やはり特殊体質の力を…! くそ…! 間に合え!!!)
走るアルス。まだ距離がある。
その間、カルドラは攻撃にさらされる。硬直したカルドラにオークのボディフックが迫る。そしてまたカルドラは恐ろしいことを仕出かす。カウンターを叩き込んだのだ。しかしそのせいでボディフックをまともに貰ってしまった。
(カル! 耐えろ! 今行く! 耐えてくれ!)
吹っ飛ばされごろごろ転がるカルドラ。もはや動く力が無いらしい。微かに立ち上がろうとしているのはわかるが、身体が言うことを聞いていない。
そんなカルドラに残りのオークが迫っていく。
(間に合え! 間に合ってくれ!)
オークが拳を振り上げた。
「うおおおおおおお!!!」
バシィィン
「ピギ!?」
今まさに拳を振り下ろそうとしていたオークに、アルス渾身のシールドバッシュが炸裂する。そしてすぐさま身を翻し、普通のオーク2匹の首を刎ねる。
ズパズパッ!
「「ピギィィ!?」」
その斬撃の速さに2匹はまったく反応できず黒い霧となる。そして大オークが拳を振ってきたのを冷静に見極め、拳を盾で滑らせバランスを崩させる。その隙にシールドバッシュで転倒させたオークに止めをさし、体制を立て直そうとしている大オークの首にアルスの最大威力の剣技を放つ。
「光迅閃!!!」
…ヵ…
小さな音がしたかと思えば次の瞬間大オークの首は落ち、黒い霧となって消えていく。音さえ置き去りにする超スピードの斬撃だった。
そしてアルスはがくっと膝をつく。
「はぁっ! はぁっ! はぁっ! はぁっ! く、シールドバッシュからの連撃は…、さすがに無茶だったか…! しかし…! まだ止まるわけにはいかない…!」
がくつく足をなんとか支え、カルドラの元へ近づく。
「カル…! 生きてるか…!? 返事をしてくれ…!」
返事はない。ピクリとも動かない。
「…カル!」
そう言ってカルドラを仰向けにし、心拍と呼吸を確認する。
「……………、……………、……………」
呼吸している。なんとか生きているようだ。
(……良かった。一先ず安心だ。だが、早く回復させなければ今度こそ死んでしまう)
アルスはカルドラがオークからボディフックを貰った部位に手を当てた。するとふわぁっとやさしく光り始める。
(あまり得意ではないが…、応急処置にはなるだろう。しかしゆっくりもしていられない。数分したら背負って防壁まで戻らなければ)




